表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎-recast-  作者: 星乃光
龍淵に潜む
64/73

救出戦3

 力なく無様に、掠れ声で喚く少女に敢えて爪を立てながら、1匹の鬼は興奮していた

 その妄動的な姿を隠す気もない


 鬼ヶ島で初めて人間の犯罪者を捕まえた

 しかも、それが初物だった


 この女を鬼ヶ島に連れてきた鬼は腑抜けだったのか、それともこれに目をくれないほどの美女がいたのか

 どちらでも構わないが、四肢欠損のない完璧な逃走者はそこそこ希少だ

 初物であれば、尚のこと



 結局3人で捕まえてしまったが、他二人が赤鬼だったのも運が良かった

 おかげで、最初に弄ぶ権利を得られた

 あの時の絶望した少女の顔はまだ鮮明に思い起こせる



 その後、結局3人で弄び、殴り、愛撫し、挽いたせいで草臥れてしまった

 ……が、それでも尚、その目は輝きを失っていない


 生きたい、逃げたい、そういう意志を感じられる

 なんと嗜虐心を駆り立てる表情だろうか



 それがこれから、じっくりと足を削ぎ落としたらどうなってしまうのか

 輝きを失うのか、まだ火を灯し続けられるのか


 高揚感を抑えられていない




 鬼の内側で相反する感情が渦巻く


 絶望させたい気持ちと、できるだけ耐えてほしいという気持ち

 それが鬼の興奮を加速させる


 まだ日が沈むまでは、かなりの時間がある

 じっくりと楽しめる


 楚痛と快美を同時に受けるとどんな壊れ方をするのだろうか

 手始めに、爪を剥ぐところから始めてみよう……










 桃太郎は、その異様な光景に嫌悪感を禁じ得なかった


 全ての女性が、鬼達を見つめている

 決して目を背けようとしない


「おヌシ、見えるか?

 これが、鬼達のやり方じゃよ」


 静かに小声で、金眼の女性が話しかけてくる


「……少し、不気味です」


「そうじゃろうな。これから、あの捕まっている少女の拷問が始まる


 罰は決まっているが、執行方法は捕まえた鬼に一任されている

 ……が大抵、時間をかけて楽しんでおるな

 彼女の場合、最終的には片足を失う


 そして、ワシらはその光景を見なければならない

 逃げ出せばどのような目に遭うのか

 反抗すればどのような仕打ちに遭うのか


 それを、しっかりじっくり覚えさせられる

 恐怖を植え付ける


 だから、矢島(ここ)から逃げようとするものは大抵捕まったばかりの少女だけ

 長くいればいるほど、恐怖が勝って逃げられなくなる」


「助けます」

 桃太郎は即断した

 口を塞いでいる女性の腕を優しく振り解く

 体の向きを反転させる



 桃太郎が動こうとしたその瞬間だった

 遠くで黒い花火が上がった


 3匹の鬼がその音を、その光を確認した

 桃太郎もその不気味さに、鳥肌が立つのを感じる


 直後、鬼が地団駄を踏んだ

 あの黒い花火には、何かしら鬼を苛立たせるだけの何かがあったのだろうか

 そんなことは、桃太郎にとってはどうでもよかった


 けれど、鬼たちはすぐに苛立ちを抑えた

 もう、地団駄は踏んでいない

 ただ、すでに桃太郎の刀が首を切り落としたことにも気づいていない……



「見事じゃ!

 いやはや、美しい剣筋じゃったの」


 唖然とする少女を放置して、二人は会話の続きを始める


「光栄です……

 ところで、ここにいる女性は反抗したら鬼の拷問を受けると言いましたよね」


「そうじゃな

 最初の1回目で足を、2回目で反対の足

 3回目で片腕、4回目で反対の腕を切り落とされるぞ


 ほれ、そこらへんの転がっておるじゃろ

 誰のかわからぬ、腕や足が……」


 そう言って、金眼の女性は近くにあった腕を桃太郎に投げ渡す

 桃太郎は咄嗟に受け止め、それをそっと地面に置く


「でも、両足を失ったらもう逃げられないのでは?」


「何を当たり前のことを言っておる」


「では、腕を失っている方々は何をしたのですか……」


「……ああ、そういうことか……何もしておらぬよ

 強いて言えば、黒鬼が不機嫌だったとか、奉仕が気に食わないとか、そんなところじゃ


 大半の者はのぉ

 数年に一回、血の気の多いものも現れるがの

 最近だと、十数年前に黒鬼を3回殺そうとした血気盛んな女がおったぞ


 あれはあれで、黒鬼のお気に入りになっておったの

 逃げるのではなく命を狙う阿呆はなかなかに珍しいからな


 4回目をやったという噂と、ここから逃げおおせたという噂があったのぉ

 ワシらには真偽のわからんことじゃがな」


 桃太郎には、後半の会話が入ってこなかった

 前半の言葉が桃太郎をいきり立たせていた


「ところで、おヌシよ。そんなことして油を売っとって良いのか?

