表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
295/370

8N.造幣工場

紙幣の金種や肖像を決めて欲しいと頼んだ翌朝。


昨日に引き続いて国務館を訪ねた。


「アイルさんとニケさん。昨日に引き続いていらして頂いて申し訳無いです。

実は、こちらから、伺おうと思っていたんですよ。

担当者が王都から赴任して来たんです。」


そう言えば、事務所の中に居る人が多いような気がする。

バールさんは、相変わらずニコニコ顔だ。うーん、申し訳ないけど風体が風体なので、少し恐いかもしれない……。


こちらも、昨日の内に、製紙工場だけは作ったことを伝えた。


「もう、工場が出来たんですか?

それは、また……。」


バールさんは絶句していた。

まあ、そうなるよな。

今日は、製紙工場を操業する人の手配を頼みに来たと伝えた。


「それなら、赴任してきた連中を向わせましょう。

もともと、そのための人員でしたから。

それでですね。

昨日、宰相閣下と無線機で話し合いを行なって、当面の方針が固まりました。

発行する紙幣は、当面1ガント、10ガント、100ガント、1ガリオンの4種類になりました。

10ガリオン紙幣を作るかについては、今後検討する事になります。

6ガント、60ガント、600ガント、6ガリオンについても同様です。

それと、紙幣に描く肖像の件では、4種類の紙幣への候補が決まりましたので、既にその絵を運んでいます。」


なんとも、対応が早い。

それだけ、切羽詰っているんだろうか?

金の精錬はともかく、紙幣の発行試験は、早いとこ立ち上げないとダメかもしれない。


「えーと、それは、紙幣の作製を急いでいるという事なんですか?」


「そうですね。作製というよりは、試作を急いで欲しいのです。何しろ、誰も紙幣というものを見たことがありませんから。」


そう言われればそうだな……。

私やアイルにとってお馴染みでも、この世界の人にとっては、紙幣なんて、どんなものなのか判らないわよね。


しかし、それで、良く承認したもんだな。

そっちのほうが驚きだよ。


それで、その肖像画にする人物の候補の事を聞いてみた。


「1ガリオンはガイア神です。100ガントは初代国王陛下、10ガントは王国の英雄ガリム・サンドルj卿、1ガントはガリム・サンドル卿の盟友モナド・グラナラ卿となりました。」


えっ。私のご先祖様が二人も居る……。

あっ。国王家とも血の繋りがあるから3人ともご先祖様?


