表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/52

第二十六話:気になるあの子を追いかけろ

第二十六話

 群青先輩がみた未来…そこで俺は色々と先輩にいい事をしてもらったそうな。

 俺の未来とはいえ、今の俺がそれをなぞっていないのであればいい思いをしたのは他人も同然である。タイムマシンが出来たらその未来に行って俺を思いっきりぶん殴ってやろうと思う。

「はぁ…」

 群青先輩の言う事を聞いて休日を無駄に過ごしている。

 やっぱり、家に居るのは時間の無駄だろう。何をしても群青先輩の事が頭について離れないのだ。ここは外に出たほうがよさそうである。

 街で何か適当に遊んでくるかと歩き出すと、群青先輩を見つけた。見つけられないように慌てて店の影に隠れる。

「…適当に歩いても群青先輩に行きつくのか?家を出て五分以内とか運命感じるわー」

 赤い糸で結ばれているのかもしれんな。

 群青先輩とは会わないと約束している。

 しかし、適当に歩いていては今度こそばったり会ってしまう…そう思えた。俺はそれを望んでいるものの、群青先輩は望んではいない。約束ぐらいはマモッテあげたい。

「ああ、そうか。俺がこうして群青先輩の後を追いかければ絶対に会わないな」

 我ながら冴えている。

 そういえば、群青先輩って謎だよなぁ。

 俺から群青先輩に会いに行く事はあまりないし、そもそも群青先輩って普段はどんなことしてるんだろ。

 前を歩く群青先輩を追いかけようとすると、肩を叩かれる。早速、尾行が警察にばれてしまったのかと思った。

「やぁ」

「七色かよ…おどかすな」

「別に驚かしてないけどね。群青藍先輩追いかけるんでしょ?僕もついて行くよ」

 男一人で尾行するよりも、女の子が一人増えれば警察にばれても変な事にならないかもしれないなぁ…。

「ほらほら、行こうよ」

「お、おうよ」

 腕を絡められ、引っ張られる。

 胸の感触があるもんだから、ついつい戸惑ってしまう。

「群青先輩って魔法使いって言われたりするけど、実際どうなんだ」

 七色のほうは俺と違って学園にずっといただろうからなぁ…群青先輩の事に詳しいかもしれない。

「そうだねぇ、たまに凄い事をするよ。水たまりの上を車通って飛びちった水がはじけ飛んだとか、落ちてきた花瓶がはじけたとかそんな感じ」

 群青先輩が立ち止まってジュースを買っているのを見て七色も近くの自販機から内容量の少ないジュースを買ってきた。

「他にはどんな事があるんだ?」

「ゴーレム出したとか、悪魔を召喚したとか…指を鳴らすだけで雨が降ったりね」

「本当かよ?嘘くせぇ」

 そう言われて信じられるわけもなかった。

「ま、僕も人に聞いただけだからね。実際に見たのはこれかな…」

 前の群青先輩に向かって空き缶を投げつける。

「お、おい…って、あれ?」

 空き缶が消えた。

 そして、群青先輩が振り返ろうとしていた。

「やべっ」

 慌てて七色を看板の横に押し込む。

「ら、乱暴だよぉ…でも男らしいかも。好きにして」

「変な声出すなっ。というか、今のはなんだ。空き缶が消えたぞ」

 群青先輩が再び歩き出したのを見てまた尾行を開始する。

「うーん、何だろうね。魔法?群青先輩に嫌われたり、ちょっかいを出したりすると酷い目にあうんだ…あいたっ」

 先ほど消えたと思われる空き缶が七色の頭に落ちてくる。

「…尾行とか、辞めたほうがいいよ。もし、あの先輩に会えば、冬治君は酷い目にあうね」

「でもよ、辞めろと言っても今日は一日先輩と会わないようにしてるんだよ。それに普段、群青先輩が何をしているのかちょっと興味もあったしなぁ…」

「直接聞いたほうがいいよ、そう言う事は。尾行なんてされたら誰だっていやでしょ」

「…謝りに行くか…あれ?」

 気付けばほんの少し先を歩いていた群青先輩の姿が消えていた。

 瞬きしたら消えたとかどういうマジックだ。

「ほら、群青先輩消えちゃったよ。大人しく逃げたほうが身のためだと思うね」

「…全力で逃げるってどうすりゃいいんだ」

 そもそも、消えたり空き缶を頭上から振らせたりする非常識な相手から逃げ切れるのか。

「さ、早く」

「おい、何勝手にマンホール開けてんだ…ま、まて、足をひっぱるなぁぁぁぁっ」

 ただの女子生徒相手にマンホールに逃げ込むってどういう考えしてるんだ!

 何とも言えないにほいがする場所へと降り立った。

「…くせぇ」

 流れる水路に得体のしれない肉塊が浮かんで消えた。

 ネズミも目の前を走って行った。

 ふと、視線の先に見知った後ろ姿が見えた…気がした。

「来た!」

「き、来たって誰が?」

「決まってるじゃん!多分、群青先輩だよ!」

「俺は別の誰かに見えたぞ!髪の長いクラスメートっぽかった!」

「じゃあ確かめてみればいいじゃんっ」

「無理。怖いだろ!」

 声をひそめて叫ぶ。

 腕を引かれてそのまま走った。

「ある程度走って、また上に逃げよう」

「…開けたら道路でしたってオチだけは簡便な」

 午前中いっぱいを使って俺と七色は下水を逃げまくった。

 昼過ぎにようやく外に出る事が出来たのだが…

「一体ここは、どこなんだ…」

 全く知らない街にやってきましたとさ。

 匂いはするし、戻るのに結構金を使っちまった。これなら大人しく家に居たほうが良かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