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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
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63.ロッサ駅

とき半(午前9時)頃に、アイルさんとニケさんが領主館に来た。

私は、コンビナートの様子を見た後、一旦領主館に戻り、朝食を食べ終えたところだった。

二人に朝食を聞くと、船の中で食べたのだそうだ。


こんな子供が、そんな風に働いて大丈夫なのだろうか?


会って、最初に聞かれたのは、鉄道を街や領地の何処に通すのかという事だった。

鉄道をコンビナートまで繋げるには、ロッサ川を渡らなければならない。

どうしても、鉄道は街を横切る形で敷設せざるを得ない。


マリム川ほどでは無いが、ロッサ川の河口も広い。

吊り橋を造ることになるだろうと言われた。


二人は、工場を造ったら、その後は、王都から、こちらに向って鉄道を延伸するそうだ。


それまでに、鉄道を通して、駅を作る場所を空けておいて欲しいと言われた。

何時までかを聞いたところ、工場を造り終えたら、4,5日でここまで鉄道を通せるはずだと言う。


直ぐに鉄道を敷設すると聞いてはいたが、全然時間が無い。


それなら、一層いっその事、街の空いている場所に駅を造り、街を作りなおすのが良いかもしれないと思い至った。


これまでは、ロッサに大量の荷が届くのを海運で各地へ運んでいた。しかし、その荷の状況も、街の状況も変わっていくだろう。


それに、発電所と製紙工場が出来るのであれば、当然、漂白に使っているジア何とかと言うモノも手に入るのだろう。

それが有れば浄水場を運営することが出来て、下水道を設置することもできる。

マリムほどの赤ん坊の人数は居ないが、それなりに、赤子の命を失なう事は多い。

一気に、マリムで行なわれていた施策をロッサに取り込むこともできるのではないだろうか。


しかし、今後、ロッサの街が、どうなるのか予測ができない。


状況を調べてから、街を作り直す方が良いのだが……。


街を作り直すのには、少なくとも半年は掛る、下手をすると年単位の事業になる。


そして、駅の場所は、マリム同様、街の中心になるだろう。

その駅の場所は、街を作るときにとても重要な場所になるはずだ。


二人に、街の絵図を示した。


ロッサの街は、海沿いにある大きな広場と川の上流の川沿いから北西に広がっている領主館の敷地で囲まれている。


川岸沿いにd18(=20)棟の蔵、海岸沿いにd24(=28)棟の蔵が並んでいる。

川沿いと海沿いに立ち並んだ倉庫が、ロッサの街の生命線だ。

川岸には、船着場と荷揚げ場があり、その背後に蔵が並んでいる。

海には、港があり、大型の帆船が6艘は停泊できる広さがある。このあたりでは王都やゼオンに次ぐ規模を誇っている。

そうは言っても、昨日のコンビナートの敷地に出来た埠頭はあまりにも巨大で、比較する気にもなれない。

海岸には、荷揚げ場があり、その背後に蔵が並んでいる。

これら、川岸の蔵と、海岸の蔵で囲まれた場所は、北西に長い大きな広場になっている。

その北西に長い広場と川の上流で北西に広がる領主館の敷地の内側にロッサの街がある。


この街が出来た頃は、魔物がこの辺りでも頻繁に出ていた。領主館の敷地が、街の外側に有るのは、街を魔物から守るためだった。


今では魔物を見ることは全く無くなった。


そんな配置になっているため、街を拡張するには、街が海と領主館に挟まれていて、さらに、南東に川があるので、北西方向に延ばしていくことになる。


街を大きくするには、領主館の敷地が邪魔になる。

街の作り替えの際には、領主館をどこか別な場所に移す必要がありそうだ。


街に近い場所に駅を配置しようとして、直ぐに思い着くのは、領主館の敷地だ。

今の段階で、蔵を取り壊す訳にはいかない。


そう考えて、領主館のあたりに駅を設置してもらう事を相談した。


「これだと、領主館を建て替えないとならなくなりますよ。」


絵図を見ながら、ニケさんが聞いてきた。


「街は、全面的に作りなおそうと思っています。

これから、ロッサの街の荷の状態や、運送の方法、色々変わってきます。その状況に合った街の形に作りなおした方が良いと思うんです。

ただ、どうするかは、今直ぐには……。」


「工場を造っている間に決めてもらえれば、間に合いますから、検討してみてください。」


「街をそのままにして、街中に駅を造るなんて事が出来たりしますか?」


「ええ。出来るよね?アイル?」


「高架にすれば良いんだろうけど……。えーと、高架というのは……。マリム駅から海沿いのコンビナートまでの、鉄道を見ました?

