4th Record:together⑧’
カインドの論述によって一時は希望が見えていたリリスの行方。しかし、ロージナの副艇長により状況は逆転してしまった。あらゆる策が潰えた中、リリスは諦めの言葉を口にする――。
「もういいんですよ」
そうした一言を絞り出す為に、リリスは瞳を涙で濡らし、隠し様がない程に頬を真っ赤に染めた。
自分でも諦めが悪いと思っていた。心では偽れても、身体は言う事を聞いてくれなかったのだ。
「リリス……」
義母が、ミテラが自分の名前を呼んだ。それに続いて、アネットとミテラがリリスに視線を向けていった。
「……リリス、ちゃん」
リリスを短く見つめては、カインドが顔を背けてしまう。
名残惜しいのは当たり前だった。彼等ともっと一緒に居たかった。けれども、リリスがカエルムに残れる期限は切れていた。涙腺を壊して嘆くのは簡単だが、そうした有体ではカインドに面目が立たない。
なら、自分がやる事は一つだ。
リリスは両の足裏を床へと降ろし、椅子から立ち上がった。
「クレイン副艇長。交渉は、これでおしまいです」
その断言に、簡潔な答えが返る。
「確かに」
長かった言い合いに終止符が打たれようとしていた。リリスから受け答えている人物が、幕を降ろす役目を担っていた。
彼は独特に低い声を震わせ、続ける。
「同盟を結ぶかどうか、今ここで決めてもらおう。クレイン副艇長……いや、こう呼んだ方がいいかな、飛行艇ロージナの代表よ」
ボーデン・ディアスティアが、そう問いかけていた。
「は?」
己の台詞を横取りされたクレインが呆気に取られる。ロージナの副艇長は鋭い瞳を二、三回瞬かせ、ボーデンの方へとゆっくり首を振った。
「…………いい加減に……しろ」
クレインが双肩を微動させる。数回の妨害を経験したせいか、彼の顔は赤色に彩られていった。怒っているのは一目瞭然である。後少し、という所で舌戦による苦労を無下にされているのだ。
彼は瞳を更に尖らせ、感情を爆発させた。
「いい加減にしろっ! もうこれ以上は付き合い切れん! 同盟するかどうかを……ここで決めろだとっ? 例え総艇長の貴様であろうが、片方の意見を聞かずにそこまで取り付ける権限などある筈がな――」
「この話は、私が持ちかけているのではない」
ボーデンが口にした事実が、クレインの怒声をぴたりと止めた。
彼は片方の手を宙に持ち上げ、そこから人差し指を立てる。さり気ないその動作は誰もが思い浮かべた疑問に代弁していた。
誰がロージナとの同盟を言いつけたのか。
解答者以外の全身が予想もしていない名前が、矢継ぎ早に露見される。
「遥か上に居る、熾天使階級からだ」
公言された階級は、空の住人なら必ず知っている物だった。
空と宇宙の境目における大気圏の寸前。そこで燃ゆる翼を掲げ、光が及ばない暗黒の地域を照らす四人の操縦者。彼等こそが、世界で最も権力のある熾天使階級と呼ばれる小鳥乗りだった。
「ば、馬鹿なっ!」
クレインが憤りを通り越し、戸惑いを露わにする。
「何故、熾天使階級がこの場に出しゃばって来る!? 大天使階級の所属が変わるかどうかの話だぞっ! その程度で奴らが干渉してくるなど有り得ない!」
焦りを見せるクレインの言い分も確かだった。
熾天使階級は太陽の光が当たらない領域――未明領域を浮遊している。
地表を覆った黒雲は当然、彼等の真下にも存在する。重力を抑制する小鳥には飛び交う空を照らす光源が必要だ。だが、陽光は届かず、黒い雲が周囲に散漫している。個々の翼による明かりだけでは不十分であった。
そうした問題を解決したのが、大天使の次に階級が高い熾天使階級である。
「残念だが、有り得るのだ」
ボーデンがゆっくりと会議室の角を指さした。クレインだけでなく、自分やカインド達も彼の示す一点に視線を追随させる。
