攻城戦8
青鬼が持つ弓
妖弓『雷』
世にも珍しい放つ矢に能力を与える弓
その高度な技術ゆえに、能力の制約が厳しい
その弓が放つ矢は、被弾するまでに最大3回まで軌道を変えられる
ただし軌道を変えられる回数は完全ランダム
加えて、一度矢を放ったら必ず1回は軌道を変えなければならない
一度も軌道を変えずに何かにぶつかると、容易に矢が崩壊する
桃太郎を狙った矢のほとんどが、被弾まで辿り着けていない最大の理由はこれだった
そんな珍しい弓が青鬼を気に入っている理由
それはこの青鬼も、世界でたった一人しかいない女の鬼だから
そして、どこかの鬼が妹を大事に思い、怪我をする近接戦をさせないために…………
青鬼が山城を登り切ると、そこには予想外の光景が広がっていた
人間だけでなく、それ以外にも色々いる
目の前の兄がまたウキウキし出した
理由は明瞭
こういう場合大抵強者がいる
おそらく人間の背後にいる、猿と犬に興奮しているのだろう
多分あれ猿だよな……血まみれ過ぎて自信はない
あの様子からするに、人間の仲間か?
その2匹の畜生はさらに奥にいる3人の女を守っている
女3人は宗教野郎どもが連れてきた貢物だな
あいつらはクソキモいけど、いい仕事をする
5秒足らずで青鬼は誰が味方で誰が敵か、何のためにここに集まっているのかをほぼ完璧に理解した
そして、この中における弱点を真っ先に狙った
青鬼の放った矢は青雲めがけて飛んでいく
血だらけで、もうゆっくり動くので精一杯の猿の方へ
その矢を見て、武蔵が咄嗟に防ぎに入る
その爪で叩き落とそうとする
しかし、残念なことに武蔵はその矢の力を知らない
矢は武蔵の攻撃をスルリと避け、方向を変えた
青雲ではなく、ねねに向けて
その矢は狙い通り、人間に刺さった
けれど刺さったのは、狙い定めた人間ではなく兄上の腕を奪った人間
人間は皆、そのように動く
大切な人を庇うように
今回も同じ、満身創痍だった人間は、背中から矢が貫通した
その矢は脇腹から突き出たが、幸いねねにまでは届かなかった
そのことに今のねねは気づかない
目の前の桃太郎にすら気づけない
「うぁ?…………おぁう」
まるで赤子のような音を発している
…………その光景を前に桃太郎は、立ち上がる気力を失った
ボロボロの体を奮い立たせることができなかった
涙が頬を伝っている
自己嫌悪の海に沈んだ
自分の無力さに打ちひしがれた
気づけば桃太郎は、霊刀『鬼喰兼親』を地面に突き刺していた
そのあまりに悲しい主人の背中に、武蔵と青雲が立ち上がった
逆に2匹の気持ちを奮い立たせた
陣形は、青雲が緑鬼を
武蔵が青鬼を
怪我した者達と元気な者達のマッチアップ
ただし、青雲は緑鬼より元気ではない
武蔵では青鬼の矢を全て防げない
誰がどう見ても敗北が濃厚な試合
矢がもう二度と主人様を傷つけないことを祈る、そんな神頼みじみた奇跡に縋らざるを得なかった
その時、遥か上空から声がした
「某も混ぜてくださいよ」
全員が上を向く
そこには、数匹の仲間を連れた伯智が神々しく飛んでいた
「桃太郎殿、その女性たちは私の仲間が安全なところへと避難させましょう。……それとここで少し休んでいてください。あの鬼どもはわたしたちでなんとか押しとどめて見せますから」
そういって、伯智は武蔵と青雲の隣に降り立った
「こんばんは。諸先輩方。どうぞよろしくお願いします」
3匹の初めての共闘が始まる