街の中に橋があって、その上を鉄道が通っているやつです。橋脚を設置する場所が必要ですが、街はほとんどそのままでもいけると思います。

高架なら、鉄道の下に建物が有ったり、道が通っていても大丈夫です。

ただ、そうすると、駅は建物より高い場所にあって、階段で登ることになるので、荷物の積み卸しはコンビナートでする事になりますね。」


「悩ましいですね……。少し考えないとダメですね……。」


アイルさんとニケさんに、様々なケースについて確認をした。

工場の設置場所については、川沿いの場所を荷の積み卸しに使う事も考慮して広く空けてもらう事になった。


二人は、工場建造のために、一足先に、コンビナート用地に向っていった。


私は、何時もの相談メンバーを宰相に依頼して集めてもらった。


宰相のエルビス・ロペス、商人担当管理官のディオ、税収担当管理官のオット、若手文官で、マリムに同行した、ヴァエル、ユリアン、フラムル、ルーク、ケッカの5人。そして妻のステファニーアだ。


この面々へは、昨晩、招集を掛けて、王都での経緯やコンビナートに設置する工場などの説明をしてある。


「今朝、アイルさんと、ニケさんが領主館にやってきて、ロッサの駅や、鉄道の経路をどうするか聞かれたのだ。

今後、街を完全に作り直すことも視野に入れて、どうするのかを決めたいと思う。」


「街を作り替えるんですか?」


「作り替えるんだったら、マリムの街みたいなのが良いです。」


「通りも馬車が通れるように広くしないと。」


若い文官達が、一斉に声を上げている。期待に目が輝いている。

作り替えると簡単に言ってみたものの、作り替えは、主に私と妻がやるので、けっこう大変なのだ。


「しかし、大半の商人達は、他領に移ると聞いていますぞ。これまで準備していたと思われます。その流れは変わらないのではないですかな?」


水を差すように宰相が、懸念を漏らす。


「実は……。」


商人担当管理官のディオが控えぎみに話を繋ぐ。


「昨日の説明会の後で、商人達と話をしてみたんです。

商人達も困惑していました。王都までの鉄道が開通したので、本格的に拠点を移動しようとしていたところに、この話ですから。

ロッサがどう変わるのか見定めてから拠点を移動しようと、考えなおしたところが多いようです。」


「ロッサに鉄道の駅が出来るのであれば、敢えて、スラス男爵領やミセーリ男爵領を使用する必要も無くなるかもしれませんね。

しかも、信じ難いことに、直ぐにも鉄道が敷設されるという話じゃないですか?

聞くところによると、スラス男爵領もミセーリ男爵領も小さな領地です。

商店を完全に移設したとしても、雇っている商人達の家族の住居の確保が難しいようです。」


食い気味にオットが話した。商人達がどう動くかで、税収入が大幅に変わってしまうため、あれこれ調べていたのだろう。


「しかし、これからロッサがどうなるのかは……難しいですな。

それを見越して、街を作り替えるとなると、どうしたら良いのか……。」


宰相の言う通りだと思う。私もこれからロッサがどう変わっていくか読めない。


「これから、新しい変化の風が王国中に吹き荒れることになる。風の中をただ流されるのではなく、何とか舵を取って、航路を定めていかなければならないだろう。

一つの目標は、マリムの街だと思う。あるいは、ミネアの街だな。

マリムも、何年か前に、街を完全に作り替えたと聞いている。

あれらの街を参考にするのが良いのではないか?」


宰相のエルビスも、ディオもオットも、この二つの街は見ていない。

ただ、これまで、マリムに連れていった、若手から、あれこれ聞いていた様だ。

皆同意している。


「最終的に、そのマリムかミネアの街に似せるとしても、今の商人達の活動を続けさせるためには、今使っている蔵などは、そのまま温存しておく必要があります。」


とディオが言う。


「すると、商人達に、今の商売を続けてもらいながら、新たな街を作らなければならないのですな。

今は、港の周辺が街の中心ですが、駅の周辺が、街の中心に移っていくのでしょう?

本来なら、港の側に駅がある方が良いのですが……。

倉庫が並んでいますからな。

これは中々難しいですな……。」


宰相が言うように、街をそのままにして、新たな街を作るにしても空いている場所が無い。下手に今使っている建物を取り壊すと、今の業務に支障が出る。

やはり、街に近くて、駅のために空けられる場所は、領主館ぐらいしかない。


これが、何ヶ月か前に判っていれば、どうにでもなったのだが……。

しかし、今、そんな事を考えても無駄だな。


それから、色々な意見や案が出た。しかし、今の蔵が並んでいる港と川の側に手を付けない前提だと、領主館を取り壊して、駅にするという以外の有効な手が無かった。


高架の駅にするという案も考えた。しかし、これからロッサは、荷の中継地から、生産の場に変わっていく。

街で生産したものを、王都などに運ぶことを考えると、街の近くに積み込み場所が有った方が良い。

そうでなければ、街で生産した物を船でコンビナートまで運んでいかなければならない。

積み卸しの手間、移動の手間が掛ってしまう。


昼近くまで、話し合いをして、結局、領主館を取り壊して、その場所に駅を造るしかないという結論になった。

宰相や文官達は、残念そうにしていたが、他に良い手が見付からなかった。


昼食後、全員を連れて、工場の建設を見に行くことにした。

息子と娘も一緒だ。


港へ向っていると、港のあたりが、やけに騒がしい。


河口のあたりに人集ひとだかりがある。


人々が集まっている場所に行くと、河口を横切る様に何かが見える。

その横切るものの、遥か先、コンビナートの方を見ると、沢山の建物が建っている様に見える。


周りの人々が、領主の私が来たことで、一斉に話掛けてきた、それぞれが言いたい事を叫んでいるので、何を言っているのか良く分らない。


どうやら、空から、石の塊が落ちてきたと言っているようだ。

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