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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
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24.剣と防具

朝になった。


目覚めると、昨日と違った花が花瓶に生けてある。

ふふふ。嬉しいね。セアンさんありがとう。


昨日の夕方の蒸し料理も美味しかった。やっぱり美味しいは正義だね。


今日は、午前中の教育の後、午後から、ソドお父さんの要望で、鋼の剣を作ることになっている。


うーん。これって、私は要らないんじゃない?


私の参加は、アイルとソドお父さんの希望で必須になっているらしい。何故だ?


午前中は、昨日の続きの歴史だった。


アトランタ王国は、北と東に領地を増やしていった。北には山脈があって、その中にある岩山の洞窟で、初めて、魔物と出会ったらしい。


お爺様が、魔物との戦いで命を落したというのは聞いたことがある。アイルのお爺様も一緒に命を落したらしい。


そんな訳で、魔物は、人類の敵らしいのだが、どんなヤツなのかは知らない。ウィリッテさんに、魔物について聞いてみた。


目が三つ。足が六つ。尻尾は無い。獣の様な生物というのが基本敵な魔物の姿らしい。


そもそも目が三つある段階で、地球型の生物ではないな。


目は二つあれば、距離を検知できて、視角と組み合わせれば、対象の空間的な位置が分る。

そんな理由から、視覚の感覚器としてなら目は二つで十分だ。三つ目の目は何のために有るのだろう。


地球の蛇は、二つの目の他に、幾つかの赤外線を検知する感覚器があると言われている。三つめの目はそういった役割なのだろうか。


そして、足が六つある獣型の生物は地球には居ない。カンガルーは尻尾が足だという話はあるが、基本、手足全てで4本だ。これは進化の過程で、地上に上った両生類の生物のひれ兼足が4つだけだったんだろう。


6つの生物は地球では地上に上らなかった。

ん?そもそも地球にも居るのか、足が6つの生物は。

昆虫は6本足だったな。

大型の昆虫なんて……。いやだな。


これらから推測できるのは、魔物は、地球外生命体である可能性が高い。


まぁ、この仮説は、アイルが、ここは地球じゃないと言ったからなんだけど。


使用しているアミノ酸種や、遺伝物質を調べるといろいろ分るかもしれない。

まぁ、しばらくはというか、私が生きている間には、無理っぽいけど。


ただ、この惑星で生命が仮に進化したとして、どうやって、あのスーパーノバの影響下で生き残れたんだろうか。


そんなことを考えていたら、ウィリッテさんが、魔物について、知っておかなければならない大切な事を教えてくれた。


魔物は人や家畜を食べるが、魔物は食用にならない。


魔物を食べた人が居たんだ。その方が驚きだよ。

食べると、体調が悪くなる。下手をすると死ぬ。


即効性の毒ではないんだ。ということは肝傷害とかで死んだのかな。

この世界では、そういった事は分らないよね。


そういったことが研究できるようになって、魔物の死体でも手に入れられたら研究してみたいかもと思っただけだけど。


次回は、東部大戦についての話になるというところで、午前中は終った。


他にもいろいろ説明してくれていたみたいだったけど、魔物の話で頭の中が一杯になって終ってしまった。


昼食の時、アイルが、


『ソドおじさんの剣なんだけど、素材は、鋼とステンレスとどっちが良いと思う?』


と聞いてきた。


うーん。ステンレスは錆びないからねぇ。錆びない剣って、この世界だと、それなりに優位性というか、特権的ななにかっていうか、そんなものが有るんじゃないだろうか。

まあ、単に錆ないから、便利なだけってことではあるんだが。

異世界転生物で、錆びない魔剣なんてのが有ったような気がするが、魔剣じゃないしな。


『比重が多少違うし、剣の形やバランスにも依るから、何とも言えないなぁ。実際、鋼とステンレスで作ってみてから決めたら。色目だけで言うと、ステンレスの剣を欲がりそうではあるけど……。』


という事で、今回の作業場所へ、剣何本分かのステンレスのインゴットを運んでもらうことになった。


ソドお父さんの指示で、ニカンドルさんがやってきた。ステンレスのインゴットを必要な量運んでもらった。度々で申し訳ないね。


作業場所に行くと、アウドおじさんの他に、ソドお父さん、副騎士団長のグラジアノさんや、警務団長のエンゾさんが居る。その他に何人もの騎士の人達が居た。みんな、新し物好きで、鉄の剣を見たいんだろうな。


