成人適性試験
性犯罪の凶悪化が深刻な20XX年。日本政府は、その年20歳になる男子全員に対し成人適性試験を行うことを決定。成人として認められるためには、人里はなれた隔離施設にて、2ヶ月間の禁欲共同生活を行うことが必要になった。
参加者には1人1部屋が割り当てられ、3食おやつ尽き、娯楽施設にはプール、温泉、カラオケ、体育館、フットサルコート、バスケットコートまでが完備され、テレビゲーム、DVD、パソコンなども充実。インターネットも使用可能である。
た・だ・し。
いわゆる18禁のコンテンツは一切閲覧禁止。自慰行為すらも禁止。それが発覚した時点でその参加者はアウトとなり、成人男性となることはできず、女性化という「適正化処置」が施される。
しかし、パソコンでのアダルトサイト視聴可能、エロ本やアダルトDVDも普通に取り揃えられており閲覧することができ、参加者を誘う。
参加者には監視体制、カメラの場所などは一切知らされない。参加者達には、アウトになった参加者の氏名、場所、理由が逐一携帯電話にメールで配信されるようになっている。
参加者は、この極限の禁欲生活を耐え抜き晴れてオトナの男となることが出来るのか!?
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<梨本の場合>
梨本憲次。大学生。
「今日から2ヶ月か。長いなあ。とりあえず知り合いを作らなきゃなあ。」
梨本は施設内の廊下を一人で歩いていた。今年、この試験のために特別に建設された建物だけあって内装もぴかぴかに新しい。
と、メガネをかけた1人の男とすれ違う。こいつも参加者の1人だろう。何気なくそう思って通り過ぎようとしたその時・・・
「な、なんだお前!その本!?」
梨本は思わず声をあげた。なんとその男の手には、
「何って、エロ写真集だけど。」
「『エロ写真集だけど』じゃねえよ!なんでそんなもん持ってんだ!?」
「ライブラリで借りてきたんだよ。」
「でもお前・・・。そればれたら女の子にされちまうんだぞ?」
「いいよ?だって俺、そのつもりで借りてきたんだもん。俺、TS好きだからさ。ずっとあこがれてたんだ。ちょうど今年からこんな制度が始まるなんて、なんて運がいいんだ。俺は。」
「??てぃーえす??」
「ああ。分からないならいいよ。じゃあ俺、部屋に戻ってこれ読むから、じゃあな。」
そう言って立ち去ろうとする男。しかし、
「おっと。」
手が滑ったのか、手にした本を落としてしまう。
床に落ちた本は、ばさりとページが開き全裸の金髪外人女が・・・
「しまったな。」
拾おうとする男。しかしそこに間髪いれず館内放送が入る。
デデーーーン!!
ガ○の使いの笑ってはいけないでおなじみのこの効果音。
ま・・さ・・か・・・・・
『山田、梨本。アウトーーー。』
藤○マネージャー似の男の声が響き渡る。
って、
「えええええええええーーーーーーー!!俺もアウトーーーー!?」
いや、確かに中身は見たけどさあ。でもこれは不可抗力だって!
「へえ。これでアウトか。意外と判定厳しいんだなあ。」
おい、メガネの山田!なに冷静に反応してやがる。
「おま、俺を巻き添えにしやがって!」
「いや、失敬。でも人間やめるわけじゃないんだし、男が女になるくらいなんてことないだろ?」
「おおありだボケェーーーー!!」
『適正化処置、開始。』
ポロッ。股間に喪失感。
思わず手でまさぐると、
「ち、ち○こがとれたぁ!?」
そ、それになんか視界がだんだん低く・・・
前髪が伸びて目にかかってきたぁ・・・
『帳消しチャンス!1分以内にとれたモノを保健室まで持ってくれば、女性化はキャンセルされます。』
え?え?保健室ってどこだよ?まだ1日目だから建物の配置とかぜんぜんわかんねえ。
しかしじっとしているわけにもいかない。
「お、胸が出てきた。おっぱいすげえ」
とかうれしそうに言ってる山田を尻目に走り出す。
どこだ!?どこだ!?どこだ!?
あちこち走り回ってようやく建物配置図を見つける。身長がかなり縮んできたようでズボンがずり落ちそうになる。見たくもないが胸では「なにか」2つのものが揺れているようだ。
はあ、はあ、はあ。
長く伸びた髪をなびかせて走る。しかし、建物配置図を探す時間が大幅なタイムロスになったようだ。
「ふえっ。」
自分のものとは思えないかわいらしい声をあげる。ぶかぶかになってしまったズボンの裾を誤って踏んづけてしまった。
ずるべたーん、と情けない効果音をだして転ぶ。
と同時に、
『タイムアップ。女性化は確定されました!試験終了です。お疲れ様でした。』
無常のゴング・・・
と、手を差し伸べてくれる人が。見上げると、スーツを着たやさしそうな女性。
「試験、お疲れ様。とってもかわいくなったわよ。さあ、じゃあこれから女性化教育施設に行きましょう。これから一生女として生きていくんだもん。お姉さんと一緒にしっかり女の基礎、身に着けようね♪」
「そ、そんなあああ。ふええーーーん。」
涙腺バルブ全開で涙を流す俺。
しかし、そんなことはお構いなく俺は連行されていった。
その数時間後、慣れない女物の服に身を包み真っ赤なリボンで束ねたツインテールで顔を真っ赤にして女性化教育施設の前に立つ俺、とうれしそうな山田。
『女の先輩』たちが出迎えてくれる。
「あら、新入りさんよ?」
「ほんとだ。あらこのツインテの子、可愛いわね。私の好み。」
頬を触られる。
「な、なにすんだよ!」
思わず振りほどく。
「あらあ。そんな乱暴な言葉遣いしちゃだめよう。」
「元気いいわね。まるで数ヶ月前の私みたい。教育のしがいがあるわ。」
「そうね。がんばりましょう。この子も数ヶ月もすれば。」
「さあさあ。はやく施設の中を案内してあげましょう。」
必死の抵抗むなしく、俺は女たちの群れに飲み込まれていった。




