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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
200/369

W.業務報告

王都に一時帰還する日になりました。


乗船券は、何とか入手できました。相変らず、定期船の乗船者は多くて、空きはほとんど無かったみたいです。

国務館の交通管理部門の力で、半ば強引に乗船券を確保しました。


残念なのは、出張扱いなので、管理官と言えども、1等船室は利用できなかったことです。

でも、2等船室も、それなりに良かったです。


ボーナ商店に発注した紙は、幸いな事に、同じ船の貨物として輸送できました。

これも、国務館とボーナ商店の力の成せる業らしいですが……詳細は知りません。

問題が無ければ、私としては、良いのです。


王都に着いた私は、宿を取って、王宮に向います。


同行をお願いした、リーサさんに、宿での荷物の開梱をお願いしました。

その後、今日は、適当に王都見学をしていて良いと伝えます。

リーサさんに、王都に同行をお願いしたら、二つ返事で承諾してくれました。

何故か、凄く喜んでました。でも、王都よりマリムの方が素敵な街なんですが……良く分りません。


王宮で、考案税調査部門を訪ねて、ダナ管理官と面会しました。


「おっ。ジーナ久し振りだな。」


「はい。半月振りぐらいですね。」


「手紙では、アトラス領からの4年間の申請書の閲覧をしたいとあったので、一応準備してある。隣の会議室に全て集めた。

ただ、凄い量だぞ。

一体どうするんだ?」


「全て写して持ち帰る心算つもりです。」


「えっ?あの量をか?あんなもの一人で書き写すには、何年も掛るぞ。

一緒に誰かを連れて来たのか?」


「いいえ。一人ですよ。

ただ、侍女さんが一人付いてきてくれてます。

実はですね。

ふふふ。私、魔法が使えるようになったんですよ。」


「ん?何を言っているんだ?ジーナは魔法なんて使えなかっただろ。」


私は目の前に、親指二つ分ぐらいの水玉を魔法で作ります。

それを管理官の目の前で、4つに分裂させて、互いに互いの周りを回して見せます。

複写の魔法を毎日訓練していたことで、少しだけ魔力も増えたみたいです。


「えっ。これジーナが出したのか?」


「ええ。私の魔法です。」


そう言って、すぐに水玉を消します。


「本当に魔法だな。ジーナは魔法が使えるようになったのか?

また、どうやってそんな事が出来るようになったんだ?」


「これは、私も良く分らないんですよね。ニケさんと一緒に、踊っていたら、突然、魔法が使えるようになったんですよ。

今、アイルさんが、私や神殿の修道士や司祭を実験対象にして、魔法について研究していますから、その結果が出ると、分るかもしれないです。」


「はぁ。何だか、ジーナには驚かされるな……。

よりによって、魔法かよ……。

……

いや、いや、いや、ちょっと待て、魔法が使えるようになったとしても、書き写すのとは何の関係も無かろう?」


「そっちは、ニケさんに複写の魔法を習ったんです。この1週間ほど一向ひたすら練習を重ねて、1秒に6枚ぐらいの書類を複写できるようになりました。

ですから、アトラス領の考案税申告書が多くても、それほど時間を掛けずに、写しを作成できるはずなんです。」


「は?

何だ、それは?

