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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
206/372

15.新茶

「ねえ、ジーナさん。ジーナさんは、お茶はお好き?」


突然、フローラ様から声を掛けられました。


今日は、ウィリッテさんに誘われて、領主館の夕食を頂いています。副管理官をしているマリエーレも一緒です。


時々、こうして、ウィリッテさんに誘われて領主館に来ています。

ウィリッテ館長は、管理官階級の女性が私とマリエーレだけなので、色々と気遣ってくれます。


こうして、夕食を領主館に誘われるのも、そんな気遣いからなのだと思います。

食事を終えたたところで、フローラ様から声を掛けられました。


「はい。好きです。侍女のリーサに勧められて、温めた牛乳を入れてみたんですけど、最近はそればかりを飲んでます。」


「あら、そうなの。じゃあ、明後日の5時(=午後2時)にクリスタルパレスで、新茶の品評会をするから、是非、出席してね。

マリエーレさんも、よろしければ是非。」


「紅茶の品評会ですか?」


「新茶の季節になったのよ。新茶は、香りが違うのよ。是非味わってみてもらいたいわ。」


「はい。参加させていただきます。」


参加を伝えたのですが、何のことだかさっぱりです。

こっそり、ウィリッテさんに聞いてみたのですが、ウィリッテさんは随分前に誘われたそうですが、何だか詳しくは知らないと言います。


「ジーナさんは、お茶の作り方は知ってますよね?」

そっと、ニケさんが声を掛けてくれました。


「はい。考案税で読んだ事はありますけど。レペの木の葉に熱を加えて作るんですよね。」


「そう。一昨年の冬に、偶然見付けて、昨年の春からアトラス領で本格的に作り始めたの。」


「そんなに最近だったんですか?お茶を飲むようになったのって?」


「ええ。そうよ。それまで、甘いジュースか水ぐらいしか飲むものが無かったわね。」


「そうなんですよね。あとはお酒ぐらいですね。あっ、でもニケさんはまだお酒は飲みませんね。」


「そうなの。それでお茶を作ったのよ。

お茶は、今年あたりから、本格的に生産すると思うわ。

今飲んでいるお茶は、成長した葉を使っているから、香りが薄くて、少し苦いの。

新茶は、良い香りがして、甘い味がするはずよ。」


今年から本格的に生産するんだとすれば、お茶がアトラス領に関係していところだけで飲まれていたのは理解できますね。


でも、品評会って、何をするのでしょう?


「フローラ様が品評会と仰ってましたけど、それは何をするんですか?」


ニケさんは、新しい製品の場合に、品評会をして、優勝すると報奨を出していたと教えてくれました。

これまで、鉄の剣やガラス製品で毎年品評会を実施しています。

優勝した報奨金を受けとる代償に、工房ギルドに製造方法を公開する事になっています。

一般に公開するかどうかは、工房ギルドと製造者の判断が入ります。特に、他領の人へ公開されるかは様々だそうです。


そう言えば、博覧会で、ガゼルさんのところの剣や、レオナルドさんのところのガラス製品が展示されていたのを思い出しました。


そうやって、製品の生産を広めて、品質を向上させていたんですね。


「それで、今回は、アトラス領と商業ギルドが主催だったはずよ。義母おかあ様とお母さんが張り切ってたわ。」


そう言えば、お茶に関しては、国務館の農作物管理部門でも話題になっていたはずです。


「アトラス領も、グラナラ領も、辺境の大きな土地を貸与されたけど、本当に田舎ですからね。特産農作物が有るのと無いのでは大違いなのよ。

特に、グラナラ領は、没落伯爵の広大な土地を受け取ったのは良いけど、何にも無かったのよ。海岸沿いで魚が獲れるだけでしたからね。

ようやくゴムも生産できるようになったし、今年からはお茶よ。」


私とニケさんが会話していたからでしょう。ユリア様が会話に参加してきました。

話を聞くと、グラナラ領は、領地を受け取ったときには、領民は、小麦を細々と生産して、南部の海岸で魚を取って生活していた状態だったそうです。


鉄道が通って、海岸沿いの魚介類は、マリムに輸送するようになって、南部ではゴムの木を植えて、北部の丘陵地帯にはレペの木を大量に植えていったのです。

アトラス鉄道が通っている領境あたりは一面のレペ畑になっているそうです。


「お茶はニケが考えたものですからね。絶対にアトラス領には負けないわ。」


凄く意気込んで、ユリア様は、この場を離れていかれました。


明後日の5時(=午後2時)からですか。勤務時間中ですね。

まあ、何とかなるでしょう。


仕事は順調に立ち上がりました。マリエーレが来てくれたのが一番助かっています。

やはり、19人の申請書作成者への指導と申請書の内容確認は一人では無理でした。

ただ、移籍してもらった人達は、これまで、現場で申請書の作成をしていただけあって、従来の仕事からの移行は順調でした。

最初に、申請書の正式な書き方と、どういった点が重要なのかを教えたら、あまり申請書の修正をしなくても良くなりました。


やはり、申請書は、試行錯誤しながら独自の流儀で作成していたみたいです。

まだ、不備が散見されますけど、そのうち問題は無くなると思います。


大分、余裕が出来てきたので、一般の人からの考案税申請書の受け付けることにしました。


前回、夕食におじゃました時に、侯爵様と宰相様に、領都民からの考案税申請の相談を受け付けると伝えることができました。

領内に告示をしてもらって、開始しました。


相談は、半時(1時間)で100ガント(=1,667円)。申請書作成は、1件1ガリオン(=20,000)で受け付けることにしました。


毎日、d20(=24)件ほどの相談とd10(=12)件ほどの申請書の作成を行なっています。

思っていたより、相談の件数は多かったです。

考案と呼べないものもありますが、吃驚するような考案も有ったりします。

新しい物を生み出そうとする勢いがあります。


品評会の当日。


マリエーレと一緒に、官舎に戻って昼食を食べます。

最近は、二人で官舎に戻って、昼食を食べています。

マリエーレには、エリイという侍女さんが付きました。


侍女さんとは、何とか、普通に話ができるようになりました。

私の侍女さんのリーサとマリエーレの侍女さんのエリイは、幼馴染だそうです。

二人ともガラス工房の職人の娘さんでした。


毎昼、私かマリエーレのどちらかの官舎で、4人で昼食をします。

食事をしながら、侍女さん達から領都の噂話を聞くのが日課です。


国務館で毎日仕事をしていると、世間の様子から隔離されてしまいますものね。

侍女さんは、毎日、領都に買い物に行って、様々な街の様子を仕入れてきてくれます。


今日は、鉄道の制服が正式に採用になった話でした。


鉄道と定期船の仕事は、領都では一番人気の職業になっています。

鉄道は今年中には、王都まで繋ると言われています。

職業に従事して、他領に移動出来るは、やはり魅力ですよね。

しかも、以前なら1月以上の日数が掛っていましたけれど、2日で移動できるのです。


採用されるのは、精鋭養成学校の卒業生だというのも憧れに拍車を掛けています。

精鋭養成学校は、領都でも優秀な若者が学んでいると言います。


そして、王国でも屈指の重要度を持った職業です。

まさに選ばれた人が従事している仕事です。

若者が憧れるのも分ります。


新規採用された鉄道の制服の評判はとても良いみたいです。

どうやらリリスさんの目論見通りになっていますね。

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