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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
31/370

23.トマト

朝目覚めた。


昨日の夜は気付かなかったが、部屋の花が変わっていた。


侍女さんに聞いたら、毎日花を持って来ますとセアンさんが言っていたそうだ。

ふふふ。毎日の楽しみが増えたね。


昨日の夕ごはんは大好評だった。


また、何か作ってもらうものを考えよう。パイなんかを焼けたら良いのだけど、かまどしか無いんだよね。大体、料理と言っても、火に晒して焼くか煮るしか無いみたいだから。

それでも、ステンレス製の鍋やフライパンを作ったから、料理の種類を増やすこともできるだろう。


今日は、午前中は教育。


午後アイルは、グルムおじさんの依頼で重量計を沢山作ることになっている。私はお休みだ。何をしようか。厨房担当の侍女さんと新しい料理の話をしても良いかもしれない。


朝食を食べて、アイルとアイルの部屋に行く。カイロスさんもやってきて、ウィリッテさんも来た。


教育の方は、今日からしばらく、歴史の話を詳しくしてくれる。


以前聞いたのは、地理の話のついでで聞いた話だったし、この世界の数が12進数だとは思わなかった頃の説明だった。多分○○年前という説明も、私が思っていたよりずっと数字は大きいはずだ。


最初は、今から3000年以上前に、「神々の戦い」によって、他の国々が滅ぼされてしまうところからだった。


アトランス島は、貿易で成り立っていた国だ。東西南北の交通の要衝で、周辺の国と比べ裕福だった。ガイア神を主神とする宗教を信じていた。南の国が太陽神を、東の国が創生の神を、北の国が様々な神を信じる沢山の国があった。皆、別々の宗教を持っていた。


そして、その日、ガイア神を信仰していたアトランス島に居た人を除いて、全ての人、国が滅ぼされてしまった。


南の国があった大陸は、見えなくなってしまった。


その後、アトランス島の住人達は、御互いに協力して、蓄えていた穀物の種を育て、しだいに生活が安定していった。


3000年以上前のことだと、地球だと中国の殷とか周の時代、メソポタミアはバビロニアの時代、アーリア人にインダス文明が滅亡させられた頃、エジプトだとツタンカーメン王とかの頃じゃないのかな。古代文明真っ盛りだよ。


そんな昔の話は神話みたいなもので、どこまで本当でどこからがフィクションなのか分ったものではないな。大体は、自分達のところを良く伝えることが多い。


アトランタの戦いで、最初のアトランタ王国の国王が即位したところで午前中が終了した。


昼食を食べたら、アイルとウィリッテさんとカイロスさんは、作業場所に行くので、私だけ領主館で別行動だ。


昼食のあと、自分が泊まっている部屋に一旦戻る。

そこに、ユリアお母さんとグラナラ家の厨房担当の侍女のテレスさんが部屋を尋ねてきた。


お母さんはともかく、侍女のテレスさんが領主館に来た理由を聞いた。

昨日の夕食があまりに美味しかったので、テレスさんに調理方法を学んでもらうんだって。


昨日の料理の感想を聞くと、パスタをとても気に入ったようだ。スープと小麦粉の歯応えの良い食感が合っていて良かったらしい。


ハンバーグもチーズを入れてもらったので、肉の旨味とチーズの香りがとてもよかったと言う。


そして、知らなかったことなのだが、お母様は、ずっと手掴みでなく食べられる方法が無いかと思っていた。

手は汚れるし、ちょっと気を抜くと衣装に食べ物の油が付いてしまうのが、とても嫌だったそうだ。


あの、刃がいっぱいついているものに食べ物を差して口に持っていくのはとても良かったと言っていた。


「あれは、ニケちゃんが考えたんですってね。素晴しいわ。」


うーん。あれは、私が考案した訳でもないのだが。


「でも、作ったのはアイルですから。」


と謙遜しておく。


「でも、スープスパゲッティも、ハンバーグもニケちゃんの指示で作ったと聞いたわよ。」


昨日の食事は、知らぬ内に、私が考えたことになっているらしい。プロデュースしただけだよ。


お世話をしてくれている侍女さんが、ジュースを持ってきてくれた。

三人で、ジュースを飲みながら、お茶会みたいなものを始める。


他に、何か料理は無いのかと言われて、いろいろ話したよ。そもそも、それ、実社会経験の無い、幼児に聞くことなのか?


話していて、昨日のパスタに引き摺られて、思い着く料理がイタリアンになっている。うーんやっぱりトマトソースが食べたいな。


生まれてから、多分、何度か聞いていることなんだけど、再度聞いてみる。


「最初は緑色の実で、熟すと真っ赤になって、酸っぱい味のする汁が沢山入っている実がなる野菜を知らないかしら。その実があると、パスタはもっと美味しくなるんだよ。」


お母さんには何度か聞いているのだが、パスタの話が出たので、かなり真剣に考えてくれた。


テレスさんには聞いたことが無かったので少し期待してみたのだが、見たことが無いという回答だった。やはり、果物じゃないかと言っている。


思い付く果物の名前を聞いてみたが、甘い果物ばかりで、トマトとは全然違っている。


ナスはあるのに、トマトは無い。トマトって、ナス科の植物じゃなかったっけ。

がっかりだよ。この世界にはトマトは無いのだろうか。


この世界は色々なものが無いのだけれども、お茶も無い。こんな風に女性が何人か集まったら、ジュースを飲むんじゃなくて、お茶を飲みながら、お菓子を食べてお茶会をするものじゃないんだろうか。


