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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
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56.領民台帳

最近、領内の人口がうなぎ登りに増えてきている。

領都居住者の増加が顕著だ。


今年の正月ぐらいまでは、それほどでも無かったのだが、今年に入って、明らかに領内の活気が違ってきた。


最近宰相のグルムとは、この件に関して、頻繁に相談を繰り返している。


先日は、住宅地が足りないため、領都の拡張を行なったのだが、拡張が人口の増加に間に合っていない。


警務団長のエンゾの話では、軽犯罪の検挙数もかなり上昇している。

このままでは不味いことだけは分っているのだが、有効な手立てを思いつくことが出来ない。


また、今日もグルムがやってきた。ソドと一緒だ。


「アウド様、相談したいことがありまして、ソド殿を誘って、こちらに来ました。」


ソドが一緒だということは、何か物騒なことが領地で勃発したのか?

最近は、こんな事ばかりだ。領地が発展するにしても急速すぎる。

もう少し、アイルとニケには、手加減してもらわないとならないな。


「ソドも一緒だということは、何か起ったのかな。」


「いえ、私は、グルム殿に声を掛けられて、ここに来ただけです。何かが起った訳ではありません。」


そうか、緊急の事件や事故が有った訳では無いのだな。

それは良かったが、グルムは、一体、何を相談したいのだ。


「最近の人口が急速に増加したことによる様々な問題について、アイル様とニケ様に相談してみてはどうかと思ったのです。」


「はあぁ?

あの二人は、前世では、モノを扱う求道師であったと言っていたぞ。

今、この領地で発生している施政に関わる問題について、知識など無いだろう?」


「私も実は、そう思っていたのです。

しかし、以前、カイロスから、お二人が通貨の鋳造量の調整についての知識があると聞いたことがありました。

お二人のモノを作り出す知識に圧倒されていて、失念してしまっていたのですが……。

お二人は、施政についての知識も持っているかもしれません。」


通貨の鋳造量の調整は、王国が密かに実施していることだ。中央の文官でも担当する者以外は知らない。地方の宰相でも、よほど知識のある者しか知らないはずだ。

オレは、宰相の補佐をしていたことで知っているが……。

アイルとニケは、そんな事まで知っているのか?


「この鋳造量の調整の件は、以前、宰相の補佐をされていたアウド様はご存知かもしれませんが、多分、領内で知っているのは、他に居りませんでしょう。」


「なるほど、そして、それは、神の国の知識として知っているという事か?」


「そう思います。ですから、最近の領地の問題に対しても、何かの知恵を授けてくれるかもしれません。」


ふぅむ。そういう事なら、二人を呼んで相談してみるのも良いのかもしれない。

何も手を打たずにいると、後々収拾が付かなくなるだろう。

いや、もう既にそう成りつつあるのか……。


「バルトロは居るか?」


「はい、居ります。」


扉の外から、家令のバルトロの声が聞こえた。


「悪いが、アイルとニケの二人をここに呼んでくれないか。」


「わかりました。」


そうバルトロは返事をして、アイルとニケを探しに行った。多分この時間だと二人とも研究所に居るだろう。


「ところで、その、通貨の鋳造量って話は何なのだ?」とソドが聞いてきた。


どうなんだ?この話はソドにしても良いものなんだろうか。


「悪いが、グルム。ソドに問題の無い範囲で教えてやってくれないか。どうやらニケも関わっているみたいだから、ソドは気になるんだろう。」


それから、グルムは、通貨の供給量の話を掻い摘んで説明している。

説明が終る頃、アイルとニケがやって来た。


「父さん、何か用事があると聞きました。」


「アウドおじさん、何か用ですか……って。お父さんも居るの?」


「色々と忙しくしているところを申し訳ないな。少し相談したいことがあって来てもらったのだ。グルム掻い摘んで、説明してもらえるか。」


グルムに説明を頼んで、二人の様子を見ていた。

最近の領地の状況、領都に人が溢れて様々な問題が起きていることなどをグルムが説明している。

二人とも真剣な表情で、話を聞いている。


「すると、最近、職を求めて、領都にやって来る人が多くて、様々な問題が発生しているということですね。」 とアイル


流石、我息子だ、理解が早くて良い。


「すみませーん。質問です。」


ニケが手を上に上げて発言する。なかなか可愛らしいではないか。ソドがメロメロに成るのも分る。


「領民とそうじゃない人は、どうやって判るんですか?」


「それは、周りの人たちが見知っているか、文官が知っているかなどで判る。」


「でも、今は人が増えていて、元々領地の人じゃない人も住んでいるんですよね?」


「それは、そうだが。他の土地から移り住んでいる者な領民として扱う。区別することはできない。」


「住民を記載した台帳みたいなものは無いんですか?」


「いや。そんなものは無いな。」


それから、ニケが、『戸籍』とか『住民票』とかの説明を始める。アイルも補足して説明している。「神の国」には、国民を記した台帳が有ると言う。

住民に対しての施策は、その台帳を元に行なう。

税金の徴収も台帳に記載されている者に対して行なわれる。

住民として登録されていないものは、特段の理由が無ければ、違法に在住している者として扱われる。


「そもそも、税金はどうやって徴収していたんですか?」


とニケ。


「それは、家とか、工房とか商店とかから、利益に見当った形で徴収している。」


「それって、いくらでも誤魔化せるんじゃないですか?」


「いや、皆、見知っているので、何を生業としているかとかは、文官が把握している。」


「でも、今は、移住してきた人だらけなんですよね。」


「それは……。そうなのだ。それで困っているのだ。」


「それじゃぁ。やっぱり、領民の台帳を作りましょうよ。

領民の台帳に登録されている人は、税金の申告を義務付ければ良いんです。」


そこからは、グルムが、色々と聞き始めた。


アイルもニケも、台帳とその利用方法について知っているらしく、グルムの質問に即答していた。


そして、台帳に登録されていない者は、職人や商人や農民として、この領地で働くことが出来ない。

工房や商店は、台帳に登録されていない者を雇うと処罰される。

この領地で働くことができる代りに、納税の義務を負う。

工房や商店は、雇っている者の給与から納税額を差し引いて支給し、その証明を被雇用者に渡し、被雇用者は納税の際に、その分を控除できる。

もし、領地で、子育ての支援をしたいとか、職を失なった老人の税金を免除したいとかの施策をする場合には、台帳を元に実施すれば良い。

神の国では、子供が生れたら速やかに台帳への記載を申請する。

結婚したり、離婚したりした場合も申請する。

死亡した場合にも申請する。


台帳は、今は、紙があるのだから、保管しておくのも記録するのも楽に出来る。


そして、台帳に記載されていない人は、この領地に働く以外の目的でやってきているので、不法滞在者として処罰すれば良い。


やるのであれば、なるべく早い方が良い。毎日移民が増えている状況であれば、後になればなるほど、手間が余計に掛る。


神の国はd30,000,000人もの人口があり、その者たち全員の名前と両親、子供たちが記載されている台帳が有ると言う。


この領地の人口とは比べものにならない。


グルムもソドもやる気になった。


特にソドは、ならず者に手を焼いていた。台帳に未登録の者に対しての対応が楽になるところが良かったようだ。


そんな風に、神の国の仕組みを取り入れようとしていた。


ニケが突然、「そして、『ギルド』を作りましょう。」と言い出した。

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