モテさせたい奴
「――ミステリーだと思うんだよ」
と、オレは言った。
「斎藤はもっと絶対にモテるべき奴なんだよ。性格も良いし、顔もそれなりに良いし、頭も良いし運動もできる。なのに、どうしてこのクラスの女の子達は誰も手を出さないんだ?」
そのオレの主張を聞いて、「う、うん……」と同じクラスの霧島は困ったように言葉を発した。なんだかあまり納得していなさそうな感じだ。オレは彼女が納得していないことに納得していなかった。
「お前だって助けてもらった事があったじゃないか!?」
彼女は傘を忘れた雨の日、困っているところを斎藤に助けられている。彼は近くのコンビニでビニール傘を買って持って来てくれたのだ。
「他にも助けてもらった女の子はたくさんいるし、それにあいつは子供にだって優しんだぞ?」
うちの高校の近くには保育園がある。どうもそこの子供が迷子になってしまったらしく、あいつはその子を保育園まで送ってあげていたのである。
「あんないい奴が、モテないなんて、このクラスの女の子達は、みんな、見る目がなさすぎる!」
「う……、うん。そうだねぇ」
霧島郁美は、新堂さんからそう言われてかなり困っていた。なにしろ、斎藤君がこのクラスであまりモテてないのは、新堂さんに原因があるのだから。
“……好き好きオーラ全開なの、本人は気が付いていないのかなぁ?”
ボーイッシュで、男の子っぽいところにコンプレックスを抱いている“彼女”は、それを気にしてか、斎藤君に告白できないでいる。クラスの女子生徒達は、みんなそれを分かっているのである。
だから、彼女に気を遣って、斎藤君には手を出そうとしない……
「……なら、新堂さんが彼を落としちゃえば、いいじゃないかなあ?」
そう霧島が言ってみると、彼女は顔を真っ赤にしてわたわたと慌てた。
「わた…… オレなんかじゃ、斎藤には釣り合わないから!」
それを見ながら、“充分に可愛いと思うのだけどなぁ、新堂さん”と、霧島さんは心の中で呟く。それを、彼女は大変にもどかしく思っていたりしたのだった。