「あれは…………カメラか?」
カインドが目を細めながら呟いた。ボーデンの指が向いていたのは、天井近くに設置された防犯カメラだった。やけに小型だ。リリス自身も指摘されてから初めてその存在を知った。
「――まさか」
ミテラが何かを感付いた。それをリリスは尋ねようとしたが、そんな暇もなく、ボーデンが重音を発する。
「ここでの映像は、初めから熾天使階級の所に送られている」
「何だって!?」
少し離れた席でカインドが驚愕の意を示した。
「じゃあ……熾天使階級は、最初からこの会議に関わっていたのか……?」
「正しくは、私が要請した上で関与してもらったのだ」
ボーデンが説明を施しながら、椅子に踏ん反り返った。その巨体からは密度の高い余裕が滲み出ている。
「そんな、馬鹿な……」
クレインが食い掛かる様に前のめりになった。肩から力を抜いたボーデンに反感を抱いているのは明らかだ。しかし、大柄な体躯から漂う風格と威圧感に、彼は声量を狭めていってしまう。
「熾天使階級を動かす、だと? あの四人はこの空で最も権力が高い筈だ……! それこそ、超級飛行艇の総艇長が複数人集まって出来るかどうかだ。カエルムの規模ではそこまで行く訳が」
「先入観を壊す様で申し訳ない。私は……このボーデン・ディアスティアは、熾天使階級と同等の身分を許されているのだ」
堅い表情の奥で、にやりと微笑が割れる。
その顔を見た途端、リリスはかつてない戦慄を覚えた。黒雲と言った災害と対峙した際の感覚とは異なる。絶対的な存在感。圧倒的な権力。空における人間関係の頂点が、自分の目の前に座っているのだと理解させられた。
ひゅー、と誰かが息を吸う。
その人物は近くに居るボーデンに怯えながらも、恐る恐る彼へと尋ねた。
「貴様は……何者だ?」
下手をしたら自分がしていたかもしれない質問は、クレインの口から出ていた。ロージナ副艇長の疑念は同意できる。彼の人格はあまり好ましくなかったが、リリスはボーデンからの回答が気になった。
太い鼻から空気を吐き出し、ボーデンが無言の時間を稼いでいく。脱力と呼ぶより、自身に向けられた問いかけに呆れている様だった。
再び、一息が入る。
長く感じられる数秒の閉口は直後に断ち切られた。
「私、ボーデン・ディアスティアは……カエルム総艇長、兼ネア・セリニ学園の学園長だ。それ以上の、それ以外の何者でもない」
「言うねぇー。あの人はっ」
女性の声が軽やかに響く。彼女は目前にあるスクリーンに向かって笑い飛ばしていた。
放映されているやり取り。それはリリス達が言葉を錯綜させている、カエルムの会議室における映像だった。
『熾天使階級からの命令だ。カエルムと貴国ロージナとの同盟を結ぶかどうか。今、ここで決めて貰おう』
スクリーン上でボーデンが言い放った。
「……どうやら、終わりそうだね」
会議室に居るクレインの反応を待たずして、若い青年が感想を述べる。彼は高らかに笑いあげる女性の背後に立っていた。
そんな彼の方へ、数十分間は映像に釘着けだった瞳を向ける女性。
「あ、居たの?」
「…………初めから居たんだけど」
青年が不機嫌そうに反論を言う。事実、彼はカエルムから送信される映像を初めから目撃していた。女性が到着したのは放映時より数分後の事である。青年の存在は視界に入っている筈だった。
「だって、影薄いんだもん」
「……酷いよ、姐さん」
女性の率直すぎる一言が青年の胸を抉った。彼はがっくりと肩を落とす。しかし、消沈に構うことなく姉は会話を吹っ掛けていった。
「んで、あんたから見てどう? あの可愛い天使ちゃんは」
「普通に大天使階級って言ってくれ。……それじゃ分からないよ」
女性の独特な言い回しに青年は呆れていた。映像に出ている半数以上は天使階級の保持者なのだ。それでは特定が出来ない。
