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第一章 異なる世界#3


「『勇者』を探してる?」


 桐生はイーチの方を向いた。


「えっ?…い、いやいや!俺は勇者志望というか…」


「どうしてハルーカは勇者を探してるんだ?」


「最近、ウチの孤児院に『魔王軍』がやってくる様になって…」


「魔王軍?」


「なんか、魔王復活の儀式に必要な祭壇を建てるのにウチの孤児院が邪魔になるからって、無理矢理私達を追い出して孤児院を潰そうとしているの」


「つまり…地上げって事か?」


 ハルーカは静かに頷いたり


「それで、なんで勇者を探す事になったんだ?」


「神父様が『こんな時に勇者様が現れてくれれば』って言ってたの」


「勇者ってのは、実在するのか?」


「あぁ…歴史の中で勇者って呼ばれる冒険者は確かにいたが、100年に一度あるかないか、魔族や魔物が力をつけ始めた頃に現れるって話だ」


「つまり、今は居ないという事か」


「でもっ!魔王軍が悪さをし始めた今なら、きっと勇者も…」


「そ、そうは言ってもなぁ…」


 桐生はハルーカの前で腰を下ろし、優しく問いかける。


「ハルーカは、そんなに孤児院を守りたいのか?」


「…神父様もシスターさんも他の子達も、私にとっては大事な家族なの…」


「そうか…」

  

