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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
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73.学校教育

いろいろが足りていない。


そろそろ、銅などの有用な金属を精錬する設備を造りたいと思う。

電気があるから、水銀や鉛を使うことなく、比較的安全に精錬できると思うんだけどね。


人材が足りていない。

助手さんたちに役割を振って実施してみたけれども、新しい事をするには、助手さんの人手が足らない。


私は、ようやく4歳にはなったけど、地球だと3歳だよ。

幼稚園の年少さんだね。

無理でしょ。自分の手は人手に入らないよ。


領地では、空前のベビーブームになっている。


妊婦さんも沢山いて、この勢いだと、領地の1/4は2歳以下の赤ちゃんになると助手のキキさんが領民台帳の担当者から聞いてきた。


あいかわらず、他領からの移民も増えつづけている。


仕事が有るからだ。

鋳鉄の製品やガラス製品はいくら作ってもすぐに売れる。

それを支えている木炭作りも手が足りていない。


上下水道完備で、託児所や出産補償がある領地なんて他には無いんだろうな。

領都は、夜でも明るくて、犯罪の発生も抑制されている。

ここまで、安心して家族が住める場所は無いのだろう。


ちなみに、この世界の子供たちは、5歳になると教育が始まる。商店に勤めている親は、子供のために、読み書き計算を教える。

工房に勤めている親は、子供に雑用をさせて仕事を覚えさせる。

そして、10歳になると、見習いとして仕事の補佐をするようになる。

15歳になったら、成人として本格的に仕事をする。


大体は、親の仕事を学ぶ場合が多い。教師が親なのだから、当然と言えば当然だ。


夕食の時、グルムおじさんが愚痴を言っている。


「どうにも、文官の人数が足りませんな。ギルドに人を取られたこともあるんですが、募集を掛けても、なかなか集まらないのですよ。」


文官として採用するのは、読み、書き、ソロバンができる人だ。

それが出来る人は、大抵は、商人になる。


私とアイルが切っ掛けを作った所為で、領内では様々な商品が生み出されている。それを他領に持って行くだけで、多額の利益になる。


自分の才覚で、いくらでも儲けることができる。

文官なんて地味な仕事をする人が多い訳がない。


一時は、文官の給与を上げて、商店と人材の取り合いをしていたが、最近では完全に商店に負けている。


うーん。この調子だと、助手さんを増やして欲しいとは言えないな……。


グルムおじさんに、識字率を聞いてみた。

正確に調べている訳ではないと言うが、商人と文官をしている人以外で、読み書きが出来る人は、商人や文官を引退した老人だけだろうと言う。

そんな訳で、識字率は3割を下回るみたいだ。


という事は、領民の2割ほどの人材を取り合っているということだ。

ソロバンが使える人となると、それよりもっと少ないだろう。


「グルムおじさん。何で、そんなに読み書き出来る人が少ないんです?」


思わず聞いてしまった。


「少なくは無いと思うが……。こんなものではないのか?」


大人は皆、そんなものだろうと頷いている。


「神の国ではどうだったのだ?」


今度は、グルムおじさんが聞いてくる。


「うーん。正確には知らないですけど、私の知っている人で、読み書きが出来無い人は居ませんでしたね。

簡単な計算なら、皆出来ますね。」


「それは、凄いですな。どうしたらそんな事になるのか理解できません。」


日本の識字率の高さは、随分前からだ。江戸時代でも、識字率が高かったと聞いたことがある。

日本の文字の方が、ずっと複雑なんだけどね。


うーん。寺子屋の所為かな。


結局のところ、この世界では親が教育担当だからかな。親が読み書きできないと、子供もそうなる。

教えてくれる人が居ないと知らないままだな。


人口が増えて、仕事が増えていくとさらに文官の人が必要になるんだろう。

結局、識字率を上げていかないと、文官不足は解消されないな。


ということは、これからも助手さんを増やして欲しいというのは……言いにくいかな。

私やアイルがやっていることが大事だと思って、ムリして助手さんを出してくれるかもしれないけれど、領地の経営に手が足らなくなるのは……本末転倒だろう。


「『寺子屋』を作りましょう。」


「「テラコヤ」とは何ですかな?」


またやってしまった。


グルムおじさんに、日本の教育システムを教えてあげた。

アウドおじさんも、お父さんも真面目に聞いている。


ん。何故にお父さんも?