仕方なく思いつつ、青年はスクリーンに映っている銀髪の少女を指さした。
「リリス・エレフセリア……ね。随分と複雑な過去があるみたいだけど」
「あーもう! リリスたん可哀想よー! あんな超キュートな子を追い詰めるとかふざけてんの!? ロージナの副艇長だっけ、あのクソ男っ? 熾天使階級としての特権で今すぐ死罪に――」
「……やめてくれ」
冷ややかな一喝で姉の暴走を押さえつける。昔から姉は放っておくと実行しかねない性格だった。弟である青年は彼女の傍らでいつも沈めて来た。階級が姉と同じである為、顔を合わせる事も多い。
――三世代の中で初となる、姉弟共々の熾天使階級として。
「精神面がちょっと不安だな。思春期だからと言えるし、境遇からして仕方ないかもしれない。……だけど、悠長にしていられる時間も少ないからね」
「んー。毎回思うけど、あんたは辛口ねぇ」
くすり、と微笑が聞こえる。彼女の声音は然程に青年を責めてはいなかった。
「じゃあ、こっちはどう?」
姉が金髪の学生に指を突き付ける。背が高く、柔和な顔立ちが特徴的だ。しかし、外見とは裏腹に彼は驚く位に頭が回る。
生徒という身分が災いしたものの、彼は切れ者であるクレインを一時的に言い負かしていたのだ。それを見た青年の意見は自然と決まってしまう。
「ちょっと危険だね」
珍しく、姉が首を縦に振った。
「そうね、あれは真正のロリコンよ。リリスたんが危険だわ」
「そういう意味じゃないよっ?」
青年の声が思わず張り上がった。
危険なのは姉さんの思考回路だ、と青年は胸中で呟く。カエルムの会議室では相変わらず切羽詰まった空気を維持していた。スクリーン前との温度差が激しく、青年はリリス達に申し訳なく思った。
「彼は頭が回り過ぎる。……下手をしたら、三十年前の真相に自力で辿り着くかもしれない」
「うわー。フラグが立ったー」
「ふざけないでよ、姐さん」
青年は姉の態度を戒める。しかし、彼女は緩んだ口元を正さず、スクリーンに視線を投じるばかりだった。
「別にー。…………ふざけては、いないわ」
冷淡な呟きに、弟の反応が一瞬だけ遅れた。
「…………え?」
即座に聞き返そうとする。どういう意味合いを込めて発言していたのか。青年は彼女が秘めている考えを図りきれなかった。
「ここまで頭が切れなきゃ、知る権利がないわ。特にこの金髪はリリスたんの知人であるだけで、殆ど部外者なのよ。……だけど、もう関係者云々を言っていられる時期じゃないでしょ?」
「まあ、ね」
「ボーデンさんもそう考えてんじゃない? 当事者のあの人が核心に触れる様な事ばかり言ってるんだもん。合格、と見なしてるんでしょうね」
とん、と彼女の指がカインドの頭部を小突く。
指先の影が離れていく。同時に、スクリーンへ投影された人物達が次々と動きを見せ始めた。席を立つといった移動までには及んでいないまでも、各々の表情が変わっていくのだ。会議が最後の段階へと移行したらしい。
「さあ」
頭を引き、視野を広める。
遠い地からリリス達を観劇する彼女は、口元の笑みを深め、正面に居る若き操縦者達へと語り掛けた。
「待ってるわよ、第三世代の大天使階級。そして、その友人達よっ」
揺らめく光が女性の周囲に迸る。それは彼女の心情が形を成した物だった。瞳に映される物体は持ち合わせていない。
だが、彼女から一歩引いた場所に佇んだ青年は目視していた。
姉が放つ、濃密な心の震えを。
必要なのは情報の高度な構築力と解読力だった。熾天使階級としての才能を見出された時から見についていた能力。熟練の操縦者でも機械を通さずに読み取るのは難しい。故に、そうした行為を平然とやってのける熾天使階級は重宝された。
