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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
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74.メーテス見学

夕食の後は、カイロス君と雑談をして過した。


色々と聞いているうちに、メーテスを創設する頃もアイルさんとニケさんと一緒だったので、メーテスの事にカイロス君はかなり詳しい。


「メーテスの手引き」を読んで、分らなかったり疑問に思った事を教えてもらえるようにお願いした。


翌朝。


食堂で朝食を食べた。


昨日夕食時は、かなり暗かったので、食堂がどんな建物なのか見えなかった。食堂は、学生寮に隣接している、平屋の大きな建物だった。

食堂を挟んで、学生寮とは反対側に講義棟があるとカイロス君に教えてもらった。


食堂には、沢山の学生が居た。

皆、グループになって食事をしている。同じ部屋になった人同士なのかもしれない。


朝食を終えて部屋に戻ってから「メーテスの手引き」に書かれてある内容で不明な部分をカイロス君に聞いた。


時刻の表し方が、何故普通と違うのかを聞いてみた。

これが一番不思議だった。


随分前から、アトラス領の天文台ではこの表し方で観測をしているのだそうだ。

天文台というものが分らなかったのだけど、それも教えてもらった。

大きな望遠鏡で、空にある星々を観測する場所なのだそうだ。


ボク達三人には、何故、そんなものの位置を観測しているのかが解らなかった。


観測を繰り返すことで、星の動きから、この世界の法則や、それに必要な数値を正確に計算出来るらしい。


これは、大分後になったら習うのだそうだ。


星と言っても、普通の星とヘリオの周りを回っている星では動き方が違っているそうだ。この大地も、星の一つで、惑星ガイアと言っていた。

そして、この大地も、そういった星と同じようにヘリオの周りを回っていると言っている。


何が何やら全く解らなかった。


「それは、将来を知ることができると言われている占星術の事なのだろうか?」とエリオさんが聞いた。


占星術?


「多分、同じものを見ているんですけれど、全然違いますね。」


「迷い星の位置で、農作物の収穫量や、紛争が起るかなどを正確に予測できると聞いた事がある。

王国でも、占星術師が星の位置から得た結果を参考にしている。」


「それって、ヘリオやセレンの位置と、メゾナ、アストラなんかの位置で、何が起るか分るってやつでしょ?

多分、それはまやかしですよ。」


瞞し?カイロス君、そんな事言っても大丈夫なの?


「しかし、迷い星は常に位置を変えていて、それは、星々の神に意思がある所為だとも聞いたのだが。」


「星がどう動いているのかは、簡単な法則に従っているだけです。

そんな単純な動きから、農産物の収穫量や人々の争いなんていう複雑な社会現象が解る訳が有りませんよ。」


カイロス君は、穏かな声で断言している。しかし……本当にこの子は10歳なのか?


「迷い星がどのように動くのかは、予測が困難だと聞いている。それが簡単な法則に従っている?

