集落決戦10
伯智は上空から状況を確認する
燃え盛る民家と湖の狭間で戦いが続いている
鬼の悲惨な現状
無傷の武蔵
隕石が通過したかのように一直線にえぐれた地面
不自然にゆらめく炎
それらの情報から、武蔵の戦闘を推測していく
伯智の読み通り、武蔵の不意打ちは三苗に通った
しかし、鯀はそれにすら対応したらしい
刀を構え、武蔵から目を逸らさないその姿が鯀の恐ろしさを体現している
だた、どうやったかはわからないが武蔵もうまく切り抜けたようだ
無傷の武蔵を見る限り、さっきの轟音は武蔵由来と予想できる
方法は分からないが、武蔵は2匹の青鬼を完封している
今の武蔵を止められる鬼がどれほどいるのだろうか
少なくとも三苗には厳しいだろう
何より、溜飲が下った気分だ
同時に吹き飛ばされた2匹の青鬼の姿は上から見ると中々に痛快だ
続いて目に入ってくる青鬼の体表の変化
青鬼が緑鬼にランクダウンした
それを見た伯智は、さらに深く思考の海に沈んでいく
ランクアップではなくランクダウンした違和感の答えを求めて
伯智は弱い鬼が赤くなり、強い鬼が青くなる。と思っていた
ちょうど今、目の前で色が変わったように
しかし、今目の前で起きた変化は少し不自然だった
弱い方から強い方へ変わったのではなく、強い奴が堕ちた
それ自体はおかしくない
弱くなったから堕ちたと考えられる
しかし、今この一瞬でそんなに変化があるだろうか
生物はそんな一瞬で弱体化するものだろうか
ゆっくりと、認識できない程度の速度で色が変わるのならまだ理解できる
だが、今回の変化は認識できるほど明確だった
今の数秒で、急に衰えたとは考えづらい
かと言って完全な緑かといえば、そうでもない
半端な緑で、半端な青
どちらかといえば、緑寄り
では、何が原因か…………
四肢の欠損の影響は無視できるはずだ
伯智が三苗と戦っている時は、その程度の怪我を気にしている素振りすらなかった
もしその程度で弱くなるのならば、もっと警戒していたはずだ
つまり、あの時はまだ切り落とされても生えてくる自信があったのだろう
だが今は違う
三苗は足を生やすことができなくなった
そのせいで体表が緑に近づいた
いや……逆か…………?
体表が緑に近づいたせいで、足を生やせなくなったと考えたらどうだろうか……
原因と結果が逆転しているのではないだろうか
鬼の体表は無益な争いを避けるため、己の力の強さを誇示できるように生物が進化した姿
鬼という生物特有の強さの指標だと思っていた
だがもし、体表の色を変えることで強くなれるのだとしたら
いや、鬼自身に変える能力はないはずだ
だとしたら、青鬼でい続けない理由がない
であれば、時間制限付きの能力強化か
回数制限付きか
はたまた外的要因か
強い鬼の体表の色が変わるのではなく、色を変えた鬼が強くなる
時間制限はおかしい
もしそうなら、今まで戦った鬼の体表に変化がなさすぎる
回数制限付きだとしたら、なんの回数か……
回復量?
はたまた死亡回数?
ではもし外的要因なら…………
たとえば……そう、ドーピングのような…………
目に見えて派手な鎧のような…………
力を強くする外的要因があり、体表に現れる色はただの副作用
可能性はあるはずだ
伯智もドーピングを受けている
桃太郎殿はきび団子を持っていた
それを口にした武蔵、青雲、某は生物の檻を突き破り強くなった
これはまさしくドーピングだ
似たようなものを鬼も持っていたとしたら
それも簡単に大量に摂取できるもの
食べ物か、香料か、それとも……
もしも、鬼という種族に実は赤鬼しかいないのだとしたら
それ以外の鬼は全てドーピングによって体表が変化しているのだとしたら
赤鬼が弱いのではなく、赤鬼が普通
強い鬼が青くなるのではなく、青くなった鬼が強いのだとしたら
体表は、ドーピング剤の量に依存しているのだとしたら
そのドーピング剤は一体……
「まさか……神の美酒?」
その結論に辿り着いた時、目の前に首のない青鬼が瞬間移動してきて伯智は現実に引き戻された