 ハルーカの言葉を受けた桐生は、意を決した様に立ち上がる。


「なら、今出来る事をやるしかねぇな」


「今出来る事ってのは?」


「……俺が話しつけてやる」


「はぁっ!?いや、相手は魔族だぞ?まともに取り合われるかもわかんねぇんだぞ!?」


「なら、勇者が現れるのを待つか?何処に居るかもわからねぇような…」


「そ、それは…」


「大丈夫だ、勇者ならココにも居るからな」


 桐生はイーチの肩を強く叩いた。


「いや…だから…」


「勇者ってのは生き様だろ?お前に覚悟が有るかねぇかの話だ」


「そうかもしれねぇけど…」


「放っておいても構わねぇが、お前だって黙っちゃいられねぇだろ?」


 イーチは頭を掻きむしったあと、意を決して口を開いた。


「わーった、わーったよ!!……しゃあねぇ、こっから自称『勇者』イーチ・バーンの冒険活劇が始まるぜ!!」


「本当に大丈夫?」


「心配するな、俺達が何とかする」


「取り敢えず今日のところは、アンタら俺の町まで来てくれ。今から王都じゃ、途中で日が暮れちまう」


「ハルーカもそれで良いか?」


「うん」


 桐生達は森を抜け、やっと人通りの有りそうな道に入った。


「もう少しで町に着くぜ」


「ハルーカ、疲れてないか?」


「うん、大丈夫」


「桐生さん、見た目の割に子煩悩な所あるんだなぁ」


「失礼なやつだな…」


「い、いや、なんつーか、桐生さんって一匹狼って感じっつーか…」


「そんなことは無い。こう見えて俺は…子供を育てた事もあるんだ」


「へぇ…意外だな。桐生さん結婚してたんだな」


「いや…結婚はしてない」


「えっ?じゃあなんで?」


「イーチさん、事情があるかもしれないから、あんまり深く聞いたら失礼だよ」


「あ、あぁ…そうだよな、すまねぇ」


「ふっ…ハルーカの方が大人だな」


 そんな話をしていると、突然謎の男達に囲まれた。


「なんだお前ら…道を聞きてぇ訳じゃ無さそうだな」


「あぁ、なんなら道案内でもしてやろうと思ってな。だから…」


 男達は武器を構え始めた。


「案内料、払ってもらおうか?」


「おうおう、最近の盗賊は随分親切じゃねぇか」


「盗賊?」


「この辺りを縄張りにしてる奴らだ。普段はもっと人通りの少ない場所に居るはずなんだが…こんな町の近くに出るって事は、随分食い詰めてんだな」


「黙りやがれ!!舐めた口聞いてるとぶっ殺すぞ!!」


「ハルーカ、下がってろ」


 ハルーカは近くの岩陰に隠れた。


「お前らの為に言っとくが、やめといた方が身のためだぜ?」


「ほざけ!たった二人でこの大人数相手に出来るかよ!」


「いやぁ、俺一人ならそうかも知れねぇけど…この人本当にヤベェんだって」


「もういい、何を言っても引く気はねぇだろうよ」


「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ!おい!やっちまえ!」


 男の声で一斉に襲いかかる盗賊集団。


「おりゃ!!おっしゃあぁ!!」


「だらぁ!!おぅらっ!!!」


「な、何だこいつら!?」


「化け物だっ!!!」




 二人の大立ち回りで、盗賊達はあっという間に地に伏した。


「片付いたか?」


「アレ?最初に威勢良く啖呵切って来たやつは?」


「ココに居るぜ!!」


 二人が目をやると、そこには盗賊の男と、ナイフを突きつけられたハルーカの姿が有った。


「ハルーカ!」


「てめぇ…卑怯な真似しやがって!」


「盗賊に卑怯もクソもねぇよ!さぁ!大人しくしてもらうぜ?」


「お、おじさん…ゴメン…」


 動けなくなった二人を嘲笑う盗賊。


「おい、そこの爆発頭」


「誰が爆発だっ!」


「その男を斬れ」


「な、なんだと!?」


「さもねぇと、小娘が先に死ぬぜ?」


「くぅっ!!」

 

