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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
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2N.木炭

夕食のときに、アウドおじさんに、領主館で働いている下働きの人を貸してもらいたいとお願いした。


何をするのか聞かれたので、鉄の原料を集めると答えたら、どんどん使ってくれと言われた。


どんどんと言われてもね。


仕事の内容や、人数を誰に相談したら良いのだろう。


そうしたら、バルトロさんという初老の男性を紹介された。


そういえば、食事時に、いつも入口に立っていたね。

この人。


バルトロさんは、館の使用人を管理している人らしい。家令とか執事とかいう役目なのかな。


アイルからは、永久磁石が出来たのかと聞かれた。

出来たと答えたら、どうやって作ったのかを聞かれた。

作ったときの説明をしたら、「オレにはムリ」と一言でバッサリ切り捨てられた。


おいおい。少しは褒めてよ。


アイルは、今日は振り子の実験をして過したようだ。ニュートン力学が成り立っていたと言っていた。

まあ、調べることは大切だからね。

でも、調べるまでもなくそうだと思ってたよ。


朝になった。


また花が新しくなっていた。


あっそうだ。今日の午後は、セアンさんと相談しよう。


午前中は、昨日の続きだ。


ミケナ王国とテーベ王国が戦争を始めた。大体、今から1000年ぐらい前の戦争だ。


いろいろな人が出てきたよ。全然頭に入ってこない。


地球に居たころ、周期表の元素名や原子量が覚えられるのに、何で、藤原道長の名前をスグに忘れるのかと友人に聞かれたけど……。


歴史上の藤原姓の人、多過ぎでしょ。


しかし、テーベ王国の国王の名前は、古代エジプトの王のような名前だね。


テーベ王国は、即位したときに、由緒正しい古代の王の名前に変えるのだそうだ。


なるほど、似たような名前になる訳だ。


200年経っても戦争が終ってないよ。


負けが込んで、存続の危機になったミケナ王国は、それまで敵だったアトランタ王国や、フィニカ王国と同盟を組んだらしい。


そこで、午前中が終った。


試験で赤点取る自信……アリアリだよ。


昼食の時に、セアンさんが都合が良いときに部屋に来てほしいという伝言を、侍女さんに頼んだ。


昼食を終えた。


今日は、アイルが時計の部品を作るらしいので、ウィリッテさんも、カイロスさんも、アイルの方に行ったよ。


部屋に戻ると、助手さん達が集ってくる。


昨日作った磁石を使って、海岸や河原の砂から、砂鉄を集めることを伝える。


作業自体は、館の使用人の人達に行なってもらう。


助手さんは日替わりで、作業の監督と監視、集めた砂鉄の管理をしてもらう。


作業は午後だけなのかを聞いたら、専属なので、1日作業しても良いのだそうだ。

それなら、明日の朝から活動してもらおう。


今日は、炭焼きかまをどうやって作るかの相談だ。


私には、この世界で出来ることと出来無いことの区別が付かない。


炭焼きを大々的に行なうとすると、炭焼き窯は、魔法と無関係に、この世界の技術で作れないとならない。


助手さん達に、いろいろ聞いていく。


陶器を焼くときにはどうしているのか。

空気を送り込みながら、粘土を固めたものを木材といっしょに焼く。


青銅を作るときにはどうしているのか。

空気を送り込みながら、鉱石を木材といっしょに焼くと熱い液体ができるので型に入れて冷す。


木材から炭を作ることはないか。

聞いたことが無い。木材が焼け残ったものが炭ではないのかと言われる。


不要品を燃やして処分することはしないか。

野焼きする。


……焼却炉なんてないんだね……。


食べ物を煙で乾燥することはないか。

それ、何ですか?と逆に聞かれてしまった。

やはり燻製は無いのか。ベーコンも無いみたいだものね。


今度作ってみようかな。


…………


うーん。酸素の流入を阻害した状態で加熱するというケースは皆無だ。


陶器を焼く窯の素材について聞くと、粘土を焼き固めたレンガを積み上げて作る。


レンガは有るのか。


レンガを積み重ねて、粘土で目張りするか。いや、最初から粘土を固めて窯を作るか。


そんな話し合いをしていたら、セアンさんが、新しい花を持って来てくれた。


ちょうど良かった。木炭を作る原理を説明しておこうか。


実演した方が良いかな。


どこでやろうか。火を使っても良い場所はどこだろう。

試験管を作って、ここで、灯明に火を点けてあぶってみるか。


助手のキキさんに、灯明と、厨房の薪を少し削って持ってくるように依頼した。


