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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
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8.複写魔法

領主館のホールに着くと、そこには、ウィリッテさんの他に、ダムラック司教が居ました。


司祭服に身を包んだ司教様は、神々しく、威厳が有ります。


「あら、ジーナさん。いらっしゃい。昨日の魔法は使えていますか?」

ニケさんから声を掛けられました。


「昨日に引き続いて、訪問させていただきました。

ニケさん達のお陰の魔法は使えています。」


私はそう言って、魔法で、水玉を4つ出して、互いの周りを回して見せます。


「わっ。もう制御できるようになってるんですね。」


「わぁ、面白い。」「ボクもやる。」


フランさんとセドさんが、私の魔法を見て真似始めました。

見て直ぐに真似る事が出来るんですね。

私の水玉より、二回り以上大きい水玉が互いの周りを廻っています。

段々分裂して、16個以上の数になってます。

流石です……一瞬で、4歳の子に負けました……。


「ニケさん。今日はダムラック司教もいらっしゃるのですね?」


「そうね。でも、しょっちゅう来るのよ。

食いしん坊で、酒飲みのオッサンよ。

今日の夕食は、新しいメニューを出すことにしたから来たんじゃないかしら。

厨房に神殿の『スパイ』が居るのに違い無いわ。宗教は、油断も隙も無いわね。」


何か、ニケさんは不穏な事を言っているみたいです。でも『スパイ』って何でしょう?

ウィリッテさんは、ニケさんの発言を聞いて微笑んでいます。


こっそりウィリッテさんに聞いてみました。


「ウィリッテさん。『スパイ』って何ですか?」


「ふふふ。『スパイ』って、諜報機関の職員の事らしいですね。

でも違いますよ。

司教様が、厨房の侍女さんの誰かに、新しいメニューが出る時には教えて欲しいと頼んでるんじゃないかしら?」


やっと、ニケさんの話の内容が理解できました。


今日も、アウド様ご一家と、ソド様ご一家、セメル様ご一家が一緒に居ます。


「いつも、アウド様、ソド様、セメル様のご一家で一緒に夕食を摂られるのですか?」


「ええ。昔からそうでしたね。

ニケさんは、1歳の時に大魔法使いだと判って、安全のために領主館にお住まいでした。

でも、今は、アイルさんとニケさんは、婚約されたので、不思議でもなんでも無くなりましたけど。

セメル家の末っ子のカイロスさんは、アイルさんとニケさんと一緒の事が多いです。グルム様に、お二人の補佐役をするように言われているそうです。


アトラス領は昔からアイルさんとニケさんが様々な物を生み出して、産業が起ったことから色々大変だったんです。

アウド様、ソド様、グルム様は夕食の時に顔合せして、食後、領地の事を話していましたね。今は侯爵になられた事で、更に忙しくなって、夕食の時ぐらいしか一緒に居られないのかもしれません。


