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桃太郎-recast-  作者: 星乃光
天地始めて粛す
44/73

出航

 桃太郎は出発した


 船には新たに1匹の雉が乗船している

 武蔵、青雲、伯智、そして桃太郎の旅が始まった


 桃太郎一行は日鬼真宗の船でさらに川を下る

 目指すは鬼ヶ島


 桃太郎の口数は少ない

 心を決めても心配が消えてくれはしない



 なんだかんだ船は進む

 もう、この山間(やまあい)を抜けた先は鬼ヶ島である

 川はゆっくりと、けれどしっかりと桃太郎達を目的地へと運んでゆく



 そしてついにその日が来た

 山間を抜けた

 木々が目の前から無くなり、広々とした平地が目の前に広がる


 そしてその奥にうっすらと、真っ黒な島が見える



「あれが鬼ヶ島…………」

 無意識に言葉がもれていた










 桃太郎達はここで船を乗り捨てることにした


 今までは、移動手段としても、隠れ家としても優秀だったが、この船はカモフラージュ用に大量の木が生えている

 森を抜けて仕舞うと、とても奇怪な船に成り下がってしまう


 これでは、むしろ悪目立ちしてしまう

 鬼を誘き寄せているようなものである


 であれば、手放した方が賢明だ




 そこから、徒歩に切り替えた

 船は、もういらないのでそのまま流れに任せて流した


 桃太郎達は、できるだけ川から離れるように移動し、流した船の行方を観察していた

 案の定、ワラワラと鬼が集まってくる


 突如として現れた奇怪な船に興味津々である

 何匹かが船に乗り移るのが見える


 予想はしていたが、いや、予想以上に鬼ヶ島に近づくとそこらじゅうに鬼がいるようである

 それを先に確認できたことは僥倖だった



 それからは、見つからないよう慎重に行動した


 幸い、伯智が空から偵察しそれを逐一教えてくれるため、見つかる気配は全くなかった

 むしろ奇襲しやすい鬼を容易に見つけ出せた


 鬼ヶ島へと向かう桃太郎の歩んだ道には、所々銀色の液体が残っていた





 何体もの鬼を殺したことによって新たな発見があった

 鬼の肌の色によって強さが違うらしい

 赤が最も弱く、青に近づくほど強くなっているようだった



 船を捨ててからの旅は、茂みや木々がちらほらと点在していたおかげで速やかに鬼ヶ島に近づけた


 しかし、半分くらい進んでから一気に隠れる場所がなくなった

 そこからは、もはや川辺の茂み頼みで移動した


 かなり遠くに小さな集落があるのが見えるが、そこに辿り着くのすら至難の業であろう








 桃太郎達は、そこからはより慎重に行動した

 幸い、お供達は夜目が効くため、昼間は隠れて眠り夜に移動した


 そんなこんなで、少しずつ鬼ヶ島へと近づいた頃だった



 気を抜いてはいなかった

 それでも、鬼に囲まれた

 まるで、この付近に桃太郎がいることを確信しているかのように


 いつどこで見つかったのかが皆目見当もつかないが、鬼は誰かを探すように川辺を動いている

 しかも、その数6匹


 4匹までならぎりぎりなんとかなる

 一人1匹受け持てばいいから


 5匹もかろうじてなんとかなるかもしれない


 だが6匹はまずい

 必ず怪我人が出る

 怪我人が出ると痕跡が残る


 それでも、もうやるしかない

 近寄る鬼に比例して桃太郎一行の覚悟が決まる



 短期決戦で、1匹ずつ順々に仕留める

 それを連続で6回


 失敗すれば、周囲の鬼が気づいて援軍に来ることだろう

 そうなれば数に押されて負ける



 幸いこちらを探している鬼の中に1匹だけ赤鬼がいる

 まずはその赤鬼を暗殺する

 静かに、速やかに



 そう桃太郎が心を決めた時、背後から声がした


「こっちです」


 それは、きっと桃太郎でなければ聞こえないほどに小さな声だった

 けれど、聞こえたのだ


 桃太郎は、あたりを見回す

 けれど誰もいない

 驚くことに気配すら感じない


 本当に人がいたのか不安になるほどに静かだ



 今なら、赤鬼の暗殺ができるかもしれない

 けれどこのチャンスを逃せばそれは確実に不可能になる


 選択は二つにひとつだ

 聞こえたような気がする声を、信じるか否か





 桃太郎は、直感に従ってその声を信じることにした


 声が聞こえた方へと静かに移動する

 けれど数歩進んだだけで、川にたどり着いてしまった

 他には何もない


 失敗した

 選択を間違えた


 その道中、隠れられるような場所など、どこにもなかった

 武蔵の鼻ですら、それを感知できていない


 周囲に人影はない

 鬼の気配が6つあるだけ



 6匹の鬼はもうすぐそこまで迫ってきている

 状況的に、もう暗殺はできない


 背水の陣とはよく言ったものだ

 真っ向勝負を挑むしかなくなってしまった



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