第二十八話:想いが気持ちに届くなら
第二十八話
黒葛原さんを待っていた俺は目を覚ました。
「ん?」
「……寝すぎ」
じっと見下ろすのは制服姿の黒葛原さんだ。隣のベッドに座っている。
暗がりながら、彼女が前髪を額の上で結び顔を見せている事がわかった。
「ご、ごめん。最近寝てるんだけど眠れてないって言うか…」
ぐっすり眠る事が出来たのか、久しぶりに目覚めのいい朝…ではなく、夜だ。夏で真っ暗、時間帯は…
「え、九時!?」
両親が帰ってくる時間今日は遅いからいいものの、下手したら警察に連絡…は、いかないかな。俺が女の子だったら心配されている事だろう…過保護ならね。
「……話って、何?」
ここは夢の中じゃない。現実世界だ、ぼーっとしていたら変に思われてしまう。
「あ、えっとさ…俺、黒葛原さんに嫌われている…と、思うんだ。何か嫌な事をしていたんなら俺が謝るから…許してくれないかな?」
「……」
しっかりと目を見て話した。
今の黒葛原さんは前髪を頭の上でまとめている為、目をしっかりと見据える事が出来る。たとえ、暗くてよくわからなく立って慣れればどうという事は無い…心なしか、相貌は怪しく光っているような気がするし。
「……別に、冬治は悪い事なんてしてないよ」
「え、でも避けられてたし」
呼び捨てにされた?いや、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「……悪いのは、こっちだから」
「話が見えないんだけど」
「……気にしなくていい、話をしても信じてくれない」
黒葛原さんが話したくないのなら、仕方あるまい。
仲良し…とは言わないまでも、前の関係までは戻れたのかな。
仲良くなれたのなら、もっと欲が出るのもうなずける。
「あ、じゃ、じゃあさ…俺がこのまま続けて話してもいいかな?」
「……うん」
右手を胸に当てる。
すごく、心臓が踊ってた。
「最近眠れなくて、本人を前にして言うのもなんだけど…ずっと、ずっと黒葛原さんの夢を見てるんだ」
「……うん、知ってる」
「え?」
「……話、続けて。聞きたい」
「えっと、それでね…最初はデートの約束をして、手をつないで…凄く嬉しかったなぁ……」
変な話だ。
本人を前にして、彼女でも何でもないただの妄想した…女子生徒を相手にデートを何回もしたとか仲良く歩いたとか、話を相談してもらったなんて会話をしている。
言い方はおかしくなるかもしれない。頭の中で自分がこの人はこういう人間だと決めつけて作り上げた相手と夜な夜な…いいや、最近では昼間でも夢を見て会っていたのだ。
「最後は…」
これは間違いなく引かれるだろう。だから、辞めておいた。
「保健室で、黒葛原さんに会ったよ」
「……」
それまで相槌を打ってくれていた黒葛原さんがしっかりと俺を見据えていた。
嘘を、つくなと目が言っている。
こうなりゃやけだ。
「引いてくれて構わない。保健室で、黒葛原さんに膝枕してもらって…その後、キスしたんだ」
自分の気持ちを吐露するのが怖い人間は、以前にそれで失敗をした事がある。自身の心が傷つくのを恐れて心をそのまま相手に伝えるなんて無理だと思う。
「……それ、現実だから」
何を言われたのかよくわからなかった。
「へ?」
「……」
額の上でまとめていた前髪をほどく。いつものように彼女の顔は隠れて見えなくなった…でも、唇を右手の親指でなぞっている。
とりあえず、こんな変な話をしてもしっかりとこの場に居てくれている。
今がチャンスだと思った。
「つづらはらさ…いいや、深弥美さん。俺と、付き合ってくださいっ」
「………冬治が、望むならいいよ」
幻聴かと疑って、呆然とし、頭がはたかれたような気がして、歓喜が走った。
黒葛原さんにしては意外にも即答…これまで俺は黒葛原さん改め、深弥美さんに対して押し倒したりしてきたというのに…。
「っしゃーっ!」
両手をグーで突き上げて、喜びの雄たけび。
「……喜びすぎ」
「いや、もう、嬉しくて…これからよろしく」
「……これからも、よろしく」
「あのー…さ、抱きしめていいかな?」
「……好きなようにしていいよ」
初めてできた彼女にそんな事を言われると、本当に好きなようにしてしまいそうだった。
「ありがとっ」
でも、今は抱きしめるだけで今は充分だ。
これまであった体のだるさなんてどこかにいってしまった。これも彼女パワーか?
前回の黒で終わりかと思ったらこっちが告白回だったことに今更気づく作者。黒は立ち位置が非常に難しい存在でして死神でありながら日常側にたっている存在であるため、彼女のプライベートはほとんど関係ないという、死神設定を生かし切れていないんじゃないかと思われそうな人です。その割には曲がり角でぶつかったりしてますけどね、うん。黒は実質ここで終わりみたいなものです。残りは蛇足と言うことで一つご理解いただきたいと思います。




