第二十三話:根性会、根性よりも愛が強い
第二十三話
「それでは~根性会をこれよりはじめまーすっ」
司会進行のバスケ部のマネージャーが告げる。
「……わーぱちぱち」
返事をしたのは鈴だけだった。
話を聞いているのも鈴だけ、一部を除いて(俺はぼーっと、住良木先生は目をつぶっている)熱心に段取りを確認し合っている。
「では早速我がバスケットボール部、お願いします!」
屋外でやっている為、それなりに大きなセットも準備されていたりする…滝とか、何に使うんだ。それなりに大きなセットとは言わない、こんな大掛かりなセットいくらつぎ込んだんだ。
「一番、バスケ部主将…権藤、行きます!」
バスケ部なのにけんどう…なのか。
それはいいとして、どうやら滝を使うようだ。
「根性で落ちてくるものを避けるんですかねぇ」
鈴がそう言うので俺も考えてみた。
昔あった落ち物ゲーみたいだな。
「…普通に精神集中するんじゃねぇの…もしくは、サッカーボールで滝を割るとか」
バスケ部なのにサッカーボール何ですかという突っ込みを鈴に期待している。
「それ、根性ありますね!」
根性とは言わないだろうなぁ…俺がボケちゃダメみたいだ。
俺らがくだらない槍といをしているうちに十メートルほどの滝から水が流され始め、前へと躍り出るバスケ部主将。
「うおおおー、優香!おれは、根性でこの滝を登りきってやるぞーっがばごばっ」
そういって泳ぎ始める。
「…直角じゃ、無理だろ」
「あれは七十五度設定ですね。根性があれば、いけますよ。ましてや…想い人がみているならね」
冷静な感じで住良木先生が断定する。
「そんなもんですか」
俺にはできそうにない…絶対に。
「愛があれば、何でも出来ますよ!」
鈴もうっとりとしている。
そして、マイクをもって、司会者もじっとバスケ部主将の事を熱っぽい視線で見つめている。
どういう人体構造をしているのか、はたまた視えない何かが働いているのか…どう考えても無理だと思われる滝を登りきったのだ。
昇りきった時、周りから盛大な拍手が送られるも、頭頂部で恋人と抱きしめあっていたのでブーイングに即変わった。
「…根性、あるなぁ…」
「いいえ、これは、間違いなく愛の力ですよ!愛の力は根性より偉大なんです!」
変なスイッチが入ってしまった鈴は一生懸命、好きな女性のためなら男性は~と説いてくる。
愛はすごいという事は良くわかったけど、これは根性会…だよな。
あほらしくも、学園生らしい根性(丸太が飛んでくるのでそれを蹴飛ばしたり、熱した鉄板でぴったんこの根性や…こほん、これは止められた)のある行動?の数々。
「俺、三十路の数学教師、四季先生に『気があります』ってアピールしたよ」
「根性ありすぎ!」
「お前、住所特定されてるぞ」
「……そして、今日。これまで友人に預けていた携帯電話を返してもらった。早速確認してみまーす!ちゃ、着信履歴に登録した事の無い番号が…未読メールがカンストしてる…」
それは根性あるわけじゃないと思うんだ。
こんなくだらないものもあった。
そして、とうとう俺の出番。
「えー、では最後ですね。文化系野球部さんです」
「文化系野球部?」
名前、変わってるじゃないか。まぁ、それはいいや。
「内容はマネージャーが根性と言いながら、部員が教師にお尻を叩かれる…去年と同じ内容です」
「意味わからねぇ」
「それ根性あんまり関係なくね」
白けた感じが漂った。去年は三発で終わったろ?等と感想が飛び交ったりする。
「ど、どうしようか」
「白取君、わたしに作戦があります」
住良木先生はそう言って、竹刀を握った。
「本当ですか?」
「ええ、ですので、根性、見せてください」
「は、はぁ…根性会ですから頑張ってみます」
「それと、お嬢様はこの目隠しをして根性と言ってくださいね」
「わかったわ住良木」
目隠しをした鈴は俺の手を握っている。
それでは、お願いしまーすと言う視界の声に鈴が声をあげる。
「こ、根性~」
「一発目!」
「いっつぁあっ」
尻にミサイルが突っ込まれたのかと思ったら、竹刀が折れて飛んでいった。白けていた雰囲気が一気に無くなった。
「いたたた…手加減してください」
「教師と、生徒は心からぶつかるべきです」
新たな竹刀を住良木先生が準備していたりする。
目が、マジだ。
「剣道部の竹刀を全部、折るつもりで行きます」
不敵に笑う住良木先生…。
「あのー、お尻いくつあれば足りますか」
「大丈夫です、貴方の立派なお尻が一つあれば十分ですよ」
にっこりと笑う住良木先生に他の部の女子部員が『…ああ、私も叩かれてみたい』とか他の男子生徒は『うほっ』等と言っている。
結果から言わせてみれば『実に古典的な根性でした』と見事優勝できた。
「来年は竹刀じゃなくて金属バットですね」
実に生き生きした住良木先生と、対照的に俺は魂が抜けていた。
「では、優勝した文化系野球部さん、表彰台までお願いします!」
「だ、大丈夫ですか?」
鈴に付き添われながら表彰台までやってくる。
「いつつ…お尻が二つに割れたかも」
冗談言って安心させようとすると真っ青になった。嫌な予感がする。
天然ボケは鈴の担当だろう。
「た、大変です…見せてくださいっ」
「あ、う、嘘嘘、冗談だっ」
ズボンを掴んだ鈴を乱暴に離そうとして…出来なかった。そりゃそうだ、ちょっとでも俺が力を加えれば、大変な事になる。
根性を見せつけた俺…そして、表彰台で尻も見せつける羽目になったのだった。
もしも『気になるあの子は~』に続きがあるのならたぶん、タイトルは『気になるあの子と死亡フラグ』になると思われます。かなり前から漠然とした話は考えていて、何度か形にしてみた事もあります。五回書き直してどれもしっくりこないものでした。何せ、パラレル話を幾重にするものですから作者の頭の中が馬鹿になって途中から話がめちゃくちゃになってしまうのです。コメディーじゃないし、面白くなかったし…書いたらしょげてきました。くそぅ。




