第三話:気になる黄色は…
第三話
気になる後輩が…。
「あっ!あんなところに美女のパンチラが!」
「マジで!?」
勢いよく振り返って見せる。
今年で三十二なってしまったと頭を抱える数学教師(男子生徒大好きらしい)のパンチラが確かにあった。
「…………なんだよ、悪戯かよ…」
気になる後輩がいる。
気になる後輩と言っても、『血は繋がって無いけど、兄さんと言ってほしい』…そんな相手じゃあない。
一言で言うと、不思議な後輩なのだ。
その後輩とは転校初日の放課後に出会った。
「あのぅ、すみません」
「ん?」
その少女を初めて見たとき『急いで逃げるんだ!』と生存本能が騒ぎたてていた。
でも、目の前に居るのは物静かそうで落ちついた感じの女の子だ。
「野球部の部室ってどこにあるのか…知りませんか?」
小首をかしげて尋ねてくるその少女に俺は首を振ってしまう。
「悪い、俺も今年からこの学園に通い始めたんだ」
「あ、そうなんですか?じゃあ一年生と言う事ですね?」
「いや、二年だ…」
そういえば、この場所からなら部室錬を見渡す事が出来るはずだ。
「部室は知らないけど、野球部なら…あそこに集合しているぜ」
ひしめきあう野球部の塊を指差してやる。思っていたより野球部の人数は少なかった。
「わざわざありがとうございます」
しっかりと頭を下げたその女の子に好印象…いいねぇ。
「別に気にしないでくれ…じゃあ、俺はこれで」
「待ってください。これも何かの縁です…自己紹介をさせてください」
可愛い女の子と知り合えるのなら願ったりだ。でも、この子はただそれだけではないように感じられる。
「私は、黄金鈴といいます。気軽に鈴、と呼んでください」
「ああ…俺は白取冬治だ」
「白取冬治先輩ですね。かっこいい名前です」
名前を紹介しただけで女子にうっとりされるとか生まれて初めてだ…おしとやかなお嬢様っぽいし、感覚が俺たち一般人とは違うのかもしれない。
「あのぅ、変な事を聞くとは思いますが…」
言い淀んで鈴は聞いてくる。
「私の事、どう見えますか?」
「そうだなぁ、穏やかな感じのお嬢様だな」
お嬢様がしていそうな長髪をリボンで止めているし、両手を重ねて微笑みを絶やしていない。
「生き生きとか、フレッシュとか…そんな感じは受けませんか?」
「ああ、そういう意味だったのか。もちろんだ、俺に野球部の場所を聞いてきたからな。ちょっとおどおどしていて男子生徒ならきっと野球部までエスコートしてくれただろうよ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
また頭を下げられる。
「じゃあ、私行きますね」
「ああ」
「たまには野球部に来てください」
「わかったよ」
部活をしている人たちの邪魔になるだろうなぁ…とりあえず、口約束にとどめておこう。
黄金鈴と言う一年生が俺の前から姿を消した後、何とも言えない気持ちになった。
「……何だったんだろうなぁ」
途中、何かが落ちた気がしたのだ。
「ま、いいか」
転校してから三日後、俺は野球部が一人を残して全員やめてしまったと言う話を聞いたのだった。




