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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
プロローグ
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3.上條杏樹

私は、上條杏樹、独身、●●歳。


そろそろ、結婚しないとヤバそうな状況になりはじめています。えっ、アラフォーだろうって? いえいえそんなことは……。



私は、本州の北部にある某大学院大学で、化学の教授をしています。この大学は、新素材開発を目指して研究開発しているところです。私もそれなりに頑張ってます。



ここは、お魚が美味しくて、お米が美味しくて、お酒が美味しくて、とても気に入ってます。



この職に就いてから、度々国際学会に呼ばれて世界中の街に行きました。教授なので、ほとんどの時間は自分で管理できます。


知人の研究者を訪問するふりをするとか、プレペーパーを読んで学会に出たふりをするとか、なにをなにするとかで、街を散策して、その土地の美味しいものを食べて、なかなか充実しています。


料理を作らないのかって?それは得意な人が作れば良いのです。私は化学が得意なので、その方向で頑張ります。



小学生だった頃、始めて炎色反応を見てから、化学に興味を持ちました。あれは、綺麗でした。

後で知ったことだけれども、花火のカラフルな色は原理的にこの現象と同じなのです。その後、中学と高校で、化学クラブに入りました。何度か、全国コンクールに出させてもらいました。



私には幼馴染がいます。


子供のころは、かわいくて、なんとなく好きなだけだったのですが、高校に入るころには程よく美形に育って、完全に意識していました。

あいつは、物理バカなので、大学は物理学科を専攻しました。私は、物理や数学はそれほど好きじゃなかったので、同じ大学の化学科に入ることにしました。


あのバカは、普通の学生がすることには全く興味を示しませんでした。えっ?

普通の学生がすることがなにかですって?


それは、授業をサボって好きな女の子と学食でダベるとか、デートをするとか、一緒にお酒を飲んでナニするとか、アレするとか。そう、青春ですよ。


あいつの興味のないことに無理やり引き摺り込もうとして、度々失敗しました。仕様が無いので、私もあいつと、物理や化学の話題で議論したりして、脇目をふらずに勉学に励んでました。


まあ、あいつといっしょにいられたので良いのですが……。


あいつは、そのまま大学院に行って、博士過程に進んだので、私も化学で同じ道に進みました。



私、それなりに頑張ったと思います。


大学院にいるときに開発した樹脂材料が、注目を集めました。


糖類のグルコースは高分子になるときの接続の状態によって、アミロース(でんぷん)になったり、セルロースになります。でんぷんは水に溶けて、熱で柔くなります。


セルロースは水には溶けず、200℃ぐらいまでの熱では変形しません。これは、高分子の高次構造によるところが大きいのです。アミロースとセルロースは全く性質の違う高分子なのに、構成しているモノマーは全く同じものなのです。


この現象はとても面白いと思いました。そこで、結合の状況が変ることで、高次構造が変化し、特性が大幅に変わる。そんなモノマーを新たに設計できないか研究していたのです。



できあがった樹脂は、最初は温度が上がるにつれて柔らかくなるのですが、一旦300℃以上の高温にすると完全に固まってしまいます。

それは600℃になっても固いままで、750℃になってやっと分解します。素材メーカーや、自動車メーカー、電子部品メーカーなどから高額報酬採用を持ち掛けられました。



そんな状態にあった時、あいつはこともあろうか、米国の有名理系大学の大学院に行くと言い出しました。仕方が無いので、付いて行きましたよ。


あいつは、入学資格をとるための試験にかなり苦しんでいました。私はその大学から招聘されました。



あいつは、その大学でそれなりの成果を出したあと、譫言の様に、「時間がどうたら」とか「魂がどうたら」とか言いながら、本州の北にある高エネルギー重力研究所に入りました。流石に、物理学の牙城の様な場所には私は行けません。


そう思っていたら幸いなことに、付属の先進工学大学院大学の化学教室の准教授の席に空きがありました。そこに応募してみたところ、なぜか諸手を上げて歓迎されました。



そのあとも、あいつとの良く解らない関係が続いていたのですが……、最近になって、あいつは少しまじめに研究に取り組みはじめた様です。


唐突に、99.99999%純度の鉄のプレートが欲しいと言ってきました。

鉄のこと良く知ってますか?あの素材は、いろいろな物と合金を作ります。


シリコン結晶でもあるまいに、純度を上げることがどれだけ大変か……。でも、惚れた弱みで請け負ってしまいました。ええ、作りましたよ。想像を絶する困難さでした。



次に言い出したのは、例の樹脂を800℃まで耐えるようにして欲しいのだそうです。

いいですか、これは有機化合物です。800℃までそのままでいられるものではありません。

ダイヤモンドでさえも燃えます。でもあと50℃だろうと言われて。もう意地です。

やってやりましたよ。ええ。


やっと、装置が完成したと聞きました。明日最終の試験運転をするので立ち合わないか、というお誘いを受けました。明日は何を着ていきましょうか。なんだか胸がドキドキしています。

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