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第四話:気になる黒はお約束

第四話

 転校初日、早速遅刻しそうになった。

「遅刻だーっ」

 食パンをかじりながら登校なんて、あまりにも非日常だ。

 日本人ならやっぱり朝は味噌汁とご飯じゃないと力がでらんぞい。

 そんな事を考えていたからか、それとも『お約束』なのか…

「っと…あわわっ。あぶ…」

「きゃっ」

 曲がり角でぶつかってしまった。あまつさえそのまま押し倒してしまった。

「ったたた…大丈夫?」

 自らぶつかっていって、押し倒し…気付けば、相手の胸を鷲掴みしていた。

「…」

 お、大きい…。

「…ぁうっ」

 長い髪の間から見える大きな目は、潤んでいた。

「あ、ごめん」

 馬乗りになっていたので、慌てて立ち上がる。パンツもモロ全開だった。真っ白なパンツが朝日に眩しい…。

「…っと、ごめん。俺が不注意なばっかりに」

 相手を助け起こそうとして気がついた。

 あれ?遅刻しそうな感じの割に人が多いな…ではなく、パンツ全開なのに男子生徒はこちらをみることなく素通りしていく…さらに、一匹の犬が俺のトーストを咥えて何処かに持っていった。

 シャイボーイが多いのかと思えば、パンチラ相手の顔を見て慌てて逃げていくのだ。

「?」

 目の前の少女の顔を確認してみることにした。

 髪が長くて良くわからないものの、ちらりと見えたその髪の下は間違いなく可愛かった。

「っと、いかん。女の子の顔を見ている場合じゃねぇっ…。御免、俺、今日からこっちに転校してきた二年の白取冬治って言うんだ。君は?」

 飛んでいった鞄を拾って、相手に渡す。俺も自分の分と思われる物を拾っておいた。

「……黒葛原、深弥美」

 つづらはらみやみ、さんか。つづらはらやみやみって言いそうになった。

「わかった、放課後辺り呼び出してもらって改めて詫びを入れるよ。じゃ、俺は急ぐから!」

 名前さえ覚えていれば、教師の誰かが知っているだろう。

 俺はそう考えてその場を後にしたのだった。

「…って、やべ。どうやら鞄を間違えちまったようだ」

 鞄の中から『基本のクロマ』やらイモリの黒やきっぽい何か、何かの骨、日の当て方によって色が変わる小瓶が出てきた。

 あの子の持ち物だろう。

「…しまったなぁ…」

 俺の鞄の中にはシェクシーグラビアの写真集が入っている。しかも、結構きわどいものだ。この学園に通っている親戚が持ってきてほしいと言ったのだ。

 あれを女子生徒…しかも、押し倒してあまつさえ胸を揉んだ相手にみられるのは如何なものか。わざとやったのではないかと思わないだろうか…それはないか。

「…やっぱり、探しに行くか」

 どうやら俺の時計のほうが止まっていて勘違いしていたらしい。まだ時間は十分ある。

 曲がり角を曲がろうとして、また誰かにぶつかった。

「いたた…すまん」

「……」

「おや?」

 また、俺は胸を揉んでいた。

 どんだけ好きなんだよ…いや、大好きだけどさ。

「二度目だけど、わざとじゃないよ」

「……うん」

 信じてもらえたようで、俺嬉しい。

「そうそう、俺、どうやら間違えて黒葛原さんの鞄を持って行っちまったようなんだ」

「……中、みた?」

「ごめん、見ちゃったよ。俺の鞄の中は…みた?」

 首を振られる。

「よかったぁ…」

 心底ほっとしたぜ。もし、みられて居たら間違い無く『転校生は巨乳好き』と言われたに違いない。

「おっと、そろそろ始まる時間だね。黒葛原さん二年生?」

「……C」

 Cカップ?それ以上あったと思ったけど。

「……C組」

 俺の邪念を読み取ったのか、目の前の少女は胸を隠すように鞄を抱いてそう言った。

「あ、C組か…それなら俺と一緒だ。よろしく…といっても、仲良くしてくれるかどうかわからないけどね」

 押し倒して、二回もおっぱい揉んだ相手と仲良くしてくれるような優しそうな子には見えなかった。

「……こちらこそ」

「やった!」

 外見で人の判断しちゃ駄目だね。うん、これは何だか楽しい学園生活がおくれそうだ。


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