それと、何やら色々なものが運び込まれているね。打ち込み用の道具だろうか。


アイルが、ソドお父さんの剣を重量計の上に載せて重さを量ってもらう。


私は前世で剣道をやっていた。ちなみに恭平は空手だ。二人とも有段者なんだけど、私は二段になっていた。恭平は大学ではやめてしまって、初段だったかな。

私は、道場で真剣を振ったこともある。


この世界の剣は、柄の部分まで全て金属で出来ている。


日本刀みたいに、柄を木で作って、目釘で止めるという構造はない。

硬いものに打ち込んで手が痛くならないんだろうか。


お父さんの剣は、日本刀と比べると、太くて長い。


切るというより打撃を主体にしているみたいだね。


青銅は鉄より柔らかくて粘りがない。

青銅は、硬くすると脆くなるので、ほどほどの硬さにして、曲ったり、折れたりしないようにしているんだろう。


日本刀はどちらかというと切るという方を重視している。


アイルは、同じ重さの鋼をインゴットから分けて、相似形の剣を作って、お父さんに手渡した。


青銅と鋼だと、鋼の方が比重が小さいので、少し大きめになっている。お父さんに素振りをしてもらう。


あの大きさの剣を振っても体幹はブレないし、いい音をさせている。流石だね。


「どうです、重さを同じにして、同じ形にしたために、少し長くなっています。違和感があるかもしれませんが。」


「いや、ほとんど違和感はない。それより、剣先が全然ブレないな。」


ふぅん。この剣の青銅は折れないように、少し柔らかめなのかな。剣が折れると生死にかかわるからなぁ。


剣先がブレるって、どんだけの速度で剣を振ってるんだろう。さすがムキムキマッチョだね。


お父さんの剣が置いてあったので、良く見てみた。

刃らしい刃が無いね。刃があっても良いところは、細いけど丸くなっている。

きっと刃を作っても刃こぼれするか潰れてしまうんだろう。


「こうなると、威力を試してみたくなるな。おい、人型ひとがたを持ってこい。」


まわりにいた騎士さんに、お父さんが命令する。なるほど、新しもの好きというよりは、手伝いに呼ばれたんだね。


人型というのは、十字に組んだ木材の要所に青銅の板が付いている。防具かな。


お父さんの前に置かれた人形に、剣を振う。ザンという良い音がして、防具ごと木材が切れ飛んだ。


アイルはちゃんと刃を付けていたみたいだね。いい仕事しているよ。


「切れた!」誰かが叫んだ。


まわりの人が驚いている。


やっぱり、青銅の剣は、切るものじゃなかったんだね。日本刀みたいな刃が付いてないもの。

魔物とかは、殴り倒してたんだろうか。


なんか、お父さんは固まってるな。一番驚いているのは、お父さんかもしれない。


「な、な、な、なんだ、これは」


「包丁を見て、剣が欲しいと言っていたので、切れるようにしたいのかと思ったんですが。ニケ、ちょっと来て。『刃毀れ』してないか見てくれない?」


呼ばれたので、お父さんの剣を見る。うん。大丈夫みたい。刃毀れも潰れもないみたいだ。


「大丈夫だね。『刃角度』も良かったみたいだね。」


ふたりで、よかった、よかったと頷いていたら、まわりは大騒ぎになっていった。


切れた人形を見ていた騎士さん達が報告している。


「防具も切れて、真っ二つになってます。」


「木材も、綺麗に切れてます。」


しばし、呆然としていたお父さんが、


魔物型まものがたを持ってこい。」


と言うと、わらわらと騎士さん達が散った。人型より大きめの6本足のものを運んできて、お父さんの前に置いた。


さっきの人型とは違って、皮のようなものが全体を覆っている。


お父さんは、構えてから、剣を振った。

バシュッという音がして、足の1本が切れ飛んだ。


もう、誰も驚かないかなと思ったら、騎士さん達は、目を見開いて固まっている。今度は声が無い。


しかし、お父さんは、どんだけの威力で剣を振るっているんだ。


切ったお父さんが一番驚いていた。


「これも……、切れるのか……。」


切れ飛んだものを見たら、けっこう厚い皮の内側は、なにかが詰っていて、中心には、骨のようなものがあった。


「お父さん、これは何なの?」と聞いてみた。


魔物型は、実際の魔物の皮と骨を使った魔物の剥製みたいなもので、剣を振るって、魔物の骨を折ることができるかを確認するための道具らしい。

魔物の骨を折ることができれば、一流の騎士になった証になる。


やっぱり、魔物は殴り倒していたんだね。


首を切ったら、魔物も死ぬんじゃないかな。頭があるかどうか知らんけど。目があるってんだから、頭もあるんだろう。殴り倒すよりは絶対に簡単だよね。


「うーん。これは戦い方を変えなければならないかもしれない。」


しばらく考え込んでいたお父さんが、私達の方に向って、


「防具の方も試してみたいんだが、アイル様、防具もハガネで作ってみてもらえないか。」


と言った。それから、お父さんは騎士の人達に指示して、防具を持ってこさせた。

ふーん。簡易的な鎧だね。帽子のような兜と、関節を守るための青銅の板でできている。

さっきの人型に付いていたのと同じもののようだ。


アイルは、同じ形のものを鋼でコピーしていく。出来上がったものを新しい人型に騎士さん達が取り付けた。


騎士さんが持ってきた青銅の剣で、父さんは、人型に切り付けた。

パンという音がして、青銅の剣が折れた。折れた剣は、父さんの剣よりは若干細い剣だった。防具の方は、少しスリ傷が付いたかな。


まわりに居た騎士さん達が、防具の状態を確認している。みんな目が真剣だよ。そりゃぁ自分達の命に直結しているんだから、真剣にもなるか。


「アイル様、騎士の武器を鋼で作ってはもらえないだろうか。」


「防具の方は、それで良いとは思いますが、剣の方は、それで良いんですか?