「まあ、初回ですので、王国民が粗末にしにくい肖像を選んだという事ですね。

ちなみに、現国王は、辞退されました。」


まあ、そうなるかな……。

自分の顔が描かれたものが、どんな扱いになるか、様子を見てからの方が良いかもね。

まさか、お金だから破ったり、くしゃくしゃに丸めたりはしないだろうけど。

自分の顔が描かれた紙を破られたり、グシャグシャにされたら、ショックだろうしな。

感情に任せて、紙幣を粉々に破いたりするって、ドラマなんかで良く見た。

でも……実際にする人なんて居ないか。勿体無いもんね。


「それは、残念でしたね。」


「宰相閣下も勧めていらしたんです。私も陛下の肖像が一番良いと思ったんです。」


「そうなんですね。陛下は何故、辞退されたんでしょう?」


「現存する陛下の顔を描いた絵が陛下に似ていなかったりすると、その描いた絵師が非難されるんじゃないかとか言っていましたけど……。」


「えっ?そんな理由なんですか?」


ヨーランダさんが描く絵は凄く上手だよ。あんなに良く似ている植物の特徴を描き分けるなんて、私には無理だ。


「でも、本心は、何ミロ枚も、ご自分の顔が描かれるのに怖気付いたというか何というか。

無線で表情が見れませんでしたから、何とも判断しかねるんですけど。会話の内容からどうやらそういう事みたいです。」


なんと、単なるヘタレじゃないか。

これからは、ヘタレ陛下と呼ぼう。まあ、以前からそんなところが有ったよな。


いや、止めといた方が良いのかな。

うっかり口に出したりしたら、折角生れ変わったのに、頭と胴体が別れ別れになったりして……マズい。マズいよね。


「それは……何と言って良いのか……。」


「まあ、そんな事がありました。

そうそう、こちらに来た文官の紹介をしておきましょう。今回来た人達は、財務省の文官の人達です。

どうやら、紙幣を製造するのは財務省の管轄で、私達のところは発行する紙幣の数量を決めるという具合に分担が分かれたみたいです。

あっ、そうそう、私の所は、以前の内務省の貨幣管理部門から、宰相府の貨幣管理庁に格上げになりました。

これまで以上に権限が大きくなるみたいです。」


バールさんもマズいと思ったのか話題を変えてきた。

でも、私にそんな所属自慢をしても、全然分っていない自信だけはあるよ。

まあ、大人の世界はいろいろあるよね。


造幣工場で働くために派遣されてきた人達のリーダーを紹介してもらった。

デニス・グイードさんという30代半ばぐらいの、茶髪、茶眼の人だった。中肉中背って感じの人だ。

バールさんの説明通り、王宮の財務省に所属していると言っていた。

アトラス線の沿線で領地を治めているグイード男爵の末弟なのだそうだ。

自分の出身領地に鉄道を通してもらったことに感謝された。

でも、ガリア線と違って、アトラス線は、アトラス領の中を通っているだけなんだけどね。

それでも、確かに、マリムや王都に移動するのには便利になったのかもしれない。


私とアイルは、先にメーテスの造幣工場に向って、国務館の人たちには、午後から現場に来てもらう事にした。


製紙工場では、まだ、電気配線は終っていないだろう。

もっと余裕があると思っていたから、吃驚だよ。

少なくとも、明日には完全に、使えるようにしておかなきゃならなさそうだ。


先に、製紙工場に着いた私達は、工場の未実装の部分をチェックして、作業の指示をした。


電気配線が終了しているところから、動作チェックを開始する。

造幣所のボイラーに火を入れて、高圧蒸気の動作を確認した。


「紙の製造装置については、問題無さそうだね。

今日の午後から、明日にかけては製紙工場の説明になるんだろうけれど……。

工場の動かし方を教える人達は、全員素人だよね。

誰か、装置について詳しい人を付けておきたいところだけど。

どうしようか?」


「そうね。紙を圧縮しているロールに巻き込まれたりしたら、大怪我をするわね。

下手したら、命に関わるかもしれないわ。

一応安全装置はあるけど、素人は何をするか。

ただ、特殊な紙を作るのは、偽造を防ぐためには必要よね。」


「とりあえず、工場を動かすことが出来るまで、ボーナ商店にお願いして教えてもらうしか無いんじゃない?

自分達で工場を動かせるようになってから、特殊な紙を作る条件を検討するしか無いよ。」


でも、紙幣に適した紙をどうやって作るのか、まだ考えていない。

紙幣の紙って、かなり特殊な紙だと聞いたことがある。

濡れたぐらいじゃ簡単に破れなかったり、印刷が滲まなかったり。

それらの検討を工場でするのも、どうかと思うんだよね。


もっと時間があると思っていたんだけど、様子を見るとそうでも無さそうだよ。


「ねえ。アイル。先刻の話だと、かなり急いで対応する必要がありそうじゃない?」


「確かに、そうみたいだね。一体どうしたんだろうか?」


「それより、紙の作り方がまだ決ってないよ。」


「だから、それは、工場を運転出来るようになったら、条件を検討してもらえば良いじゃなか。」


「でも、急いでいるみたいだから。工場で条件決定なんかしていたら、凄く時間が掛るじゃない。」


「まあ、そうだろうけれど、それは仕方の無い事だと思うけど……。

ひょっとして、試作用のプラントが欲しいとか?

……。

はぁぁ。」


アイルは、私の表情を窺いながら、壮絶な溜息を漏らした。


「アイル。だめ?」


「いや。良いよ。で、何処に作る?」


「秘匿性が要るのよね。すると、この敷地の中が良いかも。いっそのこと、紙幣研究所を作っちゃうのが良いかもしれないわ。

他にも、印刷用のインクとか、試作用の印刷機の検討も必要じゃない?」


「確かに、工場で製造する条件を決めるために、検討をする場所が必要かもしれないな……。

しょうがないな。」


私達は、工場の敷地の一番奥に移動して、工場と同じぐらいの建物を建てて、中にd1/10ぐらいのサイズの紙製造装置。多数の実験室を作った。


お昼前には、あらかた出来上がっていた。相変らずのスピードだな。

アイルに言わせると、以前作ったものなら、直ぐ出来るのだそうだけど……。今回の研究所のどこらへんが、以前のものと一致するのか、私には判らないよ。

まあ、どうでも良いけど。


工場で配管や配線作業をしている騎士さんたちに、実験室の配管や配線も依頼した。

あまり、迷惑を掛ける訳にもいかないので、建物の中の配管、配線はアイルが魔法であらかた作り込んだ。

大本の配管や電力供給ラインの繋ぎ込みだけだ。

騎士さん達には、こっちの研究所の方への電力や水の繋ぎ込みを優先してもらった。

工場で最初から作業訓練するより、こっちで、慣れてもらってからの方が断然良さそうだ。


アイルと二人でお昼を食べに行って、戻ったら、既に、造幣所の塀の入口には、可成の人数の訪問者が待っていた。


あれ?バンビーナさんも居るわね。


「バンビーナさん。どうかなさいました?」


「あっ、ニケさんにアイルさん。良かった。

ここに居る人達は、どういった方々でしょうか?」


「えっ?どういったとは?

……あっ。

ごめんなさい。

バンビーナさんに伝え忘れてました。」


本来なら、国務館から正式に通達が回るはずの事なんだけど。

あまりに急にあれこれ決まったので、事務長に私も含めて、誰も伝えていなかったみたいだ。


そりゃ、吃驚するよね。王宮の文官が騎士さん達と大挙してやってきて、メーテスに入ってこようとするんだから。

護衛の騎士さん達が訪問者を守るように、ここまでやってきたのを、バンビーナさんが問い質そうとしていたところだったみたいだ。


バンビーナさんには、何度も謝りながら、事情を説明した。

納得してもらえたみたいだ。


備品として保管しているテーブルや椅子を運んで来てもらう事をお願いした。

この敷地の中は、建物や部屋、装置類は有っても、机も椅子もない。

このままだと、この大人数で、中で打ち合わせすることが出来ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