お城にいるはずのない生き物との遭遇
今回は異世界でよく出てくるあれの登場です。
これ以上注目されるのも面倒だからさっさと王城を目指すか。
「アレク様、あれが王城ですよ。」
リンの言葉通りいかにも”城”という感じの建物が目の前にあった。
やっと着いたか。今日はここでおとなしく過ごそう。
「失礼ですが王城に何のご用でしょうか?」
「本日はサラマンド家が長男アレク・ラ・サラマンドの6歳の生誕を国王陛下がお祝いにしてくださるということで・・・。」
「これはサラマンド侯爵様の方でしたか。どうぞこちらへ。部屋に案内いたします。」
流石に城の門番は国の門番とは練度が違うな、そんなことを考えながら案内されているとふと何かの視線を感じた。しかしあたりを見回しても特に何も発見できない。
勘違いか?しかしこの気配を勘違いというには少し無理な気もするが…。いや、待てよ?
ふとある考えが頭をよぎり魔眼を発動させる。すると・・・いた。羽が生えた小さい女の子が俺のことをじ~という感じで見てた。
あれは…精霊か?初めて見たな。というかなんで精霊がここにいるんだ?やつらは自然に宿るはずだろ?
精霊。それは自然の守り手にして自然そのもの。実体化することができず簡単な意思しか持たない下級精霊。実体化はできないが人に力を貸すこともありエルフはその声が聞けるという中級精霊。実体化することもできるといわれ神に次ぐ力を持つといわれる上級精霊。そして火、水、土、風のそれぞれをつかさどりそれぞれの神と称される四大精霊。精霊魔法を使える人のほとんどが下級精霊との契約で力を引き出す存在であり中級精霊と契約できるものは非常に少ない。上級以上などエルフ族でさえ生涯に一度か二度見れる程度。
そんな精霊がなぜここに?契約者が近くにいるのか?しかしあの精霊・・・。中級以上に視えるぞ?
とりあえず精霊を見つめ返す。すると
『私が見えているの?』
と、驚いたような表情で声をかけてきた。さて、声を発したということは中級以上だな?そんなやつ何故ここにいる?
『なんて、人間に私の声が届くはずないか』
応えてやりたいがミリアさんたちがいるからな。とりあえず手招きでもしとくか。
『ん?何々』
おお、手招きで近寄ってきた!
『ついてきて。』
『え!!せ、精霊語!?な、なんで?』
小さい声でしゃべったけど必要なかったか。まさか精霊の言葉もしゃべれるとは。
「アレク様。どうかいたしましたか?」
ミリアさんが俺に声をかける。
「い、いやなんでもないよ。」
やべぇ、うかつだった。よく考えたら小声でもミリアさんだったら気づくだろ。おそらく精霊語も唇が動いたのをみて何かしゃっべているのがわかったんだな。この人ほんとにメイドか?どこぞの特殊部隊じゃないか?
そんな感じで俺も精霊も少しビビりながら案内の人についていく。
「はい。ここがサラマンド侯爵様のお部屋になります。ちょうど奥方様とお嬢様方がここでお休みになっております。」
そういって扉の一つをノックする。
「マリア様。アレク様をお連れいたしました。」
「はい。お入りください。」
そして扉が開く。おお、でかい部屋だな。しかも部屋の中でさらに部屋がある。マンションみたいなもんか。
「ご苦労様です。」
「いえ。それではわたくしはこれで失礼いたします。」
そういっ案内兼門番の人が立ち去る。そういえば門番が門を離れていいのか?いやあと一人いたんだけども・・・まずいんじゃないか?仮にも城だろ?セキュリティはどうなってんだ?
「あなたたちもご苦労様。どう?何もなかった?」
「え、いや、あのそのですね。」
「申し訳ありません。少し冒険者の方とトラブルになってしまいました。」
「あらあら。その冒険者の方も災難ねぇ。あなたとアレクが相手じゃねぇ。」
おいおい。すごい信用されてるな。やっぱり母親は俺の実力がどの程度かわかっているんだな。この人もただものじゃねぇ。ふつうトラブルがあったってきいたら心配するだろうに。
「さてと、アレク?城下町はどうだった?」
「とても楽しかったですよ。次は母様と一緒に行きたいですね。」
「まぁ。嬉しいこと言ってくれるわねぇ。そうね、マナとカナも一緒に行きましょうね。」
さてと。さっさと精霊とお話ししないとな。幸い部屋はたくさんあることだし。
「母様。少し疲れたので寝室へ行ってよいでしょうか?」
「ええ、いいわよ。あの部屋よ。ゆっくりお休みなさい。」
「はい。」
そう元気に答えてから部屋に入る。精霊も俺の後を追って部屋に入り俺の顔の前で浮かぶ。
さてと。
『なぜこんなところに精霊がいるのかな?』