trick or treat
今日は待ちに待ったハロウィンの日。
ボクはとっても甘いあまぁいものが大好きなんだけど、
それをくれる人は思ったほど多くない。
いくつもの家をまわってみたけれど全然足りない。
そんな時、森の奥の方から声が聞こえた。
「甘いお菓子が欲しいのかい?だったらこっちにおいでよ。」
その声はとても甘い声だと思った。
ボクの足は自然と森の奥へと進んでいく。
そこにはボクよりも少し大きいくらいの子がいた。
「お菓子は奥の小屋にあるから、一緒に行こうよ。」
その子に引かれるままに森の奥深くへと入っていく。
この森は甘い香りに包まれていてとても眠い。
「眠っていてもいいよ。ちゃんと手を引いてあげるからね。」
気づいたら目の前には古びた小屋があった。
どうやらこの子が言っていた小屋はこれのことらしい。
ボクは今更ながらお決まりの台詞を言う。
「とりっく おあ とりーと?」
するとその子は少しだけ吹き出して、
「ふふ、どんなイタズラをするのかも興味はあるけど甘いお菓子の方が嬉しいかな?」
とても歳相応とは思えないような笑顔だった。
「さあさ、寒いから中にお入り。ここはとても暖かいから。」
招かれて入った家はとても暖かく、おまけに美味しそうな食事も用意されていた。
でも、お菓子のようなものは見当たらない。
「ああ、お腹も空いただろう?甘いお菓子はその後にしようよ。」
ボクは我慢することにして先に用意されていたものを食べることにした。
テーブルについた瞬間、
カチリ
と鍵のかかった音が聞こえた。
思わずその子の顔を見ると、
「久しぶりのご飯を逃がすわけないだろう?」
その顔はとてもとても甘そうだった。
その後に待っているものを考えると身体が震えてくる。
ウレシサで。
思った通り、その子の頭はとっても甘いあまぁい味がした。
END