そして、彼等の上で頂点に坐するのが、リリスの背負う大天使の階級であった。
カエルムの会議室で、ボーデンが口を開く。
「簡単な話だ。カエルムとの同盟を結ぶか否か。さあ、この場で答えてくれ」
リリスは会議の終了を間近に感じていた。
ボーデンの正体をクレインは幾度か探ったが、前知識以上の情報はついに浮かんでこなかった。その一方で、ボーデンによる催促だけが会議の到着点を明らかにしてゆく。
ロージナの副艇長がイエスかノーを口にする。
単純な話だった。しかし、交渉はその二択によって長引かされている。
たった一人でカエルムに留まるクレインは逡巡していた。脂汗を何粒もかき、苦渋を飲み続けている。自然体より大きく開かれた両目が不気味。眺めているだけで、彼の煩悶に自分も飲み込まれそうになる。
「く、そ……」
呻き、目を細めるクレイン。
「大天使階級の為だけに、ロージナの国政を捻じ曲げろだと? 何年この体制を取っていたと思う。……そう簡単に、私一人だけで決められるかっ」
彼は苦し紛れにそう言い放った。
――確かにそうだ、とリリスも同意する。
この流れは先刻も通過した。カインドによって同盟以外の手段を見失ったクレインは、ロージナ総艇長といった権力者達と相談したいと持ちかけていた。
だが、ボーデンはこの場による決定を要求している。熾天使階級が彼の背後に居るのでは、流石の副艇長も逆らえないらしい。
「クレイン副艇長。……貴方は、一つ勘違いをしている」
「何だと」
針の如きで視線によってボーデンが睨み付けられる。クレインはまた未知の情報が躍り出るのか、と警戒しているらしい。
「ここに居るのは、一人ではないだろう?」
クレインの顔から緊張が消える。彼は半ばに開けた口を余所に、思考を遠い彼方へとやっている様だ。
――どういう、意味……ですか?
焦点の対象をカインドに移す。リリスの目には、口元に指先を当てて考え込むカインドの姿が飛び込んだ。思い当たる節があったらしい。二人は記憶を掘り返すように、瞳を瞼の片側へと偏らせていた。
「あ」
閃きを口に出したのは、先輩でも副艇長でもない。リリスが日常的に聞いている声音が事実を日の下へと引っ張っていった。
「リリスは、もうロージナの住人だったんだわ……!」
母、ミテラが唐突に呟いた。
「!!」
彼女の言葉にクレインは絶句する。リリスがロージナの一員になる為の条件は全てクレインが語っていた。自分の失策は自信が最も理解しているらしい。ミテラによる指摘そのものが、驚愕に追い打ちをかけていたのだ。
ボーデンの真意が明らかになるのも、そうそう時間がかからなかった。
「大天使階級は、副艇長と同等――もしくはそれ以上の権力が与えられる。……確かにそう言いましたよね、クレイン副艇長?」
ミテラによる時間稼ぎの間に交わされたやり取り。
その瞬間に零された一滴が、クレインの致命傷となっていた。
「あ、いや――」
クレインは急に慌てふためき、挙動不審に口を震わせていく。自分の発言を誤魔化そうとしているのだろうか。だが、彼の顔がある方向で固定された。クレインの声が予兆もなく枯れてしまった。
鋭い目線の先に会ったのは、ボーデンが示した例のカメラだ。そこから映る光景は全て熾天使階級へと送られていると言う。会議の行方を知らせるとなれば、音声も刻まれる動画と考えるのが妥当だ。
「ボーデン総艇長」
カインドが手を挙げ、ボーデンへと尋ねる。
「僕は遅れて参加したので、その発言を聞いていないのです。クレイン副艇長は、本当にそう言ったのですか?」
一見して的外れな疑問だった。口答は余りにも不鮮明であり、ボーデンが「そうだ」と言っても状況に変はない。クレインが否定さえすれば、真偽はあやふやになってしまう。
当の本人もそれは自覚している様だった。真面目な表情を保っていたが、極微小な角度で唇が吊り上がっている。