あの大量の文書を、それほど時間を掛けずに、写しを取るだと?」


「ええ。そうです。間も無く、アトラス領から、大量の紙とインクが届きますので、届き次第、作業を始めます。」


「ふーん。それは……吃驚だな。」


「それで、侍女のリーサさんが、会議室に入るのを許していただきたいんですよ。

文書を整理するのを手伝ってもらいたいんです。

もし、調査中のため、許諾判断が付いていない文書で、関係者でない者が立ち会うのがダメなモノがありましたら。私が一人で作業しますが。」


「まあ、既にアトラス領で申請済の文書だから、全て大丈夫だろう。

はぁ。

まあ、そっちの方は、本筋じゃないから、好きにやってくれ。」


先刻から、ダナ管理官は溜息ばかりいてますね。

私もこの半月の変化は、吃驚ですから、仕方が無いかもしれません。


「それで、国務館の立ち上げの進捗の方はどうなっているんだ?」


「今の段階で、アトラス領で、過去に考案税申請書を作成した経験の有る人を19名確保できました。」


最終的に、アトラス領の文官さんは11名になりました。全ての担当文官さんが、王宮職員ということを承諾してくれました。

そして、ボーナ商店から4名、エクゴ商店から2名、コラドエ工房とレオナルド工房から1名ずつです。


「この半月で、19人の経験者を採用するメドが立っているのか?何なんだそれは?」


本当のところは、赴任して2日でメドが立ったのですけど。態々《わざわざ》事を荒立てることはありません。

それで良いのです。


それから、アトラス領、各商店や工房で専門に申請書を書いていた人の移籍の承諾を受けている事を説明します。


「凄ぇこと考えたな。それで19人かよ。

こっちは、立ち上げの為にジーナを送ったのは良いが、流石に一人じゃ難しいんじゃないかと思って心配していたんだ。

さらに1,2名送らなきゃならないんじゃないかと考えていたんだよ。

今回、一時的に戻ってくるってことだったんで、その相談をしなきゃならないだろうと思ってたんだ。」


「えっ、追加で人を派遣してくれるんですか?

私としては諸手を揚げて、承諾しますよ。」


「いや……それはだな……。

大体、19人も職員を確保できたんなら、必要無いんじゃないか?」


「えっ、そんな事はありませんよ。一人で19人の面倒を見るのは、大変ですよ。

それに、私が病気で長期に休む事になったら、業務が止まりますよ。」


これは、嘘です。私は、アトラス領より衛生環境が悪い王都で皆勤賞でした。


「お前、これまで勤めていて、休んだ事無いじゃないか。」


「それは、心労とか、過労とか、そんな事も有るかもしれません。」


「……まあ、一人だろうな。

副管理官として一人出向させる。

それで、候補なんだが……」


「誰に決まったんですか?」


「国務館で補佐をする人員を募ったら、結構応募人数が居てなぁ。まだ決めてないんだよ。

ただ、お前より年嵩を食っているやつは、使い難いだろ。

お前の同期連中は、全員応募してきやがった。

オレとしては、お前の同期のヤツから一人ってところかな。

それ以上、そっちに取られると、こっちの仕事が廻らなくなる。」


同期の中から一人ですか。誰を選んでも問題になりそうな気がします。


「後輩に、適任者は居なかったんですか?」


「使いものにならなくてよけりゃ、居ない訳じゃないぞ。

ただ、お前の代は、ちょっと特別だからな。

優秀な若手が欲しければ、同期から選んだ方が良いと思うがな。」


そうでした。

私に連られて、かなり優秀な人が考案税の調査官になっているのが私の同期です。


うーん。困りましたね。


マリムには、私が居るので、アイルさんの担当をしていた人の方が良いんでしょう。

そういう観点では、残念ですが、私と一緒にニケさんの考案の担当をしていた、エドは除外になります。


アイルさんの考案の専任だった、パゾとサム。二人の共同考案を担当していたエルギスとマリエーレ。誰を選んだら良いでしょう。


二人を選べるんでしたら、パゾかサムから一人、エルギスとマリエーレから一人になるんですが、一人だけですよね。


パゾかサムだと、サムですね。パゾは優秀ですが、うっかりミスがとても多いです。

エルギスとマリエーレだとどちらでしょう。色々気付きがあるマリエーレの方が、新しい環境では良いかもしれません。

そうすると、サムかマリエーレのどちらかですか。

難しいです。


「随分と悩んでるじゃないか。オレは、マリエーレあたりが良いんじゃないかと思うんだがな。」


「えっ、どうしてです?」


「まあ、誰を選んでも、どうにかなるとは思うんだが、一つは、マリエーレが気配りできるってことだな。新しく立ち上げる組織だと、そういった事が大切だから。

ましてや、19人もの部下が居るんだったら尚更だろう。

あとは、ジーナと同性だから、遠く離れた場所に居て、同性にしか相談できない事も相談できるんじゃないか?」


そうですね。私もサムかマリエーレのどちらかだと思ってましたから。それで良いと思います。


でも、ダナ管理官は男性だから分らないかもしれませんが、女性同士もいろいろ有るんですよ。


まあ、でも、決めかねていましたから、ダナ管理官の推薦という事にしてもらえれば、それもアリですね。


「じゃあ、ダナ管理官の推薦っていうことで、マリエーレにします。」


「そうか。では、マリエーレに伝えておくよ。人事の手続が必要だから、赴任に1月ほど掛ると思うが、それまで待っていてもらえるか?」


「わかりました。それで、私が選んだんじゃなくって、ダナ管理官の推薦ということにしてくださいね。

私が選んだことにされると、同期の中で、色々面倒ですから。」


「ああ。そういう事もあるんだろう。分った。オレが選んだと、お前の同期連中には伝えておくよ。」

ついに、200話になりました。

ここまで続くとは思いませんでしたが、継続的に読んでいただいている読者の方のお陰です。

とても励まされました。ありがとうございます。

今後も、読んでいただけたら嬉しいです。

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