それは本当なのか?」


その天文台で観測した結果から、迷い星の位置を正確に予測できるのだそうだ。

何年か前に、マリム周辺で、セレンがヘリオの前を横切ることで、日中、街中が真っ暗になった事があったらしい。

それを1週間前に、アイルさんが予測したと言っていた。


何だか凄いことをしているような気がするけど、良く分らない事が多すぎて、どう考えれば良いのか……。


時刻の表記を変えるのは、時刻と星の位置やヘリオの位置から、自分が何処に居るのか計算する方法があるのだそうだ。

その時に、時刻に1を足したり、足さなかったり場合によって考えなければならなくなるらしい。

その面倒が無くなるので、メーテスで採用する方法の方が簡単なのだそうだ。


これも、そのうち学ぶことになると聞いた。


結局、色々学ぶ事になるという事と、学ばないと色々な事が理解が出来ないことだけは分った。


「メーテスの手引き」は量が多くて、まだボクは全体を読み終えていない。あとの二人も同じだった。


それは、読んで分らないところを教えてもらう事にした。


今日の残りの時間は、カイロス君に王国立メーテスを案内をお願いした。


丁度昼の時間になったので、昼食を食べてから、メーテスの敷地を歩くことにした。


昼食後、食堂の学生寮側とは反対にある出入口を出たところには、一際大きな建物があった。

これが、講義棟なのだそうだ。


ちなみに、食堂は、この講義棟を囲うように、3ヶ所ある。

学生寮と講義棟の間、講義棟の右と左の裏側だ。


食堂の建物の中には、食堂の他に、売店もあって、必要な学用品は、そこで手に入れることができる。

基本、消耗品の学用品は、使い切ったことが示せれば、只でもらえるのだそうだ。

使い切ったノートを見せれば新しいノートが貰え、鉛筆が短かくなったら、それを見せれば鉛筆は貰えるようになっている。

紙が一杯詰ったフォルダーを見せれば、新しくフォルダーも貰える。

消耗品でない、穿孔パンチや鉛筆削り、計算尺などは、壊れた場合に限り、交換してもらえる。

そうでなければ、有料になるのだそうだ。

金額を聞くとかなり高いものだった。

敢えて、高くしているらしい。


学生が支給品を転売するのを防ぐためらしい。


正規の金額を聞いたら、それでも結構高い。そんな高価なものを、無償で支給しているのは信じられなかった。


基本、食費、寮の使用料金も只なので、1年間の食費や宿に泊った場合の宿泊費を考えると、大した金額じゃないと言われた。


費用は、王国で出してくれる。それだけ、ここの学生には期待しているのだそうだ。


講義棟の中に入ってみた。入口で警備している騎士さんに、学生証を見せたらすんなり入れてくれた。


講義棟では、今日から補講をしている。


講義棟の中に入ると高い天井の広い廊下があった。


入口を入って、廊下を進むと、大きな丸いロビーに出た。

入ってきた廊下を含めて、廊下が6方向に延びている。


廊下と廊下の間には入口の扉があって、それは大講堂への入口なのだそうだ。

大講堂は二つの廊下に挟まれて6つある。


今は、大講堂の1つで補講を行なっている。

扉のところに、「補講会場」と書かれた紙が張ってあった。


使っていない大講堂の入口の扉を開けて中に入ってみると真っ暗だ。

カイロス君が、部屋の灯りのボタンを押してくれたので、部屋の様子が見えた。

不思議な部屋だった。

その部屋は、奥に行くに従って、高く、広くなっている。

部屋の両脇と、中央近くの2ヶ所に階段があって、部屋の奥へ向っている。

階段と階段に挟まれた場所に、幅広の長机と長椅子があった。


入ってすぐのところには、高くなっている広い台があって、壁には幅広の黒板がある。

台の上には少し大きめの机があった。


講師の人が、この高くなっている台に乗って、黒板を使って講義をするのだとカイロス君が教えてくれた。


ボク達学生は、階段のように段々と高くなっている机に着いて講義を聞くことになる。どこに座っても、前に居る人で視界を邪魔されず、黒板を見ることができるようになっているのだそうだ。