 盗賊を睨みつけるイーチに、桐生が語りかける。


「イーチ、俺を斬れ」


「何言ってんだ桐生さん!?」


 すると桐生は盗賊に聞こえない小声で話しかける。


「俺を斬った後、おそらくアイツは隙を見せるはずだ。そこでお前はハルーカを助け出して、アイツを倒せ」


「そんな無茶な!それに桐生さんは…」


「今は他に方法がねぇ…頼むぞ勇者」


「く、くそぉっ!!」


 二人が密談をしていると、盗賊は痺れを切らした。


「何をコソコソやってんだ!早くしねぇと小娘が死ぬぞ!!」


「イーチ!!」


「だめだっ!俺には出来ねぇよ!!」


「さっさとやれぇ!!!」


「何騒いでんのよ」


 その時、桐生も聞き覚えの有る女性の声が聞こえた。


「てやぁあっ!!!!」


「おぐぅっ!!?!」


 盗賊の大事な所に女性の靴の先端が突き刺さり、盗賊は泡を吹いて倒れた。


「女の子相手にこんなマネするなんて、男として最低ね」


「お前は…」


「サッチャ!!」


 イーチにサッチャと呼ばれた女性は、異人町のキャバ嬢であり、一番と桐生の仲間だった『向田紗栄子』瓜二つだった。

 桐生とイーチは盗賊の手から離れたハルーカに駆け寄る。


「無事か?」


「うん」


「助かったぜ、サッチャ!」


「隣町に買い出しに行って帰って来たら…イーチ、一体何が有ったのよ?」


 イーチはコレまでの事をサッチャに説明した。するとサッチャは突然声を荒げた。


「アンタ、ゴブリン退治を初めて会ったばかりの素人と一緒にやったって言うの!?冒険者としてありえないわよ!!」


「す、すまねぇ…成り行きで」


「何が成り行きよ!大体、ゴブリンの巣を見つけてロクな報告も無しに一人で行こうとした訳!?」


「時間が無かったからよ…」


「ゴブリンの巣を駆逐するなら、最低でもBランク以上のパーティを編成しないとならないのに…それで死んじゃったらどうすんのよ!!」


「えっ!?も、もしかして…サッチャ俺の事、心配してくれてんのか?」


「当たり前でしょ!アンタが死んだらウチのツケは誰が払うのよ!!」


「そう言う事かよっ!?」


「なんだか二人、仲良さそうだね」


「ふっ…そうだな」


 サッチャは桐生達の方に向き直り、咳払いをした。


「二人とも大変な目にあったのね。私は町で酒場をやってる『サッチャ・ムコーダ』よ」


「桐生一馬だ」


「ハルーカです」


「よろしくね。じゃあ、こんな所じゃなんだし、取り敢えず町にいきましょうか」


 イーチとサッチャの案内でやって来たのは、桐生にはどこか見覚えのある街並みだった。


「ココが俺達の町、『イージン』だ」


 建物の外装や雰囲気は中世ヨーロッパ風だが、町の作りがどこか横浜の異人町を思い出させる。


「物珍しいところはねぇが、海が近いから魚が美味い。早速サッチャの店で食おうぜ!」


「アンタ、ツケの事は……まぁ、お客さんも居るからいっか。今日だけは特別奢りよ」


「よっしゃ!!」


 一同は酒場らしき建物の前で足を止めた。


「さぁ!ココが私の店『ムコーダの酒場』よ!」


 店に入り、サッチャのもてなしで料理が並び、暫く食事をしたのち、今後の話を始めた。


「それにしても、これから魔王軍と話をつけるなんて…とんでもない事考えるわねぇ。でも、王都の近くまで行くなら身分を証明できる物が無いと、途中の検問でお金払わないといけないわよ?」


「げっ!!そうだった……」


「桐生さんお金は?」


「いや…一文無しだな」


「ハルーカちゃんも…持ってる訳ないよね」


 静かに頷くハルーカ。


「イーチは…」


「聞かねぇでくれ…」


「……まぁ、王都の入国料って結構するのよね。何とかウチから出せない事も無いけど…」


「いや、そこまでやってもらう訳にはいかねぇ。金なら何とか用意する」


「とは言っても……そうだ!取り敢えず『冒険者ギルド』に仮登録しましょう!」


「冒険者ギルド?」


「俺みたいな冒険者に仕事を斡旋してくれる所だ」


「なるほど…ハローワークみたいなもんか」


「よくわかんねぇけど…なんか違う気がする」


「正式に登録するには王都のギルドに行かないとだけど、仮登録ならウチの酒場でやってるわよ」


「正式な登録と仮登録じゃ、何が違うんだ?」


「仮登録だと冒険者ランクがつかないのよ」


「冒険者ランク?」


「簡単に言えば、冒険者の実力を示す指標ね。GからSまであって、クエストをこなしていけばランクが上がって、ランクが上がると更に高難易度で報酬の高いクエストを受けられるの」


「イーチのランクはいくつなんだ?」


「俺は一応Cランクだな。自分で言うのもなんだが、

それなりに実力はある方だぜ?」


「でも、王都以外じゃそのランクをつけられないから、登録した町の近辺の簡単なクエストしか受けられないの。それに、ちゃんと登録した冒険者なら、どこの国の入国も無料なんだけど、仮登録だと半額にしかならないの」


「王都ってやつに行くには、いくらかかるんだ?」


「金貨一枚」


「そんなかかんのかっ!?」


「すまねぇが、金貨ってのはそんなに価値が有るのか?」


「そっか、桐生さん貨幣の価値もしらねぇのか…」


「この近辺では鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨のお金が使われているの。鉄貨一枚で大体パンが一つ買えるくらいかしら?」


(日本で言う100円くらいか?)


「その鉄貨10枚で銅貨、銅貨10枚で銀貨、銀貨10枚で金貨、そして金貨2枚分の価値が有るのが白金貨って感じ」


(神室町でよく見かけた『皿』と同じようなもんか。つまり、金貨一枚の半分、銀貨5枚は大体5万円…中々の額だな)


「よくわかった。じゃあ俺は冒険者に仮登録して、クエストとやらをやって銀貨5枚を集めれば良い訳だな」


「簡単に言うが、この辺のクエストで銀貨5枚は中々骨が折れるぜ?薬草集めで銅貨3枚、モンスター退治も仮登録じゃ大した奴を相手できねぇしな」


「でも、それじゃあ孤児院は…」


「なんとか、手早く金を稼ぐ方法は無いのか…」


「……それなら、ちょっと特例なんだけど」


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