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第二章 旅の始まり#1


 東城会四代目会長、堂島の龍『桐生一馬』は、突如意識を失い、未だ眼を覚さないままだった。

 病床で眠っている筈の彼の意識は、見知らぬ世界で目を覚まし、見覚えのある仲間達と出会った。

 魔物や魔法が存在する謎の世界、突如現れた謎の龍、そして、それに狙われる遥に似た少女『ハルーカ』。

 この世界は桐生の見る夢なのか、それとも本当に存在する異世界なのか?





 盗賊騒動や突如現れた謎の龍、色々な出来事で慌ただしく日々は過ぎ、数日後、旅支度を整えた桐生とハルーカは、イージンの町の玄関口で仲間達に見送られていた。


「それじゃ桐生さん、ハルーカちゃん、王都まで気をつけてね」


「あぁ、行ってくる」


「ありがとう!サッチャお姉ちゃん!」


「はぁ…暫くハルーカの注いだ酒が飲めねぇとはなぁ…」


「心配するなアダッチさん、ハルーカはまた帰って来てくれるさ。その時までサッチャで我慢しようぜ」


「アンタ達…アタシに酌してもらえるだけありがたいと思いなさいよ!!」


 ナンバとアダッチに一喝した後、サッチャは咳払いを一つした。


「それじゃイーチ、二人をよろしくね」


「おうよ!王都まで無事に送り届けるぜ!」


「しかし、本当にいいのか?道さえ教えてもらえりゃ俺達だけでも…」


「何言ってんだ、この辺に慣れてない桐生さんとハルーカだけじゃ心許ねぇよ。それに、俺も王都に用があってな」


 イーチはそう言って自分の剣を取り出した。


「その剣がどうしたんだ?」


「よく見ればわかるが、長いこと使ってる上に、この前の大喧嘩もあって、あちこち刃こぼれしてんだ。この機会に、王都で武器を新調しようと思ってな。だから、桐生さんが気にする必要はねぇぜ」


「そうか…しかし、そう言う武器は店で直したり出来ないのか?」


「出来なくは無いんだが…実はこの剣、あんまり手に馴染まないと言うか……俺の力がちゃんと引き出せないと言うか…」


「なんだ?実力不足を武器のせいにしてるのか?」


「い、いや!!そう…言われると…なんと言うか…」


 返しに困るイーチに代わって、サッチャが説明をする。


「でも、イーチの言う事も間違って無いの。実際、王都のギルドに登録した時は、Sランクも目指せる逸材だって言われてたし」


「そうなのか?」


「でも、実際は万年Cランクで伸び悩んでて。原因があるとすれば、イーチが感じてる、武器が合わないところだと思うの」


「なるほど…じゃあ、その武器探し、俺も手伝わせてもらおう」


「えっ?や、俺の事はいいって!」


「俺の武器もジュリーの急拵えだったからな、もっと良いものが有るなら探してみたい。だから、俺の用でもあるから、お前が気にする必要はない」


 イーチは照れ臭そうに頭を掻く。


「そ、そっか!じゃあ、よろしく頼むぜ!」


「桐生さん、イーチ」


 見送りの中に居たソンヒーヌ、ハンジュン、チョーテンが前に出て来た。


「色々迷惑をかけてすまなかった」


「俺達反省したからさ、これからは金の稼ぎ方を変える事にするよ」


「そう言って、また人様に迷惑かける様な事すんじゃねぇだろうなぁ?」


「ご心配なく、そんな事をすれば、また桐生さんの雷が落ちてしまいますからね」


「まぁ、本当に雷が落ちた方がまだマシだけどね」


「すぐ世間に顔向け出来る様な仕事が出来るかはわからないが、我々なりに人様の為の仕事を模索する」


「イーチくんに言われっぱなしじゃ癪だからねぇ」


「そうか……」


「戻ってくる頃には、新しい我々の姿がお見せ出来るはずです」


「楽しみにしてるぜ」


「さっ!そろそろ行かないと、王都に着く前に夜になるわよ!」


「おっと!そうだな!」


「本当に世話になったな」


「何言ってるの、お世話になったのはコッチの方よ。盗賊騒ぎに龍騒ぎ、桐生さんが居なかったら、イージンの町はメチャクチャになってたわ」


「お前は、言わばイージンの英雄なんだよ」


「イーチ、先越されたな。桐生さんの方がよっぽど勇者っぽいぜ」


「う、うるせぇ!んな事言われなくても……」


「ほらほら!さっさと英雄様を王都まで送り届けてよ。未来の勇者様!」


「わ、わかったよ……じゃあ、行ってくるぜ!」


 町のみんなに見送られ、イージンの町を後にした。




「それじゃあ、行くとするか!」


「王都まで歩いて行くのか?」


「いや、少し離れた所に馬車の停留所があってな、その馬車で王都のすぐ近くまで送ってもらえるんだ」


「中までは入れねぇのか?」


「馬車は特別な許可証が無い限り、荷物や人を乗せて検問を通れないんだ。んでもってその許可証を手に入れるにはとんでも無く金がかかる。貴族や大商会の馬車でも無い限りそんなもん持ってないから、庶民の移動用の馬車は検問と検問の間しか移動しないんだ。たまに一般向けに商会が馬車を出してるが、それに乗るのにもかなりの額が要るから、こうやって移動するのが一番安上がりなんだ」


