ボクの住まいは教会です
ボクの住まいは小さな教会です。
今は使われていないらしく人は来ません。
キミは人ではないのか、ですって。
すみません、ボクは猫なんです。
ええ、真っ黒の。
生まれてからずっと、野良暮らしでして。
ここは雨宿りにもってこいなんですよ。
さあ、お昼寝もすんだことですし、そろそろ『あの方』がいらっしゃる時間ですね。
え、あの方とは誰のことなんですか、ですって。
それは、待っていただければわかりますよ。
あ、あの方です。
今、入ってきた少女ですよ。
いつもこの時間にいらっしゃるのです。
いつも祭壇まで歩いてきては、お祈りをして帰っていくのです。
毎日欠かさずいらっしゃるようで、大変そうですよね。
ん、あなたはさっき『人は来ない』と言ったじゃないか、ですって。
はい、言いました。
あの子は人じゃないか、そう言いたそうですね。
ボクも不思議に思い、後ろをついていったことがあるのですが。
教会から出て行った瞬間にいなくなってしまったのです。
狐に摘ままれたような心地でしたよ。猫ですけど。
けむりのように人が消えるなんて、ありえますか?
ボクは確かに『人は来ない』と言いました。
どう受け取るのかは、あなたにお任せしたいと思います。
もうすぐ夜が来ますね。ボクはそろそろご飯を探してきます。
それでは、ごきげんよう。