第五話:駆け引き無しのおバカさん
第五話
赤井さんが狼人間だと言う事を知って二日経った。
「あのさあのさ、何でそんななの?」
「…言わなきゃダメ?」
「別に駄目じゃないよ。うん、問題無いねぇ…でもさ、赤井さんだって『ああ、あの時ちゃんと教えておけばよかったぁ』って後で思うかもよ?」
ちょっと悪い感じに笑って見せた。これで、多分大抵の人は渋々ながら教えてくれるだろう。
「…何であたしが困るの?」
何か考えがあるようには見えなかった。
首をかしげて本当に不思議そうにする姿は実年齢よりも幼く見える。
「それを素で返すと言う事は…勉強、苦手?」
「苦手じゃないよ。嫌いなだけだよ」
凹凸の無いボディーを自慢げに俺に見せる。
どうやら脅しちゃうぞと直接言わないとわからないタイプのようだ…しかも、そうなったら多分変身されて俺がやっつけられる事だろう。
「…じゃあさ、何か奢るから教えてくれない?」
「本当に?二言はないね?」
「うん、ないぜ」
それから場所を移し、喫茶店に二人で入る。
「じゃ、いっただきまーすっ」
「どんどん食べてちょ」
目の前には三千円近くのパフェが…あれ?脅している側の人間が逆に無駄金払ってる?
ま、まぁ…周りに狼人間なんていないし、ネタには成るかな。
女の子と一緒にパフェ食べにいけてるし…可愛いとか言うよりも元気百倍が先に来ちゃうけども…食べ方だって豪快だ。
「はむはむはむはむ…ちょっと、まってね。すぐ食べ終えるから」
「…味わいながらでいい。ゆっくり話してよ」
「えっとね、簡単に言うなら…子供のころに神社でいたずらしてたら呪われちゃったの」
「誰に?」
「お犬様って言う神様?かなぁ…夢に出てきて『わしの骨っ子を蹴散らかすとか何事かっ!かーっ!』って。満月見たり、興奮すると狼になっちゃうの」
にわかには信じられない話だった。
「家系とかじゃないの?」
「うん。お父さんもお母さんも驚いていたよ」
「そうなんだ」
あっという間にパフェを食べ終わり、またメニュー表に手を伸ばそうとしている。
「駄目」
「えーっ。いいじゃん。乙女の秘密を教えてあげたからさ」
「…正直、聞いて後悔してる。これで三千円は高かった…」
そういった凄い家系なのかと思った…。脚色してくれればそれなりに面白く…なったかな。でも、ありのまま、非日常な話しながらも現実みたいだし、こんなもんなのか?
これなら『男子生徒が春先に隣の女の子の事が気になって一緒に居る』方がまだ面白かったかもしれない。
「ねぇ、もっと奢ってくれてもいいじゃーん」
「…わかったよ、うるさいなぁ…じゃ、俺の質問にもうちょっと答えてよ」
「いいよー…あ、スリーサイズとか聞くつもりだね?えっち」
「はっ、在り得ないよ」
改めてみるような身体でもないからな。
「え、何今の馬鹿にしたような目は」
怒らせると変身してしまうかもしれない。早く話をそらそう。
「それで、変身したらどうなるの?」
「パワードスーツ着た感じだね」
「へぇ、どんな事が出来るのさ」
「とりあえず、地面を割ったり、コンクリぶち壊したり楽勝楽勝。おじいちゃんおばあちゃんの介護も楽になるよ」
変身したら怒らせないようにしよう。俺が介護してもらいたくなったら頼もうかな。
その後もいくつか質問をする。
「あのさ、その情報何に使うの?」
赤井さんに聞かれて首をかしげる。
言われてみれば、そうだ。
「…単なる好奇心?」
「え?あ、あたしの事がもっと知りたい…とか?そ、それなら…趣味とか、好きな物とか…好きな場所とか教えてあげるよ?」
ちょっと照れたようにそんな事を聞いてくる。
「うーん…思ったより狼人間になった理由がしょぼかったから…どうでもいいかも」
「むかっ。別に、好きでなったわけじゃないもんっ」
「ご、ごめん。そう言うつもりで言ったわけじゃないから。えっとさ、学園で他に知っている人っている?」
「うーん、殆どいない」
そりゃあ、そうだろう。あんな…もふりたくなるような獣人になるのなら知って居たら襲いたくなる。
「じゃあ俺との秘密だね。誰にもばらさないよ。その代わり、俺に何か会った時は助けてよ」
面倒くさそうな顔をされた。
「どういう時に助けに来いって?」
「…それも思いつかないなぁ…試験勉強?」
「こっちが助けてほしいよ」
意外と、この人は役に立たないのかもしれない。体育で満点とれても、人前で狼人間になるわけにはいかないだろうし…本当、可哀想な人だ。でも、罰があたったのなら自業自得だろう。
初期設定では赤は熱血正義の味方、青はどんな時でも冷静沈着、黄色は小うるさいツーテール、黒は電波ちゃんでした。青と黒がキャラ被っていて青の魔法使いに対し、黒の魔法使い…今でもそれは変わっていません。しかーし、青は基本的に他の生徒と交友や信頼があるため問題ありませんが黒のほうは人付き合いが苦手なので基本的に白しか登場人物がいないのです。要所要所でたまに変な友人も出たりしま…もう出てましたね。行ける所まで行く予定です。