「それは断言できない」
ボーデンが短く一蹴する。嘘か、本当か。どちらかの証明は、人の口から出る事を断られてしまった。
そして、ボーデンが太い人差し指を伸ばした。
「知りたければ、そのカメラに残っている記録を確かめろ」
骨太な指の延長線上で、カメラのレンズが交差する。ぎりぃ、とクレインの歯ぎしりが会議室に響く。
――そういう、事ですか。
リリスはカインドの微笑が悪巧みの意だと気づいた。
真の目的は、ここでの会議が動画として残っていると確信する事。発言の有無が分かるのであれば、十中八九音声は付いている。
大げさすぎる笑みを浮かべ、カインドが礼を述べた。
「分かりました。ありがとうございます」
カインドは横目でクレインを眺めた。リリスも、その一瞬の動作を見逃さなかった。
この確認によってロージナ副艇長は言い逃れが不可能になった。正しくは、虚飾を防ぐ為にカインドが先手を打ったのだ。カメラを再生すれば全て済む、という認識が全員に共通された。先の一言はもう発言者自身にも否定できない。
「では、この会議室には……ロージナの人間が二人。しかも、どちらも凄い権力者ってことですね」
アネットが、興奮したような口調で状況を整理する。
「それなら、カエルムとの同盟も」
相次いで、ミテラが希望を口にした。
クレインが懸念していたのは独断による同盟だ。しかし、熾天使階級からの要求、副艇長以上の権力を持つ大天使階級の同意があれば、独断までには至らない。カエルムと同盟し、大天使階級の少女を迎える。完全な鎖国撤廃と比較すれば、妥当な判断とさえ言えた。
「何か、よく分かんねえけど……」
これまで静かだったミエンがリリスの方を向いた。その眼の輝きは鈍く、何処か眠たそうだった。今までの話を聴いていたのだろうか、と不安になる顔つきだ。
だが、彼女はリリスよりも本質に近い理解を抱いていた。
「お前が同盟を望めば、全ては解決ってことなんだろ?」
その発言が、リリスを複雑な迷路から抜け出させた。単純な仕組みだった。ミエンに言われなくてもすぐに気付いていただろう。それでも、重かった心境が軽くなっていく。
――沢山の人が、自分を助けてくれた。
リリスは一人一人の顔を見回していった。長い付き合いの者も居れば、短い付き合いの者も居る。そんな人達がなりふり構わず自分に手を差し伸べてくれた。
感謝の気持ちで一杯だ。
彼等に報いたいと思う自分が見える。言葉では足りないと忠告する自分が見える。
「リリス・エレフセリア……!」
クレインが積み重なった悪意を載せ、リリスを凝視した。警告のつもりなのであろう。同盟を肯定するな。彼の苛付きに満ちた架空の声が、自分の鼓膜を叩く。
迷いが胸の奥で渦巻いた。
自分が掴んだ未来を、最後まで背負いきれるだろうか。ここでの決断で自分は生まれ故郷で孤立する恐れがある。大天使階級であろうと、飛行艇一つに背を向けるにはかなりの勇気が必要だった。
でも、そんな勇気は何人にも見せて貰った。先程だって、この小さな身体に覚悟は宿っていた。――全ての準備は、整った。
リリスが、胸を張る。
「私は」
本当の意味で、少女は飛び立つ。
「カエルムとロージナの同盟に、皆が仲良くする事に、賛成です!」
手を伸ばされたあの日から始まった、操縦者としての日常。その毎日をリリスは暗い過去を引き摺って歩いてきた。
あらゆる束縛を引き千切り、少女は自分の意志で地を蹴った。
彼女は目指す。
――遥かなる、蒼天の世界へ。
はい、論戦が終了しました。何だかかなり間延びしてしまった感が自分でもあります。第一話を書いた時から、こうした論戦がやりたいなー、と考えており色々と仕込みました。面白いと思っていただければ幸いです。




