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第二十四話:告白(深弥美)

第二十四話

 黒葛原さんが俺の前から逃げて約一週間が経った。

「…はぁ」

 あれっきり、黒葛原さんは俺の事を避けていた。

 やっぱり、どういった事情があるかはわからないもののみられたくなかったんだろうな。

 ただ、それから黒葛原さんが夢の中に出てきていた。

 気にしているからか、みたいと思って寝ればいつでも会う事が出来る。夢の中では仲良くなって、三回目のデートをしている。

 毎回、黒衣に鎌と言う死神っぽい見た目だけど、現実よりかはいくつか積極的だ。

 現実では、俺と目を合わせてくれる事も無くなったのだ。

「…つづらは…」

「……!」

 もう、凄い勢いでそっぽを向くんだよ。

 視界の隅にGが入ったのかと言うほど速いのだ。

 曲がり角で黒葛原さんに出会って『仲直りフラグ来たか?』等と考えていたらあっさりと避けられてしまった。別に故意にぶつかろうとしたわけじゃ…ないがね。

「…はぁ」

 傍から見たら、やばいよなぁ。気になった女の子と夢の中では仲良し、現実では一方的に嫌われているといった妄想系はさ。

 一言で言ってしまえば現実逃避。でも、毎日夢のほうが楽しいのは事実だ。

 認めてしまおう、俺は黒葛原さんの事が好きなのだ。認めたからって楽に慣れるわけじゃないだろうけどね。

「…冬治君、冬治君ってば」

「んあ?」

 心配そうな顔で七色が俺の肩をゆすっていた。

「いっけね、寝ちまってたか」

 辺りを見渡す。まだお昼休みだったらしい。

「あのさ、今見ている夢…気をつけたほうがいいよ」

「あれ?俺…七色に夢の話…したっけ」

「今聞いてたんだよ。僕、心配になっちゃったよ」

「わりぃ…えーっと、どこまで話してたかわからなくなっちまった」

「大体だよ。気になる女子が、夢に出てきて…どんどん仲良くなっているって話。誰かは言ってないよ」

 そうか、それなら良かった。

「どう思う?やっぱり、変だよなぁ…」

「……気をつけたほうがいいよ。キス、とか、いろいろやったら…多分、戻ってこれないよ」

「どこにだよ」

 色々って具体的にどんな事だろう…なんて女子に聞けるはずもない。

「こっちに、だよ。僕は忠告したからね」

 スカートをひるがえして、七色は行ってしまった。

「…ふぅ…こっちって、どっちだよ」

 一つ、ため息をつくと黒葛原さんが隣に座った。もしかしたら、話を聞いていたのかもしれない。誰かとまでは言っていなかったみたいだけど、彼女はどう思ってるだろうか。

「…あのさ、黒葛原さん。話があるんだけど。とても大切なお話です」

「……?」

 ぷいっとそっぽを向かれるかと思ったものの、今日はこっちを見てくれた。

「放課後、保健室に来てくれないかな」

「……わかった」

「ありがとう…」

 やっぱり、怒ってるんだろうなぁ…話はしていないものの、その後も廊下ですれ違おうとしてぶつかり、押し倒したり、押し倒されたりしてるし。

 放課後、保健室へとやってくる。この時間帯はセルフだ…既に先生はいないし、期末テストも近くなっている為ここを使用する生徒は少ないはずだ。

「ベッドか」

 気持ちのよさそうなベッドである。まだ、来るまで時間がありそうだ。さすがに寝るのはまずいだろう。

「ちょっとだけ」

 腰かけて待とうとしたのがいけなかったのか…そのまま横に成り、あろうことか、眠ってしまった。

 夢の中、俺は保健室の中で眠っていたようだ。

「んあ…」

 後頭部がもぞもぞしたので目を覚ます。誰かの顔が見えた…黒葛原さんが俺を見下ろしている。

「……起きた?」

 こっちの黒葛原さんとは少しながら会話が出来るようになっている。ちょっと長く喋ったり、ほほ笑むと顔を真っ赤にして混乱する姿は可愛かった。

 黒葛原さんを見るだけで、触れるだけで心が満たされドキドキが止まらない。

「悪い…俺、寝てたのか」

「……うん」

 制服姿の、黒葛原さんはほほ笑んでくれていた。

「膝枕だ」

 膝枕されているのに気付き、上を見る。

「……どう、かな?」

 はにかむ黒葛原さんに力無い笑顔で答える。

「このまま死んだっていいよ…あのさ」

 今の黒葛原さんなら何でも言う事を聞いてくれそうだ。そんな気がするし、今の俺なら黒葛原さんに想いを伝えるなんて造作もない。

「……何?」

「俺、黒葛原さんの事が好きなんだ。デートを何度も重ねて思ったよ。あっち…この前も話したけど、現実じゃ黒葛原さんに嫌われてるんだ」

「……」

 黒葛原さんは悲しそうに目を伏せた。

「今ここで…黒葛原さんと、キスがしたい」

「……冬治君は、それでいいの?」

 彼女はキスを拒んではいない。確認してくれているだけだった。

「うん」

「……後悔、しないの?」

 そういえば、七色が何か言っていたような気がする。うーん…何だっけ。



 どうでもいいか。



「うん、後悔はしないよ。俺は黒葛原さん以外、もうどうでもいいんだ」

「……ありがとう」

 目を閉じる彼女の唇は俺の唇に重ねられる。

 唇を重ねた俺は、そのまま深い眠りに誘われるのであった。


本来は一杯死神が出てきて深弥美と敵対するという話…だった気もします。きっと気のせい。他の死神に構っていられるほど死神さんも暇ではないので登場できないだろうなぁ…等と言う持論で音沙汰なし。積極的に狩りに行くのではなく、受け身の方向性の死神です。

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