第十四話:出撃!保健室部隊
第十四話
運動会当日、人数に恵まれている保健室部隊は…いや、俺は暇であった。
「白取君と群青先輩は本部担当をお願いしやす」
「わしらが現場をやりやすんで」
「お願いね」
角刈りがやたらと似合う面子がそう言って、出て行った。俺達は言われた通りに本部待機だ。
保険の先生から殆ど役割なんて無いよと言われてしまった…。
「…まさか、当日までスカートとは…」
「忙しいから仕方ないわ」
結局、俺は最後までスカート姿だ。
保健室担当の人は慣れてしまい、その他生徒は競技や準備で忙しい為、俺がスカートだと気付く人はあまりいない。気付いても突っ込む余裕なんてないようだ。
「思ったより、保健室部隊って楽なんですね」
「そうでもないわよ」
「これからですか?」
「ええ、特に障害物競争が終わった後の騎馬戦とか」
「へー」
俺らは競技に出ない為、どれほど危険なのかわからなかった。
「障害物競走では火薬関係の仕掛けがあるの」
「えーと、大丈夫なんですか、それ」
「大丈夫じゃないわね。一周目を担当した人たちは毎年運ばれてくるもの」
競技に出なくてよかったと思う。
「あ、だからさっき群青先輩に障害物競走に出るって言う人たちが詰めかけていたんですね」
あれは必死そのものだった。
でも、群青先輩の言う未来は…変えられないんじゃないだろうか。
「あの人たちは自分の後続…二周目の女の子に告白されるのか、もしくはもっと仲良くなれるのか聞きに来たの」
「と、言うと?」
「仕掛けの再配置は無いから、一週目で全部の仕掛けに引っ掛かると単なる障害物競走になるのよ」
「なるほど…確かに、二周目が好きな相手なら危険にさらしたくない。意地でも当たりに行きますね」
俺は障害物競走得意なので引っかからないかもしれないなぁ…。
「運動会が終わって告白するような人が基本的には参加する種目ね」
つまり、さっき聞きに来ていた人たちは今後自分がどうなるのか知りたかったのか。
「で、さっきの人たちはどうなるんですか」
「教えてあげないわ」
「ですよねー」
他人のプライベートなので、未来は教えない事にしているらしい。
「デバガメ根性じゃなくて、やっぱり、いい結果が出るといいなぁと思っただけですよ」
「…そう、それなら心配はいらないわ」
そりゃよかった。
のんびりしていると障害物競走が始まった。
「うわ、火柱があがってるよ…」
放送で火薬の量間違えたとか言ってたけど、やり過ぎだろう。
一周を終えたところで運び込まれてくる屈強な男達…。
「やっぱり男は必要でしたね…」
白衣の天使と化した屈強な男たちが素早く行動し、負傷者を担ぎこんでくる。手当も迅速で、治療後も綺麗に並べられていった。
「俺達は何もしなくていいんですか?」
「余剰が出るくらいが、ちょうどいいの」
このまま暇なのだろうか…一応、薬の補充とかガーゼの替えとかを買いに行ったりはしている。
最後まで俺が特別何かをするものでもなかった。
さすがに最後の片づけには率先して手伝ったものの、せっかく包帯の巻き方とか習ったのだから実際にやってみたかった。
「っかれっしたー」
解散すると、屈強な男たちが足並みをそろえて帰っていく。あれは実に格好良かった。どうやら、去年もやっていたらしい。
群青先輩に俺もあんな風に前線に出て包帯を実際に巻きたかったと伝えると少し笑っていた。
「彼らはね、白取君のスカート姿を人目につかせるのは可哀想だと思ったのよ」
「あ…」
スカートになんら違和感を持たなかった俺は、ちょっとやばいかもしれない。