「なるほどな…」


 そんな話をしていると、後ろから人の呼ぶ声が聞こえた。


「桐生さん!!」


「んっ?ジュリーか…どうしたんだ?」


 工房のジュリーが息を切らしながら桐生達の元に走ってきた。


「見送りしたかったんだけど、作業しててすっかり忘れちゃってて……王都に行くんだよね?」


「あぁ、それがどうかしたか?」


「龍から貰った『龍玉』、私じゃ加工できなかったけど、王都に居る工房主だったらなんとかなるかも」


「本当か?」


「元々龍玉は特殊な素材で、かなり腕の良い工房主じゃ無いと加工出来ないの。私も龍玉の加工はやった事が有るんだけど…桐生さんのは特に変わっていて、私じゃどうにもならない。でも、王都に居る噂の工房主ならもしかして…」


「噂の?」


「その工房主は、なんでも決まった場所に工房を建てて無くて、移動しながら工房をやってるらしいの」


「移動しながらって…工房の設備って、そんな簡単に動かせるのか?」


「普通は無理だけど、どうやらその人は、自分の技術でそれを可能にしたみたいなの」


「で、そいつは何処に居るんだ?」


「言った通り、移動しながらだから決まった所には居ないらしいんだけど、兎に角人目につかない裏路地とかに店を構えてる事が多いらしいわよ?」


「そんなんで見つかる訳ねぇだろ!」


「いや、もしかすると…わかるかもしれない」


「えぇっ!?なんでっ!?」


「ただの勘だがな…」


 移動式の工房と聞いて、桐生はピンと来るものがあった。


「兎に角、その人に頼めば加工できるかもしれないわよ」


「イーチに合う武器も見つかるかもしれないな」


「そうか…そんなスゲェ人ならもしかしたら!」


「王都に着いたら探してみる」


「うん、桐生さん、イーチさん、色々ありがとうね。イージンに戻ったらまたうちに寄ってよ。もし噂の工房主の武器が手に入ったら、その技も見てみたいし」


「ていうか、その為に俺たちに話したんだろ!?」


「土産を持って帰ってくる」


 ジュリーと別れた桐生達はイージンを離れ、馬車に乗って王都の前の検問所に辿り着いた。

 辿り着くなり、鎧で身を包んだ門番は身分証の提示を求めた。


「身分証を確認する」


「ほいっ、ギルドカードだ。それからこの人は…」


「仮登録…ってやつなんだ」


「そうか、それなら銀貨5枚だな」


 桐生は懐の金貨を取り出し、門番に渡した。


「…………」


「どうした?釣りが出ないのか?」


「あぁ、生憎釣りは無い。後日改めて渡すから一旦預かっておく」


 そう言われた桐生は門番に金貨を渡したが、門番は深くため息をついた。


「なんだ?」


「お前さん、何処かの山奥からでも来たのか?」


「まぁ…そんな様なものだ」


「だったら忠告しておく、簡単に人を信用するな」


 そう言って門番は、懐から銀貨5枚を取り出した。


「なんだ、持ってたのか」


「こんな風に、通行料の釣りをネコババしたり、何も知らないのを良い事に料金を高く言ってくる奴も居るんだ。取り敢えず、持ち金は可能な限り崩して、金貨は簡単に出さないでおけ」


「そうか…親切に教えてくれて助かった」


「イーチ…お前同行者にはそれくらい教えておけよ」


「すまねぇ…忘れてた」


「ったく……」


 すると門番は、桐生の後ろに隠れているハルーカを見つけた。


「なんだ…説教してたら嬢ちゃんに嫌われちまったよ……それとも、この鎧が怖いのか?」


 そう言って門番は兜を外した。


「アンタは…」


 聞き覚えのある声だと思っていた桐生の予想は確信に変わった。

 その顔は桐生の親友『伊達真』そのものだった。


「ほら、中身はタダのオッサンだ。何も怖く無いぞ」


「アンタ…」


「自己紹介がまだだったな。俺は王都の衛兵『マコート・ダンテ』だ」


「ダンテさんは王都の衛兵の顔役でな。お堅い衛兵の中で、俺たちみたいな冒険者とも仲良くしてくれるんだ」


「イーチ、アダッチさんは最近どうしてる?」


「変わんねぇよ。昼間から酒場に入り浸って、金が無くなれば仕事してるよ」


「相変わらずだな…たまには王都にも顔出してくれって言っといてくれ」


「そういえば、この子の通行料はどうなるんだ?」


「12歳未満は同行者の身元確認が出来れば必要ない。見たところその子は10歳そこそこだろう」


「うん、10歳だよ」


「おう、ちゃんと自分の歳が言えて偉いな」


「そこまで子供じゃないもん…」


 さっきまで距離のあったハルーカとすぐに打ち解ける辺り、伊達同様の人格者である事が伺えた。


「王都にはギルドの本登録が目的か?」


「あぁ、そうだ」


「装備からしてモンクか…なら大丈夫か」


「どういう事だ」


「いや…少し前に入ったギルドの剣術教官がメチャクチャな奴でなぁ…」


「その話、最近聞いたぜ。カシワーギさんはどうしたんだ?」


「もう隠居して、今じゃ酒場の主人だ。とにかく、モンクなら大丈夫だろう。パッと見アンタは相当な使い手みたいだしな。よしっ、通って良いぞ」


「ありがとう、伊達さん」


「ダテじゃない、ダンテだ」


 検問を通り、しばらく歩くとそこには見覚えのある風景が広がっていた。


「やはりそうか…」


「着いたぜ!ここが王都『カムーロ』だ!」


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