奥様方のフローラ様、ユリア様、ナタリア様は仲が良くて、一緒に居ることが多いです。セリアさんもお三方と一緒の事が多いです。」


「じゃあ、夕食はいつも三家そろって食べているんですか。」


「そうだと思います。でも、一番の理由は、ニケさんが時々新しいメニューを出しているからかもしれません。ニケさんが考えられる食事は、何時も好評なんです。

食べる機会を逃したくないんでしょう。」


何となく分る気がしますね。

あっそうそう。肝心なお願いをニケさんにしておかなければなりません。


「ニケさん。今日は、複写魔法を教えてもらえないかと思って訪問したんです。教えてもらえないですか?」


「えっ、複写魔法ですか?そんな私しか使っていない魔法の事、良く知ってますね?」


「博覧会の時に、展示説明を作るのにニケさんが使ってましたよね?」


「あっ、あそこで見たんですね。それで、ジーナさんは、あの魔法を使いたいんですか?」


「ええ、そうなんですけど……。私にも使えると思いますか?」


「ジーナさんは、魔法が使えるようになって、制御も出来る様になっているみたいだから、使えそうな気はしますね。でも、何故その魔法を使いたいんです?」


「私の仕事は、考案税の申請書の調査です。考案税が承認されるのは、過去に同じ考案が無い場合に限られるんです。

だから、過去の記録がとても大切なんです。

記録するために、申請された内容を手で書き写さなければならないのですけれど、人手が掛って大変なんです。

あの魔法が使えれば、業務量を大幅に減らせるんですよ。」


「あっ、『特許』もそうだったわね。」


「えっ?トッキョですか?何です、それは?」


「ジーナさんは、神の国の知識って話は聞いてますか?」


「ええ。爵位授与式の時に聞いてます。アイルさんとニケさんが色々なものを考案しているのは、神の国の知識だという話ですよね?」


「そうです。その神の国と言われている場所では、考案税と似た制度が有るんです。

考案税と違うのは、考案した人がd18(=20)年間、実施する権利を持っていて、独占することが出来るんです。他の人が実施する事を禁止したり、大金で権利を売ったりできます。

代りに、権利期間が過ぎると、無償で、誰でも使えるようになります。

どちらの制度が良いかというと分りませんけどね。

私とアイルにとっては、実際に作るのは人まかせなので、考案税の制度の方が都合が良いかもしれません。」


「へぇ。神の国にもそんな制度があるんですか。でも、独占すると、皆困りませんか?」


「だから、権利期間が限られているんですよ。

肝心なのは、新しい考案を促しているという事でしょう。

なんか、複写魔法と関係無い話になってしまいましたね。」


そう言って、ニケさんは微笑んでいます。

でも、その通りだと思えます。今後、世の中が変っていったときに、考案税の仕組も変わる必要が出てくるのかもしれません。


「まだ、夕食の時刻まで時間がありますから、複写魔法について説明しましょうか?」


「ええ。お願いします。」


二人で話していたら、何時の間にか、ウィリッテさんが、右後ろに、アイルさんが左後ろに居ました。


「あれ?アイルとウィリッテさんも興味があるんですか?」


「そりゃぁまあ、ニケの独自魔法みたいなものだから……興味があるだろ。」


「私が居たころは、転写魔法と呼んでいたものですよね?できれば私も使えないか試してみたいです。」


「へへへ。緊張するなぁ。じゃあ、ちょっと待ってくださいね。準備しますから。」


ニケさんは、お付きの侍女さんの一人に声を掛けて、必要なものを取りに行かせました。


侍女さんが、何かの書類と、何も書かれていない紙、インクを持ってきました。


「じゃあ、この文書を、こっちの白紙に複写しますね。」


ニケさんは、字が書かれてある書類を見ます。その瞬間、インク壺からインクが霧のように舞い上がって、白紙のまわりに移動した瞬間、白紙には書類と同じ文書が現われました。

両方の書類を見比べると、全く同じになっています。


「こんな感じです。こっちの文書を頭に焼き付けて、魔法を使うと、自動的に何も記載されていない白紙に同じ文書が描かれるんですよ。」


何をしたのか全く分りません。頭に焼き付けるって何なのでしょうか?


「変形の魔法のまんまじゃないか?」


「何が書いてあっても、そのまま移せるんですか?以前は、ニケさんが作成した文書を小さな紙に転写していましたよね。」


「えっと、頭の中に、紙に書いてあることを、そのまま書き込むって、どうやって……。」


「えっ、皆で一斉に話をしないでよ。

アイルが言うように変形の魔法なのかもしれないけど、今は、変形している感覚は無いわね。

ただ、書類の上にある模様を頭の中に写し込んで、インクを操って、おなじ模様で紙の上に乗せているのよ。

以前転写の魔法と言っていたときは、確かに私が書いたものを転写していたんですけど、今は、紙の上に記載されているものなら、そのまま複写できるようになったんです。それで、複写魔法と呼ぶようになったんですよね。

