表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎-recast-  作者: 星乃光
振舞水
43/73

治療

 桃太郎が目覚めてから、数日が経った

 ねねを取り返した時点で、桃太郎には何がなんでも急ぐ必要はもう無い


 けれど、鬼の影響で苦しむ人を身近に見たため、できる限り急ぎたいという思いはあった




 数日が経ち、桃太郎の怪我の具合もかなり良くなった

 青雲の回復も順調だ


 けれど、まだ絶好調とはいかない

 普段なら、その程度で桃太郎は出発していたのだろう



 今回はそうもいかない

 ここにはねねがいる


 連れて行くわけにはいかない

 かと言って、置いて行くのも…………


 なにより、いまだに時々言動が怪しい

 かなり回復してきてはいるものの、どうも麻薬が抜け切るまでにもう少し時間がかかりそうである



 桃太郎は、この状態のねねを置き去りにしてもいいのかという不安があった

 幸い他の二人の少女は自分の集落の場所が分かるらしく、それも帰れる距離らしいので回復次第帰路に着くとのことだった



 だが、ねねは違う

 集落の場所はわかるが、容易に帰れる距離ではない

 道中どのような危険があるかも分からない


 この問題が桃太郎の後ろ髪を引いていた



 来る日も来る日も悩んでは結論が出ず、保留にしていた

 桃太郎の時間だけが足踏みしていた





 そんなこんなをしているうちに青雲も全癒した

 同時に、深く洗脳されていた人間達も自我を取り戻していく


 世界が普通に戻り始めていた


 彼らから話を聞くと、どうやら洗脳された人間は元々三つの集落に分かれていたらしい

 けれど、鬼によって一つずつ取り込まれてしまい、労働力になったとのことだった


 そこで元々村長をやっていた3人が集まって話し合いを始めた

 丸二日くらい話し合いをしていたが、最終的にはいくつかの決め事ができた




 まず第一に、この鉱山は放棄するらしい

 これほどまでに鬼にとって都合のいい土地は手に余るそうだ


 桃太郎もその判断には大賛成である




 次に、元々集落があった他の二カ所を移住先に決めた

 移住先は自分達の好きな方へと移っていいことになった


 というのも、この鉱山へと移動したのがもう何年も前の話になる人もいるので、気にしない人間が多くいるだろうとのことだった


 むしろ、一から村を再建するのだから、やる気の出る方の村で精を出してほしいそうだ




 さらに驚いたことが、その新しい集落と雉の集落を含めた三つで同盟を組みたいそうだ


 なんでも、次に鬼が来た時にはすぐに情報交換をして一刻も早く逃げたいらしい

 他にも、雉との物々交換も再開するそうだ



 最後に、今までの結婚、婚約、許嫁等は全て一度破棄することが決まった

 もちろん両者の合意が取れた場合は、そのまま維持することができる


 なぜこのような変な取り決めができたか、そこには鬼の洗脳の条件が大きく関わっていた



 鬼の洗脳の条件、それは洗脳したいものに自分の体液を取り込ませること

 血液、汗、涙……など、なんでも良い

 本当になんでも


 洗脳されたものは、極度の幸福感と鬼のために何かしたいという自己犠牲欲に支配されることになる

 おそらく、鬼が死ぬまで永遠に



 これが雉を15年前苦しめた原因の一端である

 あの時、雉が苦戦を強いられたのは、攻撃に啄むという選択肢があったから


 口の中に血液が入り込んだせいで洗脳の条件を満たした

 満たしてしまった

 その結果、離脱者が激増したのだろう


 逆に、桃太郎達が洗脳の餌食にならなかったのは、体液を取り入れるという行為をほぼ行っていないから


 紆余曲折あったものの、この4つの決め事がされ少しずつ移住が始まった





 それに合わせて、心を決めたものがいた

 可愛らしいのに誰よりも凛々しい一人の少女が


「桃様、私も彼らの移住に付いて行かせてください」

 それは、元気になったねねからの嘆願であった


「もし、また鬼が来たらどうするんだ。また攫われてしまうかもしれないじゃないか」


 その言葉を聞き、桃太郎は反射的に反論をしてしまった

 本当に言いたいことはこんなことでは無いのに……


 それに対してねねは穏やかに応える

「そうかもしれないですね。…………でも、そうじゃないかもしれないです。


桃様と一緒に旅をしたほうが安全かもしれないし、村に帰るほうが安全かもしれない。…………どれが正解かなんて誰にもわからないのですよ。


だから桃様は悩んでいるんです。なら私は、私が一番安全だと思う選択をします」


「だけど、それは…………」

 ……いや、わかっている。これは私のエゴだ。


 ねねを守りたいというエゴ

 目の届くところにいて欲しいというエゴ

 一緒にいたいというエゴだ



「大丈夫ですよ桃様。皆様がきっと守ってくれます。

雉様がきっと守ってくれます。

それに、もしまた攫われても桃様なら助けてくれるでしょ?」


「ああ、絶対に助け出す」


「だから問題ないのですよ。私も信じてますから。思う存分やっちゃってください。

あと、二度と約束を忘れないでくださいね」


 やはり、ねねには敵わない




 桃太郎はついに決断した

 ねねのおかげでようやく踏ん切りをつけられた



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