事件
伯智の話から想定外の言葉が紡がれている
一つ目が、桃太郎と深い繋がりがある気しかしない、大きな桃。
二つ目が、武蔵の一族の墓地に埋まっているという、頬に傷を持つ男性。
けれど、この話の本題はまだ始まっていない
頬に傷がある男がやってきてからおおよそ1週間が経った頃。
神社に新手の参拝者が現れた。
とても無礼な参拝者が……。
通常そう言った輩には雉達の一斉攻撃が始まる
神聖な社を汚されるわけにはいかないから
しかし、今回は違った
そもそもそれは人間ですらなかった
そのものは頭にツノを生やし、緑みがかった肌をしていた
その時、その場にいた雉は皆恐怖で動くことができなかった
そして運が悪いことに、この時、雉達の族長が代替わりして間もない頃でもあった。
この時の代替わりしたばかりの雉達の長が伯智の祖父にあたる
その鬼を見たものは、皆気づいたのだ
見た瞬間気がついた
頬に傷がある男は、何から逃げていたのか
何と戦っていたのかを…………。
雉は皆恐怖に押しつぶされかけていた
誰一人として、その生き物と戦いたくはなかった
族長ですら怯んだ
それでも、神社を守るものとしての責務がある
族長は声を上げた。
「戦おう!」
…………
付いてきてくれるものが、半分もいなかった。
まだ信用が足りなかった
タイミングがあまりにも悪すぎた
雉の群れは二分した
族長の一派は過激派と呼ばれるようになった
それでも、使命を全うするために、彼らは攻勢に出る
目の前の圧倒的な強者に、勝てる見込みがあったのだ。
族長は近くの人間の集落に1羽の伝令を送っていた。
頬に傷がある男性を助けた彼らなら、この状況で増援を送ってくれるに違いないという確信があったのだ
そもそも周辺の村との関係はかなり良好だ
このような状況で、援軍が来ないわけがない
事実としてその認識は正しかった
あとは持久戦を仕掛ければいい。
援軍が到着するまで
その際できる限り肉体も、精神も削れたら、尚よし
どんなに強い敵でも、いつか体力に限界が来る
体が大きい生物は、食糧調達も課題になる
鬼なんて、体の大きさ力の強さから見ても食費は馬鹿にならない量になりそうである
その点、こちらは数も食料も豊富だった
雉達の1日目の嫌がらせに似た足止めは、成功した
新任の族長としては十二分の働きだった
むしろ半数でよくやったと褒め称えられてもいいほどであった
夜になっても、鬼に対する雉の嫌がらせは終わらない
鬼に睡眠を取らせるつもりはない
一方雉は交代で眠る
そうやって、日が明けた。
流石の鬼も、疲れが目に見えて出始めた
そのまま順調に、二日目が過ぎ去る
少し不穏だったのは、族長に付いてきた雉達の約1割が離反したこと
鬼とはもう戦いたくないと言い出した
特に、激しく戦闘に参加したものほど離反した
そしてもう一つ、その日、人間の集落からの援軍が届かなかった。
三日目の朝が始まった
流石の雉達にも若干の疲れは出始めていた。
けれどもそれ以上に、鬼の疲労がピークを迎えていた
体中小さな切り傷だらけ
初日と比較して、明らかにキレの悪い、大振りの剣技。
睡眠不足で視点があっていない目
今日の夜か、明日の朝には決着がつく
そう思える光景だった。
その日、5割の雉が離反するまでは…………
結果、三日目の夜に嫌がらせはできなくなった。
交代で睡眠をとりながら嫌がらせを行える数では無くなってしまったのだ。
その日、鬼は三日ぶりの睡眠を貪った。
四日目の朝になり、鬼はある程度元気を取り戻した
そして、身体中にできた無数の傷は、ほぼ塞がっていた。
雉達は鬼の回復能力を見誤った。
その日、ようやく近くの集落からの援軍が届いた。
それは、ものすごい数の男達だった。
集落の男全員がきたのではないかと思えるほどだった。
その屈強な男達が一斉に攻撃を仕掛けた
…………雉達を狙って




