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第三十七話:あの子の部屋で骨折フラグ

第三十七話

 夏休みに出された宿題はさっさとケリをつけねばならない…それを教えてくれた友人は五年ぐらい前に転校していった。今では不良街道まっしぐらである。

 警察に厄介になった時のセリフが『あの時夏休みの友をちゃんとやっていればよかった』は俺の知り合いの中では有名である。

「と、とーじくーん…」

「何だ」

 隣のゾンビはそういった反面教師が居なかったようで苦しんでいる。

「助けて、助けてよぉ…あたし、今日までに宿題終わらせないと…四季先生とずっと合宿だよぉ」

「あのなぁ、お前が勉強をしてないのが悪いんじゃないのか?このクラスでやってないの赤井だけだぞ」

 どうした、学年三位かっこ笑い。

「うう、そうだけどさぁ…」

 夏休み前に『夏休みの宿題を終わらせられなかったら合宿です!』と四季先生に言われている。結構これがハードらしくて、去年経験した奴らは全員やってきていた。

「学年三位だから免除とかないかなぁ」

「それは無いだろ。逆にしてこなかったら学年三位専用罰が下されそうだな」

「うう…」

 机に突っ伏し、泣きに入る赤井…自業自得とはいえ、少しだけ可哀想だ。

「……あのさ、宿題見せてくれたら…あたしとデート…」

「いや、遠慮しておく」

「…………酷い」

「酷くない。ほら、さっさと冗談言っている暇があるなら終わらせた方がいいぞ」

 ぺしぺし頭を叩くと上半身を起こした。

「じゃ、じゃあ…さ、尻尾を触らせてあげるよ。好きなだけ…どうかな?」

「先生が来る前に写すんだ!」

 ちなみに、こうやって宿題を見せるのは重罪だ。もしもばれた場合は反省部屋で課題が出される。こと、宿題に関してはうるさいこの学園では告げ口も推奨されているのだ。

 不良がガリ勉クンに勉強を見せた場合はもう、酷いのだ。

「義務教育じゃないんだ、勉強する意思がねぇんならやめちまえ」

 そう言われて退学を喰らうそうだ…もちろん、不良だけではなく度重なる違反行為をすれば成績優秀者とてほっぽり出される。ようは不正が大嫌いらしい。

 何とか宿題を終わらせた赤井にため息をつく。

「本当、綱渡り好きだな」

「好きじゃないよ?落ちたら危ないって」

 こんな奴が学年三位なんて神様はいじわるが好きらしい。

「今日は午後から休みだし…教室だと危ないよなぁ…屋上か?屋上もちょっと怖いな」

「そ、それならさぁ…あたしの部屋に来ない?」

「おう、そりゃいいな」

 そこでなら邪魔が入らないだろう。学園で隠れて、もふっていると危なそうだし。

「最近仲がいいね」

 脈絡もなく七色がよってきた。

「んー、そうかぁ?元からこんな感じだろ?」

「うーん…そうかなぁ、赤井さんが結構積極的になったかなー」

 七色の言葉は曖昧だった。赤井は顔を真っ赤にしている。

「べ、別に仲良くないから!ね?」

「いや、そこまで否定されるとちょっと悲しいぜ」

「ふーん?」

「こ、今度は何?」

 赤井の顔を見つめて七色が一つ頷いた。

「うん、ま、頑張って」

「頑張るって…何を?」

「赤井さんがわかっていればいい事だから。白取君は知らなくてもいい事だよ。あーあ、どこかにいい男は転がって無いかな―」

 そういって七色は去って行った。

「あいつは何かするために来たのか?」

「さぁ?あ、あたしはわかんない。ほら、行こうよ」

 手を引っ張られ、一緒に歩き出す。

 見慣れた赤井家につくまで赤井は何かを言おうとしていた…が、結局言う気はなくなったらしい。

「じゃ、あがって」

「おう」

 部屋にあげてもらって、見渡す。

「ちょ、ちょっときょろきょろ禁止だから」

「悪かった」

 部屋内は比較的整頓されていた。

「狼のぬいぐるみがあるな」

「うん、これお気に入りでね、お母さんが作ってくれたの」

 子供が掴んだらきっと抱きしめられるサイズだ。

「狼になった後のあたしを参考にしたんだって」

「……小さい頃の赤井かぁ…」

 それはさぞかし、変身したら可愛かったんだろうなぁ。

「タイムマシンがあったら、間違いなくそのころに行って赤井を抱きしめてただろうな」

「…変態。警察呼ぶよ?」

「おい、勘違いするな。俺は顔を埋めたいだけだ…それで、宿題見せてやったから約束は守ってくれるんだよな?」

「え?あ、あーそうだったね」

 あっという間にもふもふになった狼を見てため息をつく。

「…相変わらずいい体躯してるよなぁ…」

「腕相撲でもやってみる?」

「お、それちょっと試したい…」

 尻尾をいじるのはその後にしよう…。

「一応、手加減してあげるから」

「本気出してくれよ」

「え?いいの?」

「おう」

 狼人間の本気ってどれだけだろうか…。

 アホだったんだろう、俺も。

 その後、俺は病院へ連れて行かれる羽目になった…狼人間との力の差を見せつけられた右手は見事に骨折したのだった。


赤もそろそろ終わりが近づいています。ああ、ちょっと長かったかなーっと…思わなくもないか。メインヒロインなんてありませんが、この小説では一番手なので前作みたいに優秀じゃなくてよかったなと思います。狼にならなかったら勉強も(どっちかと言うと悪い)運動も平均的な感じですかねぇ…。いじっぱりで素直じゃないときた。努力家という言葉を贈りたいです。いまいち伝わってないかもしれませんけど。さて、黄色がかなりやばいことになってます。二話を一話にまとめたり、最後で詰まっていたりします。最初から最後まで黄色は本当に難しい扱いでした。

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