地に堕ちるまで④
強すぎる光の裏には大きく、深い深い闇が広がる。
その闇の牙が今この瞬間研がれている。
そしてその研ぎ澄ました牙は無数の試練となり
誠と悠に降り注がれる。
昨日は嬉しいこと言われちゃった!
悠は想い出す。昨日の帰り際誠に言われたことを
「俺だけでいればよくない?」
自分でも分かる、あれは態度に出ていた。
「でもなぁ…あれってそういう…?」
「いやぁ…違うだろ…」
「でもなぁ…う〜ん…いやぁ〜」
「何ゴチャゴチャ言ってるの?お兄ちゃん!」
「あぁ…いやなんでもないけど…」
弟の浜野夜が夕ご飯のペペロンチーノをフォークでクルクルと巻きながら話しかけてくる。
「…って僕なんか喋ってた?」
「めちゃくちゃ喋ってたよ!
というか、昨日帰ってきてからずっとだよ!
なに?彼女でもできた?」
「いやぁ彼女できたとかではないけど…」
まぁ彼女ではないし…
あれはそういうことじゃないかもだし?
「まぁなんか嫌なことがあったみたいな感じじゃないから良いけどさ」
「お前は僕のお父さんか!って」
「お父さんは出てったし、お母さんはお金だけ家に入れるだけだからそれでもいいんだけどね」
「そのことはもう言わないでって言ったでしょ」
「何?まだお父さんとお母さんの離婚の原因がお兄ちゃんだと思ってるの?」
「だってそうでしょ?
お父さんもお母さんも俺の子じゃない私の子じゃないって言って僕の事捨てたんだもん…」
悠の目に涙が浮かぶ。
「誠〜おつかい頼んでもいい?」
「何買ってくりゃ良い?」
「今日はカレーだから卵と…人参と、
じゃがいも!」
「どこの家庭にカレーの中に
卵入れるところがあんだよ!」
「ここにあるじゃない!」
はぁとため息をつきながら誠はスーパーに向かう。
「高校生にもなっておつかいとかガキだと
思ってんのかよ?」
スーパーで頼まれたものを買い帰っていると…
悠が居た…
しかも泣きながら知らない男と歩いていた。
「なんでこんな時間に?しかも男連れて…それに…悠…泣いてる」
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
1回諦めたのに奇跡がおきた!
諦めることが悔しかったから!
近づく女は全部剥がして!
そこの空いた穴全部に俺が入った!
あとちょっとだったのに…
なんでなんだよぉ…
誠は自分の家まで走り出した…
その目には涙を浮かべていたが、雨が降り始め、
涙と雨がみぞれのように混ざり合って分からなくなる。
家のドアを強く開き…買ったものをキッチンに投げ捨てるように置き、
二階の自分の部屋に駆け込む…
ビチョビチョに濡れた服も顔も体も気にせず座り込み…ナニカが誠を襲う
それは後悔なのか…哀しみなのか…悔しみなのか
何かは分からない。
憎悪、嫉妬、後悔、厭悪、喪失
そんな真っ黒な感情の集合体を誠は知っている。
中学の頃、ある男が同じクラスの男に告白をした
だが結果は惨敗では済まなかった。
その事実はクラスだけではなく
学校中、地域中に瞬く間に広がった。
そのせいである男は自殺した。
飛び降り自殺だった…
誠は飛び降りている最中のその男の眼を見てしまった…眼が……あってしまった…
その経験は脳みそにべっったりとガムのように
くっつき離れず、液体のように浸透していく。
何かに関連付けてあの眼が出てくる。
あの全世界の黒を煮詰めたみたいな真っ黒な眼、
その眼から感じる感情と同じものを感じる。
そして一つの考えが頭をよぎった、よぎってしまった…
「普通じゃない恋なんてもう…諦めよう…」
はい!ここまで読んでくださりありがとうございます
merp1eです!
まぁね…はい、結構ドロドロとしてきましたね
あと後出し設定なんですけど、やっぱりトラウマ抱えた系の男子には明るく振る舞うか、自分を過小評価して欲しいっていう僕の性癖なのであしからず。
まぁ悠は自分の顔の良さに気づいてなかったり。
チャラチャラしてそうな誠がどろっとした考えとか、
作戦を考えることができたのは各々にトラウマがあったからなんですね〜
あと、最近見てくれる人の数もついに50を突破しました!
このまま100まで行きたいですので頑張ります!
ではでは!次を楽しんで待っててください!