「騎士は、腕があればそれなりに重用するが、読み書きや計算が出来なければ、隊長を任せることはできない。

命令書が読めなくて、計算が出来ないような者に、何人もの命を預けるのは危険だ。

職人も同じだと聞くぞ。いくら腕が良くても、読み書きや計算が出来なければ親方には成れない。契約書が読めたり、製品の価格を計算できないと親方は務まらない。」


なるほどね。じゃあ、識字率って大事じゃない。何で放置していたんだろう。


「今はこの領地に金がある。他の領地の金を吸い上げているも言えるが。

余裕が無ければ、領民の読み書きなど気になどしないものだ。」


アウドおじさんが説明してくれた。


多分だけど、江戸時代、寺子屋制度のため、江戸の識字率は世界有数だったらしい。

その事が、明治維新という革命的な社会変化に国民が対応できた基礎なのかもしれない。

そうなると、ますます、この領地で、子供達に教育するのが今後の為になる。


そうは言っても、就学する子供は、少なくとも5歳ぐらいより上だろう。

その頃に、子供たちは、家の手伝いを始める。

果して、教育に時間を掛ける余裕があるんだろうか。


そういった話も含めて、相談をする。

グルムおじさん曰く、子供が5歳ぐらいから手伝いをすると言っても、半分遊びのようなもので、10歳になるまでは、仕事を覚えさせたりはしない。


領の費用を負担して、5歳から午前中だけというやりかたをすれば、受け入れられるのではないかと言う。


それで、文字の読み書きが出来るようになって、ソロバンも使えたら、その子供は様々な職に就ける。


親も子供の相手をしながら仕事をしなくて済めば、きっと歓迎される。


そんな訳で、取り敢えず、寺子屋制度を発足させることになった。


併わせて、文官や本格的な商人の候補者を教育するための学校も創ることになった。


寺子屋で読み書きソロバンを習い、優秀な子供を推薦してもらう事で、7歳以上の子供は専門の学校に進ませることにした。


これで、私もアイルも助手さんを沢山雇えるかもしれない。


グルムおじさんは、引退した文官に話を持ち掛けてみると言ってくれた。


ソロバンは、最近の技能のため、少し怪しいが、興味を持っている引退文官もけっこう居るらしい。


メガネのおかげで、復帰した文官も多いが、やはり歳のせいで体力がこころもとない人も居る。


それでも何か役立ちたいと思っている人が多数いるそうだ。


寺子屋を経営を希望する元文官には、ソロバンの研修をして、寺子屋を運営してもらおうということになった。


基本教育で、優秀だと分った子供を教育することに関しては、大手の商店や工房の経営者に声を掛けて運営することを考えるそうだ。


グルムおじさんは、それならば、税金をあまり使わなくても済みそうだと算盤をはじいているみたいだ。


ーーー


その後、寺子屋が200ヶ所以上、開設されたそうだ。


文官や大商店への登用を目的とした学校は、「精鋭養成学校」という名称で開校する。


この学校は、領主だけでなく、ボロスさんやリリスさん達、有力な商店がバックアップして来年から開校する予定になった。


簡単な入学試験をして入学した後は、文官業務や商店での勤務に必要な教育をして、一定の成績を修めたら、文官に登用したり、商店で採用する。


実際に募集してみると、大人気で、予定人数を大幅に上まわる申し込みがあった。


急遽学校のために準備していた場所を変更することになった。


私とアイルも優秀な子供が助手になってくれたら良いなと思っているけど、それは随分と先の話だね。

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