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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
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22.パスタマシン

朝から、ニケはそわそわしている。


そう言えば、昨日、何か言っていたような気がする。

ステンレスが出来たから、次は、キッチン用品を作るとかなんとか。


昨日は、重量計を作るのと、単位を制定してもらうための打ち合わせに忙しくて、覚えていない。


マズい。


絶対、ヤバい状況だ。


午前中は、ウィリッテさんの授業があった。なんか久々の様な気がする。

少し振り回しすぎだっただろうか。


内容は、五大王国以外の国の場所や産業の話だった。中央砂漠のあたりには、遊牧民族も居るんだね。


地球と似ていると言えば言えそうな感じだ。タクラマカン砂漠周辺という感じかな。


昼食になった。


しきりに、厨房用品とカトラリーを作ってくれとせがまれる。


何を言われていたのか忘れたとは口が裂けても言えないので、了承しておく。


カトラリーって何だっけ。


カトラリーて何か聞くと、軽蔑したような目で、ナイフとかフォークのことだと言われた。


だったら、ナイフとかフォークとか言えよ。

食事するときにつかう道具のことか。


あとは、調理器具とパスタマシンとミンサーが欲しいと言われた。


パスタマシン?


ミンサー?


何それ?


厨房に移動すると、山のようなステンレスのインゴットがあった。どんだけステンレスを作ったんだよ。

そもそも、どうやってここまで運んだんだ?


聞いたら、昨日来ていた騎士見習いの人に運ばせたらしい。


騎士団長の一人娘の依頼だもんな。


断われなかったんだろう……。


ニケは、『パスタ、パスタ、ハンバーグ』と変な節で繰り返し歌いながら踊っている。時々、『海鮮パスタ、ハンバーグ』に歌詞が変わっていた。


オレは、不味くなければ、別に何を食ってもかまわない方だ。

ここの食事は美味くはないが、別に不味くもないので、どうでも良かった。


ただ、ニケは、きっとパスタとかを食べたかったんだろうなと思う。

昔から、あちらこちらに行っては、何が美味かったとかしきりに話をしていたから。


そう言えば、こちらに来る直前に、杏樹をイタリアンレストランに誘っていたことを思いだした。

あのまま、そこまで行くことが出来ていれば……。


この世界には、木製のスプーンと青銅のナイフぐらいしかカトラリーらしきものは無い。

基本手掴みで食事をするのだから、要らないと言えば要らない。


スープは暖いけれど、他はだいたい冷めたものを食べている。


熱々のステーキなんて出ることは決してない。


火傷してしまう。


ナイフとフォークがあれば、そういったものも食べられるということなのだろう。


墓穴を掘りまくりそうだったので、丁寧に何が欲しいのかを聞いていった。


おぼろげにしか記憶にない、食事用のナイフとフォークを作ってみることにした。


ナイフの先は、ギザ付きなんだっけ?


フォークの刃は3本か?4本か?


スプーンは必要なのか?


ニケ様に教えを乞いながら、作っていった。

曲線の多いものを作るのは、結構大変だった。試行錯誤することになる。

ニケにあれこれダメ出しされながらの作業になった。


最後にはいろいろ慣れたけど。


どうやら、このあと、スープスパゲッティを作るらしい。

スプーンは必須だと言われた。

大人用100セットを作って、子供用のも10セット作った。


流石に、地球の一流レストランみたいに、皿ごとにナイフとフォークを取り替えるなんてことは無いだろう。

一人分に何種類もナイフやフォークを作らなくても良さそうだ。

味が混じるとか高尚な事は、流石に、きっと、誰も言わない。

これまで手掴みで食事しているんだから。


別にオレは手掴みで食事することが悪いとも何とも思っていないけれど、熱々のステーキなんてものも時には食べたいと思う。


手で食事をする人も地球にはかなりいるらしい。

南アジアの人達は、器用に手で食べているそうだ。

ただ、世の中にフォークやナイフが無い訳じゃないので、必要に応じてそういう人達も、きっとフォークを使ったりするんじゃないか?


この世界だと、それらは完全に無いのだから、手で食べられるものしか作られない。


ニケは、こちらに口出ししながら、厨房の調理担当の侍女さん達に、あれこれ指示をしていた。


その後、寸胴、片手鍋、フライパン、包丁、杓文字などなど、言われるがままに、あれこれを3、4個ずつ作っていった。


問題なのは、パスタマシンとミンサーだな。


なんだ、それは?


