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桃太郎-recast-  作者: 星乃光
振舞水
20/73

湿原地帯

 桃太郎は目を覚ました。


 雨音が響いている


 何日間眠っていたのだろうか。

 ゆっくりと体を起こす。


 ここは……日鬼真宗の船だろうか。

 その船のハンモックで寝ていたようだ。





 桃太郎が目を覚ましたのを察知して、武蔵が駆け寄ってきた。


「主人様。大丈夫ですか」

「ああ、問題ないよ。まだ無茶すると傷口が開いてしまうだろうけど、ある程度動けると思う。」

 武蔵が尻尾をぶんぶん振っている。


 船の中には、桃太郎と武蔵以外にもう一匹、生き物の気配がする。

 この感じは紫炎だろうか?


 ……にしては少し違和感がある気配だ。






「ところで武蔵、私はどのくらい寝ていたのだろうか?」

 桃太郎は内心恐れながらその質問をする


 その回答次第でねねに追いつけるかが決まる




「……ざっと丸二日です。」


 丸二日…………

 つまりねねとの距離が三日分くらいに広がってしまった。


 この船を奪い取ったのがバレていたとしたら、もう少し差があるかもしれない。

 早急に追いかける必要がある。


 大怪我を負ってはいるが追いかける程度なら問題もないだろう

 傷口も開かないはずだ




 二日という時間は桃太郎の気持ちを急かすには十分だった


 桃太郎の中で、追いつけるギリギリの距離が二日だった。

 それ以上の差は許容できない。


 一刻も早く次の行動に移らなければならない


 しかし、起きあがろうとした桃太郎を武蔵が止めた


「?」


 桃太郎は不思議そうに武蔵を見る


「主人様はもう少し、寝ていてください。今は少しでも怪我を治す方が大切です。大丈夫です。いま拙たちは、ねね様を全速力で追いかけていますから。」


「でも、どうやって」

「せっかくこんないい船を手に入れたんです。使わないと勿体ないです。

加えて、主人様はとても運がいいです。雨が降り続いたおかげで、このまま湿原地帯をこの船で通り抜けられそうです。

少々遠回りする羽目になりましたが、じきに日鬼真宗の総本山に着きます。安心してください。」


 どうやら、桃太郎のお供はとても優秀な様だ



 桃太郎は少し安堵する。

 まだ、ねねを取り戻せる可能性は潰えていない。

 桃太郎が寝ていた間も、移動していた。

 差が二日以内であれば、どうとでもできる。







 そこへ、一匹の猿がやってくる。

 ものすごく気配が紫炎に似ている猿が


 けれど紫炎ではない。彼よりもさらにひと回り大きい。



「桃太郎さん、しっかり話すのは初めてっすね。猿王の息子、青雲と言うっす。よろしくっす」

 この猿も紫炎に似て少しチャラい

 兄弟なだけある。


「桃太郎と言います。よろしくお願いします。……ところで、ずっと気になっていたから教えてもらいたいんだけど、他の猿の皆様はどちらに行かれたのですか?」


 この船には桃太郎の他に武蔵と青雲の気配しかなかった

 共に戦った猿達はもういなかった


「他の奴らは、教祖と副教祖の首を持って、俺らの縄張りに帰ったっす。それがあれば、俺ら一族と縄張り争いしている日鬼真宗の信者どもは、戦意を喪失するだろうと。


元々、縄張り争いを早期に終結させるための戦いですから。皆早々に帰らざるを得なかったのです。

ほとんどの猿が、挨拶せずに帰ってしまうことを申し訳ないと言っていましたよ」


 なんとなく結果は分かっていたが、この戦いは猿達の勝利で終わったらしい

 まあ、今この船を乗っとているので当たり前ではあるが……


「と言うことは、紫炎は一騎打ちに勝ったんだね。さすがだ。」


 …………



 空気が重くなる。

 その雰囲気に、桃太郎は自分の失言に気がついた。



 青雲がきび団子を食べるのは、作戦上では失敗した際の最終手段だった。


 その青雲がきび団子を食べた姿になっている。

 それは、桃太郎が気を失った後に、何か想定外のことがあったのだ。


 寝起きなこともあり、そこまで想像力を働かせることができなかった

 間違いなく桃太郎の失言であった


 青雲は、ゆっくりと語り出す

「紫炎は、兄貴は、討ち死にしたっす。最後に兄貴は桃太郎さんに謝っていたんすよ。騙すようにきび団子を追加で一つもらってしまって、すまなかったと…………」


 桃太郎にとっても紫炎はいい奴だった

 強く、賢く、優秀だった


 何より皆から慕われていた

 桃太郎ですら少し慕っていた


 接した時間は短くても、紫炎の死に桃太郎の胸が締め付けられる思いがした


「きび団子に関しては、もとより差し上げるつもりだったから、気にしなくてもいいですよ。

それよりも、紫炎の最後の話を教えてはくれないだろうか。少し遅くなってしまったが、私にも彼を哀悼させてほしい。」


 それから二人は時間が許す限り、語り合った。







「兄貴と最後に約束したんっす。桃太郎さんに恩返しをしようと。だから、お願いします。俺をこれからの旅に同行させてほしいっす。」


「もちろんだよ。むしろ私からもお願いしたい。私たちとしても、青雲のように力が強い仲間が欲しかったんだ。」


「そう言ってもらえると、まじ嬉しいっす。兄貴もきっと喜びます

……なんか……桃太郎さんって、喋り方とか色々全然違うっすけど、……こう……どことなく兄貴みたいっすね。雰囲気が」

 青雲が赤く目を腫らした顔で笑っていた。


 雨音が止んだ。一筋の光が青雲が乗る船を照らしていた。




 上で見張と操縦をしていた武蔵が帰ってくる。

「主人様、着きました。総本山です」

「わかった。準備はできているね。それじゃあ二人とも、行こうか」

「はい」

「ウィッス」



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