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第十三話:彼女を守る障害物競争

第十三話

 ドッキリって本当にあるんだなぁと思った。

 いつの間にか、障害物競走の一週目と三週目に俺の名前が刻まれていた。

「え、なして」

「この前倉庫でいじめた罰だよーっ」

 べーっと舌を出してくる狼っ娘に中指を立てる。

 この障害物競走…過酷らしく、病院送りやら何やら出たりするらしい。それでも生徒たちからは人気のある物だ、男だったら立派に女の子を守って見せるもんだとOBの先生が教えてくれた。

 はっきり言おう、俺の相棒はどんな用心棒よりも腕がたつぞ。

「今年で最後だからよかったじゃん。来年からはないよ」

「…」

 いや、それなら来年に転校してくりゃ良かったぜ。

 参加するようになったらしょうがない、

「練習しようにも、当日教えるってどういうことだ」

「驚かせようと思って。サプライズ、好きだよね?」

「全然!」

 計画的に生きたい俺としては、やっぱり事前情報が欲しいと思います、はい。

「大丈夫だよ、障害物だって単純なものばかり」

 指差す先にはやたら手の込んだ仕掛けが準備されていた。

「…えっと、最初は七メートルの網をくぐるのか…棒高跳びの棒が設置されてるな?当たったらどうなるんだ」

「背中が当たったりすると電流が流れます。期待してるよ!」

 中止にしろよと思う。

 体に異常はないとか言うけど、あんまり人体に電気流すと子供作ろうって思った時に苦労しちゃうんだぞ!

「次は、段ボールのキャタピラか…仕掛けは何もなさそうだな」

「コースを外れると、爆発します」

「え」

「大丈夫、単なる花火だから」

「何だ、驚かせやがって…」

 パンパンなるくらいなら大丈夫だろうな…とは思うまい。絶対にあほなくらいの火力を出してくるはずだ。

「最後が大玉転がしか」

「うん」

「これの仕掛けは?」

「転がし始めて二十秒以内にクリアしないと…」

「ど、どうなるんだ」

「うーん、毎年違うからなぁ…去年は足元が爆発したよ」

「…」

 爆発、好きだなぁ。見た目が派手だから好きなんだろうか。

「三週目走る人は最後に仕掛けがあるから、覚悟してね。あ、白取君よかったねー、一週目走るんだっけ?」

「あんたのせいで俺はアンカーも務めるんじゃい」

 くそ、今度変身したら尻尾を思いきりこねくり回してやる。

「期待してるよ、白取君!」

『準備が整いましたので障害物競走の選手は集まってください』

 誓いを新たに、俺は覚悟を決めた。実は、障害物競走得意だったりするんだ。

 隣は屈強な男たちだ。ただ、足は遅そう。

「位置について!よ~いドン!」

 ピストルから火が出るのではなく、花火が打ちあがった。

「男子―っ、女の子をちゃんと守ってよー」

「男を見せろ―っ」

そして想像以上の声援。それに驚き、ちょっと出遅れる。

「やばっ…」

 既に白組と青組が先行してしまっている。

「ぎゃあああああっ」

「どう見ても人体に影響出るレベルじゃねぇかよっ」

 先行していた青組が棒に当たったようだ。嫌な感じの叫び声が隣から聞こえてくる。

 悪態をついたところでどうなるわけでもない。冷静にならねば。

「がんばー」

「びりっちゃえー」

 みている側は楽しいんだろうな…隣を走っている白組の人に同情しながら縄を抜けきる。青も何とか復活して追いかけてきた。こりゃあ、禁止になるぜ。

『今年最後の障害物!今年は火薬の量を間違えた…どうしようと担当者がぼやいていました!』

「うそだろ、おい」

 待て、もしかしたら…もしかしたら、火薬が足りなくなって零なのかもしれないぞ。

 二つ目、段ボールのキャタピラに入ったところで放送が聞こえてきた。隣で、爆発した音が聞こえてくる。

 確認している暇はなかった。

 二回ほど爆発音が聞こえてきた。あいつら、全部に引っかかってるんじゃねぇか?

 こりゃ、余裕だと大玉も最後までやり終えてしまう。

「ちょろいちょろい、パス」

 気付けば一周してしまったのだ。俺、凄い!

「……白取君のあほーっ」

「え?」

 タスキを渡そうとして怒られる。俺は首をかしげるしかなかった。

「おいおい、一着で来たんだぜ?しかも、仕掛けに引っ掛かって無いし」

「だからだよ!あたしが引っかかるじゃん。一週目の人が全部、引っかかるの!男女混合にしないと駄目だから一週目は必ず男子になってるの!」

『おおっと、一着でやってきた紅組、揉めております!作戦ミスか?』

「それならそうといってくれれば…やばっ、追いついてきた」

 狼っ娘じゃない赤井さんを危険な目にあわせるわけにはいかない。

「くそーっ」

 こうなったら、俺が行くしかない。

 そのままタスキをひっかけて二周目を行う。もちろん、電気を流してもらったし、足元も爆発したし、花火も直撃したとも、ええしましたよ。大玉の中からおっさんが出ていたのには驚いたよ。

 それでも、何とか二周してタスキを渡す。

「…た、頼んだ……ぜ」

「う、うんっ!」

『みましたか!素晴らしい愛です!彼女のために、彼は連続で二周しました!一週目スル―したのにはこう言った事情があったんですね!』

 倒れ込んだ俺に保健室部隊が寄ってくるのを見て、俺は目を閉じたのであった。

 そのまま気付けば運動会は終わっていた。

「……はぁ…」

 紅組は見事、優勝したそうだ。

 頑張ったかいがあると言える。問題があるとすれば、みんなそのまま打ち上げに直行…赤井さんも、俺の事なんて忘れて行ってしまったらしい。

「……くそーっ」

 ただ、むなしく俺の叫び声だけが夕暮れ時に響き渡った。


前作は本編である春夏秋冬が44話で終わったと思います。今回はそれよりも多く行く予定ですのでよろしくお願いします。サブキャラの話も結構入れることができたらいいなぁ…。

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