メイドのお仕事
今回は主人公以外の戦闘です。
それから特に面白いことも目新しいこともなく6歳の誕生日の三日前になった。
「それで、王都にはどれくらいかかるんだ?」
今は、母親と妹達とサラさんとメイド長で一つ、カイルとリース先生と執事で一つ、俺とリンとミリアさんで一つ、合計三つの馬車で王都へ向かっている。ちなみに父親は仕事で先に王都へ行っている。
「そうですね。このペースならばあと十時間ほどでしょうか。」
「ふーん。ミリアさんも王都へ行ったことあるよね?どんなところだった?」
「そうですね…。」
ミリアさん、そんなに深く考え込まなくても簡単な感想でいいんですよ?そんなに悩まれると声かけづらいじゃないですか。
「にぎやかなところですよ。おいしいものもたくさんありますし。」
リンが本当に何も考えずそう言う。
「リン。王都には確かにおいしいものがありますがアレク様はあまり興味がないでしょう?それよりもアレク様。王都には騎士団や腕のいい鍛冶師がおりますので楽しめると思いますよ?」
はぁ、俺の好きそうなものを考えていたのか。流石ミリアさんリンとは大違いだな。リンは、まだまだだな。
「えー、おいしいものは誰だって好きですよ、ねぇ、アレク様?」
「確かに嫌いじゃないが…リンほどじゃないな。」
「べ、別においしいものが大好きでもいいじゃないですか。大体アレク様はもう少し息抜きを覚えたほうがいいと思います。いっつも勉強とか剣のけいこばかりじゃないですか。」
「確かにアレク様はもう少し遊ぶことをしてもよいかと。流石に女遊びは早いかもしれませんが。」
「そんなことするか!!」
女遊びとか6歳でやるもんじゃねえ。ほら、リンだって顔赤くなってるじゃん。
「あ、アレク様、だめですよ!?まだ早いですって。わ、わたしの心の準備が…。」
何言ってんだこいつ!?
「だからしないって。俺はまだ5歳だぞ?わかってんのか?」
「そういえばまだ5歳でしたね。」
ミリアさん?今思い出したみたいな顔しないで下さいよ。俺はこの体ではまだ約6年しか生きてないんだ。女遊びなんてやってられるか。この時期にたっぷり鍛えるんだ。
「さて、冗談はこれくらいにいたしましょう。」
「冗談か…。でもリンは本気だったみたいだな?」
「えっ!い、いやだな、アレク様。わたしも冗談だと思ってましたよ。」
「本当かねぇ?」
「アレク様、リンも多少期待していたのでしょう。あまりからかってはいけませんよ?」
「み、ミリア先輩まで!?」
いやぁ、にぎやかだな。やっぱ闘い以外でも楽しまないとな。
そしてそれからはリンをからかうことで時間をつぶしていると急に馬車が止まり、大声が聞こえてきた。
「なんだ貴様らは!!サラマンド家の方が乗っていると知ってのことか!!」
「誰だろうと関係ねえや。金目のもんとついでに体ももらっちまおうぜ。」
うわ、分かりやすいのが出てきたよ。だがまあ、いい実戦訓練にはなるかもな。楽しませてくれよ?
「アレク様、ここにいてください。」
俺が外へ出ようとするのを止めて代わりにミリアが外へ出る。
「おいおい、なんで?」
「大丈夫ですよ、ミリア先輩は強いですから。」
俺の言葉を誤解したリンが俺を安心させようと声をかける。
なんで止めるんだ、って文句を言おうと思ったんだがな。まあいい。ミリアの闘い方を見せてもらうか。
透視で外の光景を見るとミリアと5人のにやけている男たちがいた。
「おう?いい女じゃねえか。犯されに来たのか?」
「ひゃはははは。」
下品な笑い声だ。しかも雑魚っぽい。
「ふふふ、さよなら。」
ミリアはその言葉と同時に初動を全く見せずにいきなり男の背後にまわりナイフで首を刈り取る。
「まずは一人。」
「なにがっ!?」
声を発した男に対し男からは消えたように見えるよう一気に姿勢を落としカイルと同じくらいの速さで間合いを詰めナイフで一薙ぎ。そこでやっと事態を把握した残りの三人が剣を振り上げるが、
「遅い。」
その剣を簡単にかわしナイフがきらめく。そしてまた一人崩れ落ちる。そして振り返りざままた一閃。そしてその勢いのまま最後の男の眉間にナイフが投げ込まれ突き刺さる。
「終わりましたね。従者さん。この男たちはここに置いてもよろしいですか?」
「あ、ああ。」
動揺している従者に確認を取り、道の端に放置する。
「では、お騒がせして申し訳ありませんでした。」
ミリアはそう言って馬車に入ってくる。
「やっぱりすごいです、ミリア先輩。」
ああ、リンの言うとおりミリアはすげえ。ああなんで気づかなかったんだ?こんなに近くに俺の暇をつぶせるやつがいたなんて。
「アレク様、お戯れはおやめください。」
「…仕方ないか。」
「え?」
ミリアさんがそういうんじゃ闘えないな。まあ、あの殺気に気づけるんだからぜひ闘りたいが。本人がいやなら仕方ない。しかしあの動き、どう見ても暗殺者のそれだぞ。メイドってのは暗殺も仕事なのか?いや、リンじゃ無理だな。
「アレク様?」
「いやなんでもないよ。」
それからまた雑談をしたり昼寝をしたりしてやっと王都の城壁の入り口に到着した。