あと、そこにある厨房用品を作った金属もありますよ。

ニケに聞かないと分らないんですけど、多分そちらも硬くて強いと思います。

それに錆ないですし。」


「えっ、この金属は錆ないのか?」


「それはそうよ。お父さん。だから水を使う厨房用に作ったんだから。多分、ハガネよりステンレスの方が、強いと思うわ。あとは、切ることを主体にする武器を作るんだったら他の形の剣もあるし。」


とりあえず、お父さんの剣をステンレスでも作ってみた。刃毀れしても簡単に直せるので、鋼の剣にステンレスの剣で打ち込んだり、ステンレスの剣で鋼の剣に打ち込んだりしてみてもらった。

ちなみに、青銅の剣で打ち込むと簡単に折れるか曲ってしまった。


ステンレスと鋼は、青銅の剣の様に折れることは無かったけれど、ステンレスの方が刃毀れは無かった。まあ、厳密に見なければ、どちらも遜色は無かったんだけどね。


それからは、素材の余裕のある鋼を使って、いろいろな形の剣を作っていった。

私も剣士のはしくれだったので、刀剣のあれこれはそれなりに詳しい。


お父さんの剣は、ツバイファインダーという感じの両手剣だったので、片手剣のサーベルとか、レイピアとか、剣というよりは、斧のようなハルバートとか。


日本刀も作ってみた。まあ、作るのはアイルにおまかせだったんだけど、私が形や大きさを指定して作ってもらった。


あれこれ作っているうちに、倉庫の中も外も騎士さんだらけになってきた。あまりに人数が増えたので、どの様式の剣も10本ぐらいずつ作って、騎士さん達に試してもらった。


日本刀を気に入った騎士さんもいた。ただ、その振り方だと切れないよ。


仕様が無い。日本刀の振りかたを教えてあげた。私はまだ前世の様には体を動かせないけど、日本刀の振り方は伝わったみたい。それからはいろんなものをスパスパ切っていたな。


どうやら、お父さんはその様子の一部始終を見ていたみたい。


「ニケの剣筋は、見たことのないものだな。一体どこでそんな事を知ったのだ?」


と聞かれたけど、笑って誤魔化したよ。


収拾が付かなくなりそうだったので、お父さんと相談をした。


お父さんは、騎士団全員に鋼の剣と防具が欲しいと言っていたけど、騎士って何人いるんだ。

聞いたら1000人以上いる。


そりゃ、材料があれば作っても良いけど、この青銅器文明のなかにあって、この領地だけ異常なことになるよ。


お父さんと、副騎士団長のグラジアノさん、警務団長のエンゾさんには、ステンレスの剣と防具。ステンレスを作るにはクロムが必要だしね。やっぱり偉い人の装備は特別な方が良いだろう。


他の重要な役割をしている人達には、希望を聞いて鋼で剣と防具を作るということを提案した。


それでも、お父さんは、騎士たちの命が掛っているのだからと言って譲らない。


困ったね。そんな大量の剣や防具を私達が作って、さらにメンテナンスなんか依頼されたら、幼児なのに対応に忙殺されてしまう。

そんなのはゴメンだ。そんな事に忙しくするぐらいなら美味しいものを開発したほうが何万倍も良いよ。


ここは、領主様に相談だな。


「アウドおじさん。ここで、私とアイルが騎士様達の剣を作ってしまったら、領地の鍛冶屋さん達が困ったことになりませんか?」


「確かにそうだが、領地の鍛冶屋は青銅の武器しか作れない。」


「じゃあ、領地で鋼を作れるようにすれば良いじゃないですか?」


「そんなことが出来るのか。」


「ええ、少し時間が掛るけれど、出来ますよ。それに、領内で鋼や剣や防具を作れるようにしないと、鍛冶屋さんの仕事が無くなってしまいますから。

そして、私たちしか騎士さんの剣や防具が作れなかったら、私もアイルも騎士団員の武器の作成や補修ばかりしていることになっちゃいますよね。」


領主様は少し考えて、ソド父さんに話し掛けた。


「なあ、ソド。アイルとニケに騎士団の剣や防具を作らせ続けるのは、いささか不味い話だ。

アイルもニケも、領地でハガネを作るための算段があるというのだ、少し待ってみてはどうだ。

今回は必要最低限のハガネ製の武器を作るようにしてくれないか。」


領主様の言葉で父さんも納得してくれた。


これから、アイルが剣と防具を作ることになった。

そういえば、厨房用品も作るんだっけ。アイルは大変だね。私は材料が無くなったら手伝うけど、それまではこの件に関してはやることはない。


それより、言ったからには、領内で鉄を作る方法を考えないとだな。

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