私の部屋から出られる外に砂があったので、それを拝借して、シリカを作り、試験管を作った。


試験管を作ったはずだったのだが……。フラスコと試験管の間の子のようなものができた。


なぜ、あれほど使いこなしていた道具が再現できないのだ……。


まあ、いい。これが最適な形かもしれない。うぅぅぅぅ泣きそうだ。


ほどなく、灯明と削られた薪が届いた。薪は適当な大きさに折って、試験管モドキの中に入れてもらう。


灯明に火を点けて、助手のジオニギさんに焙ってもらう。


少したつと、白い煙の様なものが薪から出てくる。水だね。


その後は、青灰色の煙が出てくる。木ガスかな。


そのうち何も出てこなくなった。ジオニギさんにはしばらくそのまま加熱をお願いする。

少しずつ、表面が黒っぽくなってきてるな。


まわりの助手さん達は真剣に見ている。セアンさんも興味津々で見ている。


少し時間がかかりそうなので、セアンさんに、成長が早い木が無いかを聞いてみる。


炭焼きのために、木を伐採したあとで植林しないと、森には木が無くなってしまうからね。


セアンさんの話では、1年ほどで、大人の腕ぐらいの太さになる木がある。


薪を取るために植える。3年ほどで、大木になるので、切り倒して薪にする。


その名も「薪の木」だって。


すると、薪を木炭にするのが良いのかな。


フラスコモドキの中は、すっかり黒くなっていた。ほどよく炭化したところで、火を消して、試験管フラスコモドキを魔法で冷す。


石英はヒートショックに強いね。皹など入らない。


中身を外に出して、炭を見せる。折って入れたままの形で木炭になっている。


「これが、木炭です。空気を循環させないで加熱すると、水などの蒸発する成分がなくなり、熱で壊れるものは壊れて、炭だけが残ります。

上手く、空気を遮断して、加熱する方法が必要です。

そして、『鉄』を作るためには、木炭が大量に必要になります。

木炭をどうやって作ったら良いかいっしょに考えましょう。」


この私の発言で、私が助手さん達に質問していた意図が解ったみたいだ。

助手さん達が活発に意見を出してくれる。


ここから先は、私ができることはあまりない。


アイルの機械みたいに一品物でも良ければ、オーバーテクノロジーもありかもしれない。

でも、炭焼きは、この世界の人達が実施できるものじゃなきゃ意味がない。


議論にに対して、私は、少し意見を言うぐらいだ。

大学のときのゼミを思い出して少し懐しくなった。


セアンさんに、炭焼きの小屋を建てるられる場所が領主館の敷地内にあるか聞いてみた。

領主館の敷地の中に、野菜を栽培している農場がある。そのうちの何区画かは、休耕地になっている。そこなら使っても良いのではないかと言っていた。


アウドおじさんにお伺いを立てないとだね。


みんなで、わいわい方法を話ていたら、アイルが訪ねてきた。


硬い結晶が欲しいと言う。時計の歯車の軸受や、振り子の支持部分に使いたいんだって。


偶々(たまたま)、目の前に、木炭があったので、ダイヤモンドだったら、アイルにも作れるんじゃないかと提案してみた。アイルは、アルミナの方が良くないかと言っていた。そりゃ、作れるんだったら、それも良いと思うよ。


アイルに作り方を説明した。しばらくアルミナ作りにトライしていたけど、早々に諦めたみたいだ。


ダイヤモンドは、時間がかかったけど、成功した。


沢山作りたいと言うので、アイルと一緒に来た助手さんに、厨房から薪を持ってきてもらって、アイルが炭に変えられるか見てあげた。何とか出来るようになった。


これで、好きなように作るが良いぞ。


こちらの議論は段々形になってきて、案が3つに集約された。


一つめはレンガで、部屋を作り、粘土で目張りする方法。


二つめは木造の部屋を作り、粘土で目張りする方法。


三つめは、地面を掘って、上から土を被せてその上で火を焚く方法。


助手さんが、6人いるので、二人ずつで、それぞれの方法の善し悪しを確認してもらうことにした。


バルトロさんを呼んで、明日からの作業について説明した。


砂鉄の採集をすること。炭焼き窯を建設することを伝えて、使用人さんの手伝いをお願いした。


夕刻になって、アウドおじさんに、野菜畑の休耕地に炭焼き窯を設置する許可を貰った。


今度は何をするのかと聞かれたので、木炭を作ると伝える。


明日から採集する砂鉄と、これから作る木炭が、鉄の原料になると言うと、嬉しそうだった。


ソロバンの売り上げが好調で、他領からも注文が殺到しているらしい。


随分と領にお金が入ってくるようになった。


鉄もアトラス領の発展に寄与すると期待しているみたいだ。

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