パスタマシンがどういうものかを聞いたら、心太ところてんを作るようなものらしい。

ただ、心太と違って、かなり硬いものを押し出すことになるようだ。

捩じ込みネジとハンドルを作って押し出せるようにした。

穴の径が異なる、多数の穴が空いた板を何種類か作って、出来上がりの太さを変えられるようにした。


とりあえずの動作確認のために、適当に捏ねた小麦粉を利用した。

実際に食べるものは、大切に寝かしてある。


穴をネジみたいに螺旋型にしたら、ネジネジの見覚えのあるパスタになった。

良く見るんだが……名前は……知らない。


問題はミンサーだった。

ようするに、挽肉製造機ということらしい。

肉を刻みながら、押し出さなきゃならない。

肉を切り刻む部分と、押し出すためのスクリュー押し出し機構を連動させて動かせるようにしてみた。

何度か形を調整して、上手く押し出しができるようになった。


ウィリッテさんも、カイロスさんも、興味津々でオレの作業を見ている。

ニケが、侍女さんへの指示なんかで忙しそうなので、オレにいろいろな調理器具のことを聞いてくる。

自慢じゃないが、オレは料理はしたことが無い。


大抵外食か、カップ麺が食事だったんだから。


随分昔に家庭科の授業で聞いていた知識でなんとか答えていた。


ミンサーが出来上がるころには、小麦粉を練ったものを休ませ終わったらしい。

それをパスタマシンに投入して、押し込んでいく。

機械の先のほうから、太めの腰のある麺が出てくる。なるほど、パスタってこうやって作るんだ。


出てきた麺を作ったばかりの包丁で適当な長さに切った。

ニケ曰く、これを乾燥させると、スーパーなんかで売っていたパスタになるらしい。

今回は、ニケが分離魔法で、水分を飛ばしていた。


ニケが料理をできるというのは、知らなかった。

過去、料理しているところを見たことがない……。


『ニケって、料理ができたんだね。』


と言ったら、微妙な表情をしていた。


『それは、得意な人がすれば良いんです。』


という返事が返ってきた。

化学実験と料理ってそんなに違わないような気がするのだが、この反応は何なんだ?


答えたがらなかったのだが、あれこれ聞いてみる。どうやら、料理をすると、予想外の事が起こって、上手くいかないらしい。


うーん、化学実験の方が危険で、予想外の事が起こりそうなのだが。


不思議な話だ。


実験室で消火器を使っても問題はないが、キッチンで消火器を使うとあとが大変などと言っていた。


キッチンで消火器を使う状況が思い浮べられない。何かを炒めていて火でも吹いたのか?

料理の話は、どうやら地雷らしいので、それ以上は止めておいた。


なんか変ったことを厨房でしているらしいとアウド父さんとソドおじさんがやってきた。

グルムおじさんも来ていた。昨日の話の続きがあるらしい。


新しい料理が提供されるらしいと聞いて、グルムおじさんは家族を呼びに行った。


もともと、侍女さん達にも振舞えるだけの準備をしていたようで、多少人数が増えても問題はないようだ。


ソドおじさんが、包丁に興味を示していた。


この素材で剣を作ってほしいと強請ねだられた。


ステンレスも鋼なのだが、剣を作るとしたら、炭素鋼とステンレスとどっちが良いのだろう。あとでニケと相談しよう。


夕方の鐘が鳴るころには、料理の下拵えが終っていた。かまどでは、海鮮スープが煮こまれていた。


しきりにニケは、パスタはアルデンテが良いと言って説明していた。今日は、食事に熱々のものが並ぶのだろう。


あとは、厨房の侍女さん達にお任せと言って、ニケとオレは、食堂に移動した。


グルムおじさんの家族もやってきていた。


食堂のテーブルに付いたところで、ニケが、ナイフとフォークの使い方を説明していた。

馴染みのないものだから、説明が必要だろうな。

ナイフを口に持っていってはいけないとか言っていたが、あまりテーブルマナーみたいな事を言っても誰も出来ないぞ。


そんなことをしていたら、スープスパゲッティとハンバーグが給仕された。

オレとニケはようやく臼歯が生えてきたので、普通のものを食べることができるようになっていた。

そうは言っても、咀嚼するのは一苦労なので、ハンバーグはとても有り難い。


ニケが器用に、フォークでスパゲッティを絡めて口に運んでいる。


ハンバーグにナイフを入れて一口サイズにして、フォークで食べる。


それを見様見真似で大人達が追随する。どっちが子供だか分らないなと思いながら食事を楽しんだ。


これまで食べたものと比べようが無いほど美味かった。


大人達も、目を輝かせて、美味い美味いと言いながら食べていた。


父さんが、


「こうやって、暖い食べものを食べるのは美味いものだな。」


と言っていたが、大人達は同じような事を口々に言っている。

これまで、冷めて固くなったものを食べていたので、そう思うのだろう。


食事の席で、パスタマシンとミンサーや厨房用品、カトラリーを各家に置くことが決まったみたいだ。


それって、オレが作るのか。材料はまだまだ沢山あったから、作れなくは無いが……。


食後、グルムおじさんから相談があると言われた。


今日、文官達で、今度の収穫の際にどうするかを協議したらしい。


今だに、小麦袋に小石や砂が混っていることがある。


そこで、納入商人が居るときに、穀物の袋を開けて、重量計の上に置いた容器に中身を入れて確認し、重さを量り、それを記録することにした。

さらに、再度一定の重量で袋詰めしなおして、それを保管することにした。


これで、不正は防げる上、収穫量も正確に把握できる。


人手は掛るのだが、数字と筆算のおかげで、文官の手数も随分と軽減されている。収穫の時に人員を増やすことは可能らしい。


そして、相談の内容は、重量計をさらに11台作ってほしい、穀物を計るための容器を作ってほしい、再度の袋詰め作業に便利な道具を作ってほしいということだった。


作業場所に、鋼はまだ大量にあるので、明日の午後、オレが作業することになった。ニケは作業場所に行っても、できる事がないので、お休みにすると言っていた。

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