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桃太郎-recast-  作者: 星乃光
龍淵に潜む
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集落決戦6

 桃太郎が矢島から見た黒い花火

 鬼に地団駄を踏ませたあの不気味な花火


 それは青鬼が武蔵と伯智との戦闘中にあげた黒い花火

 (こん)三苗(さんびょう)に打ち上げるよう命令した花火である



 そして(こん)が黒菊と呼んでいたその花火には、秘密がある



 正式名称、特急指令召集弾

 簡略名『黒菊』

 武蔵たちと戦う、4匹の青鬼だけが所有する特別な花火




 鬼の王である黒鬼が出した命令と同等の効力を持つ花火

 それはたった一つの最上級命令を発する


 『黒菊』が打ち上がった時、それを見た全ての鬼は花火の元に集まらなければならない


 絶対服従の召集命令

 無視はできない

 たとえこれからお楽しみが待っていようと、友の死に際だろうと、それを見捨ててでも召集に応じなければならない


 もし、無視ができるとすれば、それは黒鬼から別の命令を受けている鬼 だけ


 故に、集落での戦闘に15匹もの鬼が現れた

 鬼ヶ島にいる大半の鬼が

 普段であれば、港で(たむろ)している大量の鬼が



 それは、形勢を容易に逆転させる数の暴力


 優勢であったはずのエドワード達は、一気に劣勢に立たせる

 もはや、まともに立て直すことなど不可能に近い

 鬼の討伐が主目的であれば、完敗であっただろう



 しかし、武蔵、伯智、エドワードの目的は別にある

 試合に負けたが、勝負には勝った


 目的は達した

 エドワード達の働きは囮としては優秀すぎると言っていい










 緑鬼の横槍によって、大きく吹き飛ばされた武蔵と伯智は揺れる視界の中それでもすぐに体制を立て直す


 その視線の先には、ゾロゾロと虫のように湧く鬼が映る

 さらには、(こん)三苗(さんびょう)が助け出されているのが目に入る


 その光景は武蔵と伯智に大きな後悔の念を突きつけた




 圧倒的に実力が上の(こん)をあそこまで追い詰めたのは奇跡だった

 もう二度とあんなチャンスは手に入らないだろう


 少なくとも、その青鬼はもう二度と武蔵のことを舐めてはくれない



 三苗(さんびょう)に関しては、王手だった

 特に何もすることなく、勝利を手に入れられていた状況だった


 三苗(さんびょう)は完全に詰んでいたはずなのだ

 増援さえ来なければ…………




 その2匹を、後一歩

 いや後半歩ほどのところで取り逃がしてしまった


 その悔悟感から、2匹の気持ちが前傾姿勢になる

 少しでもミスを取り返そうと


 武蔵と伯智の気が早る





 その時だった

 一本の矢がひゅるひゅると音を立てながら空を飛んだ


 武蔵と伯智には、すぐにわかる

 エドワードの矢だ


 その矢は誰かを狙ったわけでもなく、戦場をゆっくりと横断した

 鳥のような音色を響かせながら


 それに対して敵味方が一斉に動いた


 新たに参戦した鬼どもは、その矢の主を探すために駆け出した

 動いた鬼は全部で3匹

 我先に、他の2匹をなんとしてでも出し抜こうと全力で走った


 そこには罠があるとも知らずに…………




 一方、武蔵と伯智はすぐさま撤退した

 鳥のような音色は、エドワードからの撤退の合図


 それは尻尾を巻いて逃げるという意味ではない

 一度体制を立て直す必要があるという合図


 (こん)三苗(さんびょう)が傷を回復する一瞬

 他の鬼が音に気を取られたその一瞬に、武蔵と伯智は集落の影を縫うように移動する


 青鬼よりも速く動くその2匹の撤退に、鬼はなす術なく敵を見失った



 直後、遠くで爆発音がした

 3匹の鬼が駆け出した方向だ


 しっかりと3匹の鬼が罠にかかったようである


 これで鬼の数は12匹









 正直な話をするのであれば、武蔵、伯智、エドワードは既に十分な働きをしている


 というのも、この3人の役目はあくまで囮

 鬼を殺す必要はなく、極端な話惹きつけるだけでいい

 惹きつけられるのであれば、戦う必要すらない



 そして、それは黒菊を打ち上げさせた時点で達成している

 十二分の成果といえる


 少なくともエドワードはそう考えている

 武蔵と伯智もその意見には同意している


 頭では理解している……

 しかし、それはそれである


 この2匹はエドワードとは違う

 桃太郎のお供なのである


 まあ、何が言いたいかというと『このまま引き下がるわけには(感情が許さない)いかない』である


 2匹からすれば、エドワードにおんぶに抱っこで成果を残してはいない

 最初の2匹の青鬼は、言わずもがな

 最後の2匹も仕留め損ねてしまった



 桃太郎の代理としてエドワードと手を組んでいる自負がある2匹にとってそれは屈辱なのである

 こんな汚名を着たまま、おいそれと引けない

 引くわけには行かないのだ



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