この世界の飲み物は、水か、果汁を絞ったジュースか、お酒だ。お茶もコーヒーも無い。


あとは、竹も無いみたいだ。この前、庭を見せてもらった感じでは、桜の木も梅の木もなさそうだ。無いものを探していったら、けっこうあるだろう。


鉄やステンレスも当然無かったんだけれど、そういったものは作れば良いんだよ。


でも、植物由来のものは、植物が無いとどうにもならない。


私的には、他の無いものは無くても良いけど、トマトだけは、無いのが悔しい。


三人ともジュースを飲み終えたので、厨房に移動する。


厨房では、テレスさんをお母さんが紹介した。


その間も、なぜか、皆の目は私の方を向いている。


ん。何ごとだ。


テレスさんの紹介が終った。


その途端に、パスタ料理のバリエーションや、挽肉料理のバリエーションについて質問攻めになった。


厨房担当の侍女さん達は、昨日の料理の評判がすこぶる良かったからと言って、毎日同じものを作って出す訳にはいかないんだろう。


パスタは、フライパンで、オリーブオイルを使って炒めても良いし、ホワイトソースを絡めても良い。挽肉を炒めて、ソースで甘辛くしたものをパスタに掛けて出しても良い。


ナスと豚肉をオリーブオイルで炒めて、パスタを絡めても美味しい。


ベーコンってないのかな。いろいろ説明したけど、解ってもらえなかったよ。


挽肉は、野菜で巻いて、煮ても良いし、それをスープと煮込んでも良い。


小麦の皮を作って、挽肉を包んで、パスタの様に茹でてもいいし、焼いてみても良い。


ふと、挽肉のピーマン詰めを思い出したが、ピーマンも無いのかな。うーん。見たことが無い。


そんな風に、料理のバリエーションを伝えると、侍女さん達も、こんな風にしたらどうか、あんな風にしたらどうかと盛り上がっていく。


うん、うん。やっぱり料理は、料理が得意な人に考えてもらうのが一番だ。


挽肉を小麦粉の皮で包んで焼く話をしていて、そういえば、焼売しゅうまいは、蒸し料理だったなと思いだす。


昨日、アイルに、蒸し料理を作るための厨房道具を頼んでいなかったな。


竹が無いから、簡単に蒸篭せいろは作れないな。


寸胴があるのだから、寸胴の中に足付きのステンレスの網を入れて、寸胴の中で蒸すのはどうだろうか。


うーん、形はイメージできるんだけど、私の変形の魔法で、どうにかできるだろうか。

アイルは、まだ戻ってきていないから、頼めないし。


どうしよう。


ステンレスのインゴットはまだ大量にあるから、私が形を作れさえすれば、蒸し料理の提案もできるなぁ。


どうしよう。


まあ、やってみて、ダメだったら、後でアイルにどうにかしてもらおう。


ステンレスの使いかけのインゴットの前で、変形の魔法を使ってみる。


網に4つ足が付いたものをイメージして、えぃ。


目の前には、網の足が4つ複雑に絡みあったものが出来上がった。


そうじゃなくて、上部には平らな網があって、えぃ。


今度は、目の前に、網の足の上に平らな板がある椅子の様なものが出来上がった。


そうじゃなくって、上部の板は餅焼き網の様な形になって。えぃ。


何故、七輪の様な物の上に網が乗っている?


何回やり直しても、元々思い描いていた形にならない。というよりどんどん悪化していく。


その頃には、盛り上がっていた侍女さん達が静かにこちらを見ているのが解った。

この子は何をやっているんだろうという、お母さんと侍女さん達の視線が。


痛い……。


そんなところにアイル達が帰ってきた。


「あれ、ニケ。何やっているの?」


周りの目を気にせず、アイルに、日本語で話しかけた。


『アイルゥ。私寸胴の中に蒸し器を作ろうと思って、寸胴の中に入る、足が4本ある網を作ろうと思って。

変形の魔法を使ってみたんだけど、上手くいかなくて。

どうにかしようと思ったら、どんどん酷くなっていって。

修正しようとしたら、全然違うものが出来てきて。

もう、どうすれば良いのか分らなくなってきて……。』


情けないことに最後は涙声になってきた……。


『寸胴の中に、蒸し器を作りたいんだね。蒸すのだったら、網は細かい方が良いんだよね。』


とアイルが言った瞬間に、前衛芸術みたいな私の作品が、4本足の付いた網に変わった。


完全に打ちのめされてしまった私に代わって、アイルが説明をしてくれた。

寸胴の中にこの網付きの物を入れて、水を少し溜めて、沸騰させると、網の上にある食材が蒸されて調理できるということを説明してくれた。


アイルが作った網は、寸胴のサイズぴったりだったよ。やっぱり私には変形の魔法は向かないことが嫌というほど解った。


侍女さん達が、蒸すと出来る料理を聞いてきたので、豚の挽肉と野菜を切り刻んだものを混ぜて、それを小麦粉の皮で包んで蒸すとか、野菜の代わりに海老混ぜても良いとか、それをスープに入れても美味しいとか、いくつかの例を教えてあげると、また、侍女さん達が盛り上がっていく。


今日は、その蒸し料理を作りたいと言うので、小麦粉の皮の作り方と、それに包む餡の作り方を伝えた。多分、私を気遣ってくれているんだろう。みんな優しいね。


もう、厨房では夕食の準備をしなければならない時刻になったようで、私達は、屋敷内の広間に移動した。


そこで、アイルの今日の成果を聴きながら時間を潰していると、夕食の時間になった。


今日は、焼売や、水餃子、焼き餃子など挽肉料理が並んだ。


焼売は、辛めにした魚醤を付けて食べた。


美味しかった。アイルも、私とアイルの両親も、今日もまた何故か居るグルムさんの家族も美味しいと言って食べていた。


この調子で、新作料理が並ぶかぎり、グルムさん一家は、夕食を一緒に食べるのだろうなと思った。

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