大体d120(=168)人が余裕を持って座れるそうだ。


この大講堂の奥には、扉があった。その先には、d60(=72)人ほど入れる教室と、その両側にd30(=36)人ほど入れる教室がある。

そこは2階で、1階にも同じ教室があるそうだ。

その教室へは、先刻見た6本の廊下から入れるようになっている。


この講義棟には、大きい方の教室はd10(=12)部屋。小さい方の教室はd30(=36)部屋ある。


ホールを中心にして、6回対称に配置されているとカイロス君が言った。


6回対称?なんだ?それ。

正六角形の形が6回対称なのだそうだ。中心点で2とき(=30°)回転させて、重ね合わせて、ピッタリ同じ図形の事らしい。


うーん。分らないことがまた出てきた。


先刻入った出入口の反対の出入口から外に出たら、右手と左手に、先刻食事をした食堂と同じ食堂が建っていた。

どの食堂もメニューは同じで、同じ造りになっているので、どこで食べても同じだそうだ。


講義棟の先には、教職員の控室を中心に3つの方向に研究室が並んでいる。

食堂の裏の右手が物理系の研究室。左手が化学系の研究室。奥の方に国務館研究室が並んでいる。

どの部屋も廊下で繋がっていて、こっちは3回対称になっていると言っていた。


今度は正三角形らしい。ボクも少しは学習できているんじゃないかな……。


「研究棟に入ってみますか?この時間だったら、アイルさんとニケさんも居ると思いますよ。」


「そうなのか?じゃあ是非お会いしたいな。一年振りぐらいだな。」


「ボクも会いたいですね。」


ゼリアさんが、そわそわし始めた。


「オレだけ初対面かよ。何か緊張するな。」


カイロス君の案内で、教職員の控室に入った。


かなり広い部屋で、部屋の形は6角形になっていた。大きな机が真ん中に置いてあり、椅子もd20(=48)脚以上、周りに置いてある。


周辺には、事務机が幾つもあって、そこで作業している人、慌しく部屋に出入りしている人が見えた。


奥の一角に何かの道具が8台動いていて、そこにアイルさんとニケさんが居た。


その道具からは、紙が吐き出されていて、出てきた紙をニケさんと何人かの人が見ている。


「あっ、また、止まったな。やっぱり、これが限界なのかな。」


アイルさんが、道具の側面の扉を開いて中を覗き込んだ。


「あれ?カイロス君。昨日から、学生寮でしたよね?」


ニケさんが声を掛けてきた。


「あっ。エリオさんとムザルさんも一緒だったんですね。」


「ごぶさたしております。ニケさん。1年振りですね。」


「1ヶ月振りぐらいです。お久しぶりです。」


「あっ。初めまして。カロッツェリア・パスカレーラと言います。宜くお願いします。ゼリアと呼んでください。」


「あぁ。貴方が、入学生で魔法を使える人ですね。ニーケー・グラナラです。こちらこそ宜しくお願いします。私の事は、ニケと呼んで下さいね。」


「それで、今は、どういう状況なんですか?」


カイロス君は、ここで動いている道具の事は知っているみたいだな。何なんだろう。この道具。


「アイルが絶賛試験運転中よ。でも、もう、ほとんど実用レベルかな。まっ。もうじき完成するんじゃない?」


暫く、道具の扉の中を覗き込んでいた、アイルさんが、ニケさんの方を向いた。


「ニケ。これで、また、流してくれるかな?」


「オッケー。じゃあ、また流すね。」


「これで、止まらなければ、大体のマージンが決まるから。完成かな。」


「アイルさん。ご無沙汰してます。これ、何なんですか?」


エリオさんが声を掛けた。


「あっ。エリオさん。あと、ムザルさんも。来てたんですね。お久しぶりです。

ニケが、複写の魔法が面倒だっていうんで、複写装置を作ってるんですよ。」


「あっ。あのー。カロッツェリア・パスカレーラと言います。初めまして。」


「あぁ。カイロス君と同室の人ですね。初めましてアイテール・アトラスです。アイルと呼んでください。」


「あっ。オレの事は、ゼリアって呼んでください。」


「皆さんには、魔法研究所の方で、色々お手伝いを頼むことになると思いますので、宜くお願いしますね。」


それからも、作業をしている様だったので、邪魔にならないように、カイロス君が、ボク達を外に連れ出した。


「いやぁ。吃驚した。本当に7歳なんだな。」


外に出てから、ゼリアさんが、一人で呟いている。


カイロス君に、なぜ、同じ道具が8つあったのかを聞いたら、少しずつ形や条件を変えて、動作試験をしているのだそうだ。

どれも安定して動作するようになったら、魔法で全ての道具を中間の形や条件に変更して完成。

マージンと言っていたのは、どこまで条件を変えても良いかの範囲なのだそうだ。


実験計画法がどうとか言っていたけど、良く分らなかった。


分ったことは、効率的に最適の形や条件を決めるのに、沢山の検討をしなければならない。1台で順番にやると時間が掛る。何台も準備して条件を変えて動かせば、それだけ早く最適な形や条件を決められる。


この複写装置は、いろいろなところから欲しいと言われているので、先に何台も作って実験しても無駄にはならない。


実験に使った道具が余分でも、アイルさんやニケさんが魔法を使って原料に戻してしまうので、本当に無駄にはならないそうだ。


それから、カイロス君が、他の場所を案内してくれた。


研究室がある敷地の川側には、ガラス工場、冶金、鋳物工場がある。

もう、既に職人さんが、実験に使う器具などを作り始めているそうだ。


川沿いには、メーテス独自の浄水場と下水処理場があった。

下水処理場の排水口は、コンビナートの上水取り入れ口の下流に設置してある。

特に危険なものが流れ出さない様に、何段もの貯水槽が設置してあった。


その反対側の広い場所には、農園、大きな実験棟が並んでいた。


その奥には、運動場と体育館という建物があった。


「これって、騎士の訓練場なのかな?」


エリオさんが、カイロス君に聞いた。


「いえ、ここには警備のための騎士さんしか居ませんから、違います。

何か、毬を使った運動をするらしいですけど……ボクも詳しくは知らないんです。

ゴムが出来たので、何かしたいらしいんですよね。」


メーテスの敷地は、まだ1/3も使っていなかった。

今後、必要になったときに、何かを建てたりする予備の場所だそうだ。


一通り見学した後は、再び「王国立メーテスの手引き」を読んで、カイロス君に、色々と質問して過した。

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