情報
エドワードは小さな島のさらに鬼ヶ島からは見えない部分だけで生活していた
もちろん、狩りなどで鬼ヶ島に行くことはあれど、生活感が出そうなものは全てうまく隠していた
菜園もやっておりその大半が芋類と豆類
おそらく見つかりにくく、腹持ちが良いからなのだろう
桃太郎はエドワードが生活している洞窟へと案内される
かなり質素だが、生活するのに必要なものが十全に揃っていた
その洞窟の中央にエドワードが腰を下ろす
勧められるがままに桃太郎も腰を下ろす
「さて、私も鬼にはほとほと困っていた。鬼がいる限り私は海に出ることができない。それすなわち海の王になれない。
故に迷える子羊よ。聞きたいことをなんでも聞くといい。全て教えて差し上げよう。そして、あの鬼どもに死の救済を!」
海の王とは何かすごく気になる……が聞くべきではないと思う
……葛藤した
とても男心がくすぐられる単語だった
かろうじて我慢した
「……まず初めに、洗脳を解く方法を知っているのですか?」
桃太郎は単刀直入に聞いた
「知ってるよ。いや知っているというか身を持って体験したよ。
あれはそう、私がまだピチピチの35歳頃…………」
……桃太郎は思った。
その一言で理解した
人生で初めて、こんな無礼な感情を他人に抱いた。
ああ、多分この人変な人だ、と。
「私は、鬼の洗脳を受けて鉱山で働いていた。真っ二つに割れた山は見たかね?ちょうどあそこで働いていたんだよ。鬼のために毎日毎日金を掘っていたんだ。
そんなある時ふと思ったんだ。これ爆破したほうが楽じゃね? って」
桃太郎の顔がもうオチに気づいたかのように、正気じゃない人を見るような顔になっている
そのことにエドワードは気づかない
きっと気づいても意に介さない
どうってことでもない様に話を続ける
「幸いにもこの島は硫黄も少しは取れる。昔やってた仕事のおかげで、火薬の作り方も知ってた。じゃあ、もうやるしかないかなって思ってね。ドッカーンって。ド派手にね。
この国では『思い立ったがbeginning』っていう諺もあるわけだし。
んで火薬に火をつけたら山が崩落したんだよね。たまったもんじゃないなって思ったよ。本当に。
崩落するなら崩落するって事前に言ってほしいよね。」
桃太郎は空いた口が塞がらない
そして心から思った
それは『吉日』だ!!
「しかも困ったことに、崩落した岩が坑道を潰してしまって、出口のない小さな部屋みたいな所に閉じ込められちゃったんだよ。大きさは大体四畳半くらいかな。
そこがあまりに真っ暗で何も見えなかったから、一旦昼寝して、お腹がすいたなぁって思ったくらいで外に出ようと思ったんだけど、昼寝したせいで方向がわからなくなっちゃってね。
どこから出れば良いかさっぱりわかんなくなっちゃったから、ひとまずピッケルで適当に掘り進めて脱出を試みたんだよ」
…………
「その時初めて気がついた。ここ最近ずっと鬼の血しか飲んでいなかったことを。
どうやら鬼の血はかなりの劇薬で、数日に一回鬼の血を飲むだけで、飯を食べる必要がない。代わりにその摂取ができなくなると極限の空腹に苛まれてね。
どうしてもお腹が空いた時はモグラのモーくんと一緒に…………いやこの話はいいや。
それで、何ヶ月も掘り続けてようやく外に出たんだよ。その頃には空腹は一般人並みになっていて、別に鬼のこともどうでも良くなっていた。いやむしろ、海の王の邪魔になるとすら思ったね。」
この人かなり変な人で、ちょっと話が長いかもしれない……
桃太郎の不安は募っていく
「ということは、無理やり鬼の血の摂取を阻害して、空腹を耐え抜けばまた元に戻せるということですか?」
「まあ、そうだな。強いて言えばただの空腹ではなく極度の空腹だがな。これ大事」
なぜかエドワードはとても誇らしそうな顔で、かつ少し威張ったような顔で、桃太郎の言葉に修正を加える
「極度の空腹ですね。それは大変だ。忘れないようにしっかり覚えておくようにしておきます。
ところで、その鉱山には血を与えるために定期的に鬼が一人やってくるのですか?」
「一人じゃないね。そして場所も鉱山じゃない。人数は最大で8人、最小でも4人はやってくる。鉱夫の数があまりにも多いから鬼一人では流石に賄いきれない。
加えて血を与えられるのは鉱山じゃなく集落でだ。あっちの方が鬼の拠点に近くて楽なんだろう。どうせ、あの血を飲んだものは依存する。勝手に血をもらいにくるんだ。
むしろ、島の北側で鬼を見たことがない。あいつらもしかしたら鉱夫の鍛え上げられた肉体にしか興味がないのかもしれんな。はっはっは!」
「…………つまり、島の北には鬼がいないと?」
「まあ、そうだな。いたとしても下っ端の赤鬼だけだろ。血を分けるのもあいつらの役割だし」
その発言は、エドワードの会話の中で一番桃太郎を驚かせた
「血を与えるのは青鬼じゃないのですか?」
今日一番の気迫で質問する
鬼ヶ島の中にある金山
それはいわば、金のなる木である
それこそ、最も利便性が良く使い勝手もいい
そんなもの青鬼レベルの鬼が間違いなく全て支配下に置いていると思っていた
しかし、エドワード曰く違うらしい
「血を与えるのは基本赤鬼だな。というか、それが鬼が4人の時と8人の時がある理由だな。
……そんな物欲しそうな顔しなくてもちゃんと教えてやるさ
青鬼の奴隷になってる赤鬼がいるんだよ。鉱夫の見張り管理、その他諸々身の回りの世話とかもか、そう言ったことを全部やらせる奴隷鬼がな。だから血を渡すのもそいつらの役目。掘った金銀財宝は青鬼のもの」
「では、その赤鬼4人を殺したら鉱夫を解放することはできますか?」
「…………一時的には可能だな。ただ、青鬼も一ヶ月に一回くらいは様子見に来ていたから、多分洗脳が解けてもすぐに見つかって結局別の赤鬼が派遣されるかな。
それなら大元の青鬼4人を叩いた方がいいと思うぞ。それかさらに大元の黒鬼かな」
「そうですか…………黒鬼とは?」
エドワードがものすごくニヤニヤしている
まるで、サプライズをする直前の子供のように
その顔を見ればわかる、これはきっと重要な話だ
今までの話と違って…………