だから、何が紙の上に書いてあっても、そのまま移せるの。

逆に、書かれている文字を読んじゃうと上手くいかないのよね。」


「じゃあ、何が書いてあっても、正確に頭の中に思い描いているだけなんですか?」


「そうですよ。正確に思い描くというか、頭の中に焼き付けるというか、そんな感じ。

ぱっと見て、そのままの像を、目を瞑っても頭の中に浮ばせることってできるでしょ?」


「普通無理だろ。それ。」


「そうですね。ニケさんの頭の中ってどうなっているんですか?」


「えぇぇ。見たまんまを頭の中に思い浮かべれば良いだけなのに。」


私もアイルさんとウィリッテさんに賛成です。とても普通には無理な感じがします。


「じゃあ、じゃあ」とニケさんは言いながら、紙の真ん中に何かを描きました。

何だか可愛らしい、動物のような絵です。でも、頭が大きいので、こんな動物は居ませんよね。


「これを、ジッと見て、目を瞑って、これを思い描くのってできるでしょ?」


確かに、小さな絵ですから、そのまま頭の中で再現する事が出来ますね。


アイルさんが、絵を見て、インクを紙の上に移動させてました。

同じ絵が紙の上に現れました。


「なるほど、小さい絵だと出来るんだ……。

これを紙全体に書かれたものでも出来れば、ニケの複写魔法になる訳なんだな。

解ったような気がするけれど、紙全体に書かれているものは、難しいよ。

やっぱりニケの頭の中、何か変だよ。」


「変、変、言わないでよ。言うんだったら、素晴しいとか、凄いとかでしょ。」


「ああ、悪い。確かに凄いな。」


隣では、ウィリッテさんが、目を瞑って、真剣な表情をしてます。

ウィリッテさんの前に有る紙の上に絵が描かれました。


「ダメね。何か同じにならないわ。邪念が入ると、形が崩れるわね。」


ウィリッテさんが描いた絵は、形は似ているけれど、頭が随分と小さい動物の絵になっています。


「ニケさんが、字を読んでしまうと上手くいかないというのは、きっと、こういう事なのね。

何も考えずに、描かれているものをそのまま頭に思い描かないと上手くいかないみたいだわ。」


流石、二人とも上級魔法使いです。あっというまに、同じ様な事が出来ています。

私にも出来るのでしょうか。


まず、インクを操作しないとなりませんね。インクを霧状に持ち上げることを思い描きます。

なんか、出来たみたいです。それを紙の方に移動させて。

ニケさんが描いた絵をそのまま思い浮べます。

ウィリッテさんの話だと、余計な事は考えてはいけない。絵に集中。

紙の上に、同じ絵が描けました。


「わっ。出来た。」


とっても嬉しくなりました。


「本当だ。ジーナさん。凄いわ。才能あるんじゃないの?」


「そうだな。昨日始めて魔法が使えたとは思えない。やっぱり魔法って何なのか研究するべきだな……。」


「凄いわね。私と違って、全く同じ絵になっているわね。」


「ニケさんとアイルさんとウィリッテさんの会話が参考になりました。ありがとうございます。

でも、紙1枚分全てっていうのは、難しそうです。」


「じゃあ、こんな風にして練習するのはどうかしら?」


ニケさんは、紙の上部1/d20(=1/24)だけを見える様にして、あとは、何も書いてない紙で隠してくれました。


「あっ、これなら出来るかもしれませんね。」


「そうでしょ。この範囲を広げていって、紙1枚分にしていけば良いだけなのよ。」


早速試してみました。

なかなか上手く行きません。


「うーん。難しいです。」


「そうなのよ。難しいのよ。ダイヤモンド作るのだって、私、とっても苦労したんですよ。」


「でも……あとは慣れだろう。いや、やっぱり変だよ。ニケの頭の中は。」


ニケさんが、アイルさんを睨んでます。


幸い、私みたいに、魔力が小さくても、複写の魔法は使えるみたいです。

ただ、紙1枚分が複写出来るようになるのには、まだ、まだ、練習が必要そうです。


食事の準備が出来たと言われました。

席に着きます。


なんと、ダムラック司教は私の隣でした。

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