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第一話:気になる赤をもふってみたい

第一話

 気になる娘が…。

「へーい!」

「?」

 後ろを振り返る。

 誰もいなかった。

「一体、何だよ…」

 こほん、気になる娘がいる。

 別に好きだから気になると言うわけではない。変な人がいるのだ。

 それを目撃したのは昨日の晩、この隣羽津学園に転校してきた次の日の晩のことである。

「…あれは…赤井陽さんか」

 ポニーテールに熱血っぽい性格だった気がする。

 隣の席で、適当に話していたらあっという間に仲良くなった。

 家も近所だったみたいで、数時間前に一緒に帰った筈だ。

 そして、俺は晩御飯のお使いに出発し…見慣れない地形に迷った。うろうろしていて気付けば、満月が空に映しだされていたのだ。

 曲がり角、誰もいない道の真ん中で少しの間苦しんでいた赤井さんのシルエットが…変化した。

「うううううう……うおーーんっ」

 赤井さんの影は人間じゃなくなっていたのだ。

 何だろう、多分、狼?

 狼人間…なんて、馬鹿らしかった。

 でも、満月を見て赤井さんが変化したのは間違いない。出会ったら襲われるかもしれない…そう思って、俺はその日素早く逃げたのだ。こういう展開、心得てますとも。昨晩、ちょうど狼人間の映画があって『やぁ、ジョニーじゃないか?はは、どうしたんだい、その顔』と言った登場人物が八つ裂きにされちゃった。

 だから、俺も『やぁ、赤井さんじゃないか?変身シーンはばっちりカメラに収めたよ』なんて言えば八つ裂きルート決定である。

 そして、次の日…こうして朝早くやってきたのだ。もちろん、赤井さんに連絡を入れてある。

 呼び出されてやってきた赤井さんは俺の姿を確認するともじもじしていた。

「ど、どうしたの?転校したてっていうのに…まだ、告白には早くない?え、もしかして一目ぼれ?一目ぼれしちゃった?順序間違ってるよ…男女のお付き合いって、出会って、色々やって…ムードある場所で…」

 うるさい人だ。

 顔を真っ赤にしてあたふたし始めた赤井さんは…別の変化をしていた。

「…あのさ、狼人間って信じる?」

「え…」

 その一言で、赤井さんは固まっていた。

「ど、どーだろーね」

 見るからに嘘が苦手そうな人である。

 脅したら何かくれるかもしれない。

 強請ってみようかな。

「ねぇ」

「な、何?」

「…尻尾を思いっきりもふらせてよ。そうしたら俺、誰にも言わないよ!」

 嫌そうな顔をされる。

「そ、そもそもあたし、狼人間じゃないし!」

「…鏡、みたほうがいいぜ」

 そういって手鏡を渡してやった。

「嘘!」

 項垂れている尻尾をちょいちょいいじってみる。思っていたより、固かった。ブラシを入れたら柔らかくなるだろうか…。

「うう、最悪…悪そうな人に正体がばれちゃった…」

 がっくりとうなだれる赤井さんの肩をたたく。

「なぁに、悪いようにはしないさ」

「…猫好きって言っていたじゃん。信じらんない」

 ファーストコンタクトって大切だと思う。

 ああ、何で俺は自己紹介の時に『犬が好きです!でも、狼のほうがもーっと好きです!』と言わなかったのだろう。


どうもはじめまして作者の雨月です。気になるシリーズ第二弾。前作は気になるあの娘は隣のコ…だったかな。今回では非日常な相手ばっかりです。非日常な世界じゃ、至って普通な連中を取り扱う予定です…もっと、ニッチな部分を突きたいんですがね。触手とか、壷形とか、○○とか。前回は春夏秋冬…今回は三原色と黒と白で行く予定です。好きなようにかけたらいいなぁ…そう思っています。

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