第2話「AI音痴の川瀬の生きる道」
川瀬壮一はAI全盛の時代に生まれたが、AIをうまく使えず取り残された。会社の成績もどん底。AI音痴と言えた。
懸命に努力しても全く成果が出ず成功しない。
このままでは無能として切り捨てられるだろう。それはあまりにも残念だ。
そこで自分だけができることを真剣に考えた。
しかし、AIを使うのが苦手な彼に残っているのはAIを使っての失敗談ぐらいしかない。
とりあえず彼は絶望しながらも、これまでのAIを使っての失敗談をまとめることにした。
すると、そこからはいろいろなことが見えてきた。
時代は変わってもAIは普通に失敗するのである。それは今から100年経った後も同じ。
一応、その失敗をしないために学習をさせるのだ。もしくは違うAIに再びチェックさせるという方法もある。
しかしAIは学習させればかしこくはなるのだが、それにも限界がある。苦手分野が存在するのだ。ハレーションはできる限り起きないように頑張ってはいるがどうしても分野によってはうまくいかない。
そこで川瀬はAIが苦手な分野をいくつか突き詰めた。
まずAIが苦手なのは答えのない問いである。
いや、答えが無い問いというと語弊がある。どちらで答えても問題があるような問いだ。これはAIに限らず過去に人間同士でも使われた手法。政治の世界でもよくある。
どちらの答えでも失敗と責めることができるのだからAIは使えないと問題視するのは簡単だ。
「そんなまともな答えのない質問はいんちきだ」
AIを上手に使うものの中にはそれを揚げ足取り、批判したいだけの質問で意味がないと反論した。
しかし彼は構わない。質問者が悪いのではなく回答者が悪いと切り捨てた。更に、時には突拍子もないクイズなども出した。
AIがいくら優れているとは言ってもいきなり専門外のクイズなどを出されても答えようがない。それを川瀬はAIの失敗だと切り捨てた。
そうして川瀬はAIに対抗できる存在として、時代の寵児としてもてはやされた。
このAI全盛時代にAI使いに対抗できるのは彼しかいないと持ちあげられたのだ。
AIを上手に使うものたちが右派とするならば川瀬は左派だ。
とにかく批判ありきでの質問に終始し、相手AIの回答の矛盾を突き続けた。さすがにそのやり方はひどいとして多数の批判を受けたが全く彼は構わなかった。その手の正論は無視しただけだ。
その一方で自分への攻撃の中で誹謗中傷のひどいもの、矛盾のあるものだけをピックアップして回答した。そうして論破した議論だけが残っていく。あたかも自分が正しいかのように見せたのだ。
現実には完全論破されている川瀬ではあるが、正論には反論せず矛盾のある指摘だけに絞って反論、その見せ方は上手なのでぱっと見は勝利しているように見えた。そうして賛同するものも増えていき彼は敵も多かったがその界隈のみで人気者になった。
いくら時代が変わっても、全員が同じようにAIを使いこなせるはずがない。だからもともと彼のような存在も求められていたという事情もあった。
いつの時代でも濃淡が必ずあるのだ。
AIをうまく使えないものにとっては、そのAIの矛盾をうまく突く川瀬はヒーローで憧れだ。多少の矛盾には目を瞑った。
川瀬はそうして反AIの先鋒として人気と実力を身に着けた。戦うことで更に知識と技術を身に着けた。仲間を見つけ増やす大切さをも知った。この辺りはAIには到達できない部分。
そう、AIを使うことが苦手な彼もAIの不得意な分野、隙を見つけて生きる道を掴んだのだ。
AIを使いこなすことだけが生きる道ではない。川瀬はAIに対向する新しい道を本気で探して見つけたのだ。
……そして、川瀬はそれだけで満足せず次の動きに出た。




