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桃太郎-recast-  作者: 星乃光
振舞水
31/73

「主人様を呼んできます。青雲はここで見張をしていてください」


「……いや、無理だな。誘い込まれた。敵に囲まれているぞ」


 気負っていた武蔵は敵を見落としていた

 そんな武蔵を青雲が冷静に止める


 対する人間も超速で動く犬と猿のコンビ

 流石にそれが何なのか分からず混乱している

 敵か味方かの判断がつかないていないのだろう


 襲われるまでには、ほんの少し猶予がありそうだ



「血の道標で罠だと気づくべきでしたね。……何か打開策はありますか?」


「……一つだけ。ただその前に、まず最初に俺らが確認しなければいけないことは、ねねさんが本当に目の前の山城の中にいるのかどうか。……だと思う。

待ち伏せされたということはそれ(山城)自体がブラフの可能性がある」


「匂いはこの先にいると言っていますよ」


「武蔵の嗅覚は信用している。どちらかと言えば山を越えたその先にまでねねさんが連れ拐われていないかを確認したい」


「この難攻不落に見える山城さえもブラフだと?」


「完全に後手に回った時は冷静に…………って昔兄貴が言っていたから」



「……それで案というのは?」


「まず武蔵がやることは簡単。この村の周りを一周してほしい。その嗅覚があれば、ねねさんが本当に山城の中にいるのかはわかるでしょ?俺はこのまま山城を攻める。あの石垣は人間を想定して作られているから猿の俺なら何とかなると思う」


「あなた死ぬ気ですか?いい案だとは思いますが、焦って冷静さを欠いていますよ。いま罠に嵌って囲まれているんです。このまま突っ込んだら間違いなく罠だらけです。私に乗って半周進んでください。……きっとその方が安全に囮役ができます」


「そっか、わかった。ありがとう。じゃあ、次にどうにかして今のこの包囲網を脱出する方法を考えよう」



 周囲を囲む人間がじわじわと寄ってきていた

 二匹を敵と判断したらしい


「時間がなさそうです。作戦は臨機応変に、で行きましょう」



 山城とは反対側、川がある方向に5人

 左右に2人ずつ……いや、3人ずついる


 しかし、山城方向には誰一人としていない

 これほどまでにわかりやすい罠も珍しいかもしれない

 何がなんでも山城側へと誘い出したいらしい


 三方向から一斉に人間が刀を振り下ろした



 武蔵と青雲はほぼ同時に唯一の逃げ道、山城側へと飛び避ける

 その瞬間、人間たちの勝ちを確信した笑みが目に入る


 しかし、青雲が頭上の木の枝を掴み、両足で武蔵を掴む

 そのまま、振り子の重りがまた帰ってくるかのように、武蔵が元々立っていた位置へと帰ってくる


 いや、その速度が比にならない。

 青雲と武蔵が後ろ足を合わせ、お互いの全力で蹴り飛ばした

 力の青雲と、脚力の武蔵。その全力



 ズドン



 武蔵は目の前にいる人間をクッションがわりに前足から着地する

 その瞬間、意図せず衝撃波が生まれた

 刀を振り下ろした左右の二人も吹き飛ぶ


 土埃が舞い上がる



 武蔵は勢い余って、包囲している人間4人の方へ転がる


 一瞬の間を置いて…………

 人間の第二陣が突っ込んできた

 今度は三方向、二人ずつ


 しかも、今回は逃げ道を作っていない

 左右の人間は少し回り込んでから、刀を振っている

 力押しで一匹ずつ殺しにきた


 衝撃波を出す犬なんてインパクトの強いもののせいで、武蔵への警戒心が跳ね上がった

 代わりに、青雲への注意が散漫になった


 左から回り込みながら武蔵に襲いかかる二人は、背後から青雲の一撃を食らう

 桃太郎以上の怪力の一撃


 その二人は一瞬でノックアウトする

 そのまま、二人の人間は武蔵の頭上を飛び越えて、別の二人にぶつかった


 包囲網に穴が開く

 が、そう簡単に逃がしてはくれないらしい



 新たな人間が、さらに10人ほど山城側から集まってきている

 おそらく、山城側で罠を張っていた人間たちであろう


 武蔵は、振り下ろされる刀を避けつつ、その場で拘束回転を始める

 じわじわと土埃が、森の中に舞い始める

 視界が悪くなる



 一方、青雲は近くに生えている木々の中から最も大きな木を探す

 そして突然その幹を殴り飛ばした


 バキバキと音を立てながら、その木が山城側へと倒れ始める

 青雲が慣れた手つきで、倒れ始めた大木の天辺へと向かう


 ある程度その大木が倒れた時、その大木の幹を足場に武蔵が全力で登ってくる

 二匹は大木の天辺付近で合流し、その勢いのまま包囲網を飛び越え脱出した


 集まってきた、人々の頭上を飛び越えて


 集落の木々が全て伐採されていたことが仇になった

 もう、青雲を乗せた武蔵に追いつける人間はいない

 二匹を囲んでいた人間が、追いかけているがどんどんと引き剥がされていく



 そろそろ半周が過ぎようとしている

 山城の頂上に、一羽の雉がいるのが目に入る


 突然、武蔵の体が軽くなった

 青雲が離脱したようだ


 二匹は同時に心の中で念じた

桃太郎(主人様・兄貴)のために」



 青雲にはこの先の作戦はない

 武蔵か青雲のうち、どちらかが囮役をする必要があった

 だから足が遅い自分が引き受けた…………ただそれだけ


 青雲が山城まで半分の距離へと差し迫る中、武蔵はもう集落一周を終えようとしている

 やはり、その判断は間違えていなかったと思った


 武蔵が木々の中へと吸い込まれていくのを確認して少し後

 青雲が山城に開戦の一撃をお見舞いした





 武蔵は、村を半周したことで確信を得た

 「ねね様はこの山城中にいる」

 この城の地下にかなり長いトンネル(抜け道)でも掘っていない限り、間違いない


 武蔵のボルテージが上がる

 速度が最高潮に達する



 武蔵は集落を一周し、来た道を戻るように川へと続く道を下る


 ここからは時間との勝負だ


 青雲がそろそろ山城の攻撃に入る

 つまり、こちらの存在が間違いなく全ての人間にバレる


 なにより青雲は一匹で囮役をしている

 彼の命は武蔵がどれだけ早く桃太郎を連れて戻れるかにかかっている


 武蔵にとっては森の中という普段よりも走りにくい環境であったが、その速度は自己最速を更新した


 遠くに……いやもう近くに、木々でカモフラージュした船が見える

 時間が惜しい

 そう思った時には、甲板に向かって飛んでいた


 ちょうど、夜が訪れた。



「主人様、ねね様を見つけました!背中に乗ってください!」



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