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桃太郎-recast-  作者: 星乃光
振舞水
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呪い

 桃太郎には、初め賽銭箱の上の一羽の雉しか目に入らなかった。

 その堂々とした姿はあまりに目を惹かれるものがあった


 しかしよく見るとその左右の階段に一羽ずつ、合計3羽の雉が伯智のことを見下していた

 3羽とも、冷たい目をしていた




 賽銭箱の上に立つ一羽の雉が話し出す

伯智(はくち)よ。其方(そなた)何故ここにやってきた。あの川からこちらへと来る事を禁じられていたと記憶しているが……」


「…………はい。しかし失礼を承知で申し上げます。どうかもう一度、某にこの病いについて調べさせてください。」


「どの口がほざくか!」

 右側にいた雉が声を荒げる


「この呪いは其方が住む地域から広がり始めたではないか。

呪いの元凶のくせに良くもまあ抜け抜けと、そのような戯言を言えるものだな」

 左側の雉も伯智を攻める


「二匹とも、それくらいにしておきなさい。その裏切り者の一族に色々と言いたいことがあるのは尤もだが、その前に隣に立っている人間と伯智の元気な姿について教えてもらおうじゃないか」

 中央の雉が左右の二人を諌める


 静かになるのを持ち伯智が話し始めた


「この人間は桃太郎殿と申します。(それがし)が秘伝の丸薬を頂戴いたしたところ、たちまち外傷が治りました。おかげでこの通り、本調子とまでは行かないものの十分に動けるようになりました。」


「……ほう。なかなか興味深いではないか。してその呪い返しの丸薬はまだあるのか?」


「いえ、残念ながら…………」


「では、その丸薬をここで作ることができるということかな?」


「いえ、それも…………しかし、その丸薬ほどとは行かないものの、材料さえ揃えればある程度は効力のある薬が作れるかも……しれない……と…………」


 伯智がうつむき、うな垂れながらもかろうじて言葉を紡ぐ


 真ん中の雉から大きなため息が漏れる

「話にならんな。我らから見れば、其方が元気になった理由は、其方が呪いの元凶であったために、その治し方を知っていたという方が納得がいく。


……そもそも其方(そなた)の一族は川のこちら側へと渡る事を禁じられている。

一度は温情として呪いについて調べさせる事を許したものの、結局成果はなし。これ以上甘やかすことを許容はできぬ」

 中央の雉が冷たく言い放つ


 伯智には返す言葉がなかった







 桃太郎にはここまでの会話で伯智の声しか聞こえていない

 きび団子を食べていない3羽の雉の声を聞き取れはしない


 しかし、交渉がうまく行かなかったらしいことはなんとなく理解できた。


 多分助け舟が必要な状況なのだろう

 そもそも、病を治すためには伯智の尽力が必要不可欠だ


 ここで交渉が決裂されると蹉跌をきたす

 だから、伯智に話しかける(通訳してもらう)ことにした。



「一つ彼らに提案をしていただけますか?」

 桃太郎が伯智に声を掛ける

 伯智が桃太郎の顔を見上げる


伯智(あなた)(桃太郎)でこの病について調べさせてほしい。とはいえ、部外者の私の言うことなど信用できないでしょう。そこで、御三方に理がある話を持ってきました。


もし私が明日の日没までに、この病の治療法を見つけられなかった場合、または、この病の根本的な原因を見つけることができなかった場合、私はこの村から出ていき二度と関わりません。最後の一個の丸薬(きびだんご)も置いていきましょう。


かわりに、もしそのどちらかができた場合、伯智を中心にこの病を迅速に治療または対策をしてください。」


 伯智には桃太郎のその発言が信じがたかった

 いや、もはや愚か者を見る目である。


 これは彼にはなんのメリットもない交渉なのだから

 そもそも、桃太郎が伯智に手を貸す理由はないのだ


 今、桃太郎はきび団子を失うリスクだけを背負っている



 伯智は自分のために桃太郎が身を切ることを許容できない

 しかし、伯智の反対を押し切り桃太郎はその内容で内容を通訳してもらった。



 もちろん、3羽の雉達にこれを拒否する理由も特にはなかった。

 3羽からしたらこの交渉は条件が良すぎた

 というか、条件が良すぎるが故に断れなかった


 ここで交渉を断ったら、病を治す気がないと思われても仕方がない



 おかげで伯智はもう一度、村中を調査する機会を得た。


 しかし桃太郎の要望で、まずはこの村で一番最初に病を発症した患者の元へと向かうことになった。

 その者は、伯智の従兄弟に当たる雉だった









 神社で三匹の雉が話し合っている。

 その声はとても小さい


「……伯智のやつが元気になった丸薬とやらは一体なんだ」


「何か特殊な力を持つ食べ物であることは間違いなかろう。数を用意できなそうなところを見ると、誰かの血という可能性もありうるかと」


「ということは、一緒にいた人間の血か?」


「それはなんとも言えないでしょう。もしそうであるのなら丸薬にする理由がいまいちよくわかりません。直接飲ませればいい」


「たしかに。……ただ念の為、連絡だけはしておくべきかと。もし彼が鬼だった場合一大事ですから。そうで無くとも少々めんどくさい状況になってしまいましたから…………」


「それもそうだな」




 そう言って、右側にいた一羽の雉が飛び立った



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