 ワシらと愛の逃避行をしてくれるんじゃろ?」


 その言葉で、桃太郎は現実に戻される


「はい……行きましょう」


 そういって、桃太郎は傷だらけの少女に手を差し伸べる

 差し出された手を見て我に帰った少女が少し恥ずかしそうにその手を取った


 しかし、まだうまく立てなさそうである


 桃太郎は、その少女を背負い逃げることを決める


 桃太郎が立ち上がると、金眼の女性が作ったような唖然とした顔で話し出す

 見る人が見れば、なんと人をイラつかせる顔だろうか


「おヌシよ

 ワシらというのはワシら二人じゃないぞ

 ここにいる全員という意味じゃよ」


 その言葉に、矢島にいる人がこちらを向く

 気が狂っているのでは……?、と


 しかし、彼女はそんなこと気にも止めない


「なんじゃぁ。どいつもこいつもアホズラばかりしおって


 よいか、今ここには鬼が死んだ後がある

 そして、そこの男はここを立ち去る


 残るのは、矢島で鬼が死んだという事実だけ


 そんな状況で、あの黒鬼が黙っておるはずがあるまい

 少なくとも、ここにおるもの全員が拷問の末皆殺しじゃろうて


 罪状は、鬼のために身代わりに死ななかったことじゃ」


 矢島に囚われている全ての女性が、話を聞くごとに青ざめていく

 終盤の方はもう聞いてすらいない


 それを見て、金眼の女性だけはニヤついている

 こうなることが初めからわかっていたかのように


「もうわかったじゃろ

 そなたらに残された選択肢なぞ、この男の提案に乗ることしかないのじゃ


 はっはっは。ほれ急いでしたくせぇ」


 少しの沈黙

 直ぐさま、テキパキと皆が動き出した

 先ほどまで、周りを出し抜こうと考えていた者の姿などどこにもなかった




 足があるのもは、無いものを背負い

 無いものは、あるものの背にしがみつく


 それでもどうすることもできないもの達は、海の近くに移動する

 助けが来た時に、すぐに逃げられるように

 鬼が来た時に、すぐに死ねるように


 幸い、女性の体は水に浮くようで転落して溺死の可能性は低そうである



「さあ、準備完了じゃ

 出発するぞ


 いざ、港へ!脱出じゃ!!」


 その姿は誰よりも無邪気で、幼く見えた










 可能な限り素早く、連れ出せる限りの人を連れ港に着いた


 ここから桃太郎はどうにかして鬼を殲滅し、船を盗み出さねばならない

 それも、使える状態の船のまま


 その作戦は全く思い付いてはいない

 奥の手は、船を全て破壊する可能性があるため使えない


 そう思っていた

 しかし、目の前の光景は桃太郎の予想とは何もかもが異なっていた







 港は、もぬけの殻になっていた

 鬼1匹いない

 伯智の偵察によれば、ここは常にワラワラと鬼がいる……はずだった


 しかし、本当に1匹たりともいない

 桃太郎達からしたら、絶好の好機


 あまりにも都合が良すぎて、何か罠があるとしか思えない

 しかし、そんな気配もない


 少女達は次々に鬼の船へと乗り込む

 その姿を見ながら、桃太郎だけは周囲を警戒する


 しかし、山から鬼が現れる気配はない

 やがて、一隻また一隻と海へと出港する


 このうちの何隻かは、矢島を経由し動けない女性を拾うだろう

 拍子抜けにも、全員の救出に成功した


 そして、同時に港の制圧もうまくいった

 後の仕事は、この港を発着できないようにすること


 桃太郎は、エドワードに渡された爆弾をセットした



同名の作品があることに気付いたので、タイトルを変更する予定です

今後ともよろしくお願いします

桃太郎-recast-

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