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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
183/368

12W.サンドル家

アトラス侯爵1世号は、ゼオン港を出て、ガリア港に着いた。

領都ゼオンから、王都ガリアへは、馬で走れば半日ほどの距離だ。

船なら、1とき(=2時間)ほどの航海だ。


港に着いてみると、埠頭は人で溢れていた。


接岸してから船の外に出て、埠頭に様子を見に行った騎士さんの説明では、来週の爵位授与式の主役が、今日、船で着くという噂が広まっていて、人が集まっているらしい。


甲板から、私はアイルと埠頭を眺めた。


「船が着く時間なんて、皆知らないはずよね?」


「今日着くってことだけは知ってたんじゃないか?朝から待っていたのかな?」


「こんなに、人が集まるような事なのかしら?まるで、大物歌手の凱旋みたいね。」


「うーん。何なんなんだろう。ノルドル王国に勝利した領主だからかな?それとも陞爵って珍しいからかな?」


二人で、しばらく、下の様子を窺っていた。人々の口からは、ノルドル王国の戦勝を喜ぶ声や、侯爵に陞爵した事を喜ぶ声が、風に流れて伝わってきている。


「集まっているのは、長年、ノルドル王国に悩まされていた商人が多いようですね。」


いつの間にか私達の後ろには、ウィリッテさんが居た。


「戦争前に交戦するかどうかを打合せていた時、ノルドル王国の事を非難してましたけど、被害は酷かったんですか?」


「ええ。一昨年あたりはかなり酷くなっていました。ガラリア王国北部の領地では、度々盗賊に扮したノルドル王国の騎士が暴れていました。

時期を見て、テーベ王国とノルドル王国が連携してガラリア王国へ攻め込む心算だったのでしょう。その前哨戦だったのかも知れません。

昨年、ノルドル王国が無くなってしまった為、騎士くずれの盗賊がしばらく暴れ廻ってたようですけれど、それも次々掴まって、被害は大分減ったと聞いています。」


「やっぱり、ウィリッテさんは『女スパイ』なんですね。詳しいですね。」


「オンナスパイ?何ですか?それは?

私はそれほど詳しい訳じゃないです。

王都ガリアと、ノルドル王国の旧王都ノルドルは、比較的近いんです。

ガリア川の支流のアトラス川で繋がってますから、商取引が多かったですね。

被害の状態は王都の商人の噂として伝わっていたのを知っているだけですよ。」


「ウィリッテさんは、商売をしていたんですか?」


「ええ。小粒ながらもダイヤモンドが作れるようになって、加工業者に卸してました。だから、商人の噂話も自然と耳に入りました。」


そんな話をしていたら、荷物が下されて荷馬車に積まれ、馬車や馬の準備が出来たみたいだ。

この人混みの中を歩いて移動するのは、大変そうだな。

馬車を積んできて正解だったね。


王宮とアトラス領の騎士さん達が馬車の周りをとり囲んで、人混みを抑えている。

騎士さん達に守られた馬車に、私達は乗り込んだ。


全部で46台の馬車に、ゼオン家の王都屋敷に向う人と、私達サンドル家に向う人で分かれて、全員が馬車に乗り込んだ。

馬車は、人混みの中、ゆっくりと王宮方面へ移動する。

私の馬車には、アイル、ウィリッテさん、フランちゃん、セドくんと一緒だ。


道沿も凄い人だった。王宮の騎士さんたちが路を確保している。


沢山の人でごった返す道をゆっくりと王宮方面に向って進んでいく。


途中で、ゼオン家へ向う人達と分かれた。ゼオン家のアイルの親戚の人達は、全員、一旦、ゼオン宰相の王都屋敷へ向った。


私達は、私のお祖父様のサンドル伯爵の屋敷へ向う。


目の前に、王宮が見えてきた。やっぱり王宮ってだけあって大きいね。

高い城壁が続いているため、中は見えないんだけど、城壁の長さが尋常じゃない。

遠目には、奥の方にある、大きな建物の上部だけしか見えない。


中はどうなってるんだろう。

爵位授与式の時には見ることができるんじゃないかな?楽しみだ。


暫くの間、城壁沿いの道を進んでいって、馬車は城壁にある一つの門の中に入っていった。


「ねぇ。アイル。城壁の門を潜ったってことは、ここは王宮の中なのかな?」


「王宮の方に別な城壁の様なものが見えるから、別な敷地じゃないか?」


「ここは、サンドル家が拝領している土地で、あの城壁の向こうが王宮ですよ。

近衛騎士団は、王家を守る騎士団なので、代々近衛騎士団長をしているサンドル家は、王宮の隣に敷地を持っているんですよ。」


ウィリッテさんが、私達の疑問に応えてくれた。


しばらくの間、敷地内の林を通る道を進んでいた。林が開けたところに屋敷が有った。

馬車は屋敷の前に辿り着いた。


この屋敷も……大きいね。

ゼオン公爵家の領主館とあまり変わらないかも。


馬車が屋敷の門の前で停まった。

屋敷の大きな門には、騎士さん達に囲まれて、何人もの人たちが待っていた。


「お父さん、お母さん。お久しぶりです。これから少しの間、お世話になります。」


ユリアお母さんが、中年の男性と、女性に声を掛けた。あれが、私のお祖父様とお祖母様なんだな。


男性の方は、お父さんと同じぐらい大きな人だ。多分大きいだけじゃなくて、筋肉の付き方が凄いのだろう。


女性は、お母さんと良く似ているな。スタイルの良い、綺麗な人だ。

あれがお祖母様だとすると、現国王の妹で、宰相閣下のお母さんの妹だよな。

なんて事をぼんやり考えていたら、突然体が宙に浮いた。


「ニケ!会いたかったぞ!可愛らしい娘だ。会いたかった!」


耳元で聞こえる突然の声に吃驚したら、お祖父様の顔が目の前にあった。


「えっ?お祖父様?」


「おう。そうだ、お前のジイだ。良く来たな。」


確か、何歩分以上も離れた所に居たと思ったんだけど……何時の間に、私の側に来たんだ?


お祖父様越しに見ると、やっぱり、お祖母様の立っている場所からかなり距離がある。その上、抱いているというより、両腕を私の脇の下に入れて、私を持ち上げているだけだ。

私は、特に苦しくも痛くもない。私を掴んだりせず、ただ上に持ち上げているだけみたいだ。


多分、お祖父様は、お父さん以上に筋力があるんだろう。


「あら、あら、シアオさん。ニケさんが驚いてますよ。」


「おっ。そうか。驚いたか?悪かった。」


ふわりという感じで、下に下された。


「皆、良く来た。挨拶は後だ、まず、家に入ってくれ。」


えっと、今のって、挨拶……だよね。


家に入って、広い居間に移動した。


お母さんの親族勢揃いだった。


近衛騎士団長のシアオお祖父様、奥様のロゼルお祖母様。

お母さんのお兄さん夫婦家族は、マルコ伯父さん、奥さんのリリア義伯母さん、息子のマノンさん、その妹のリザベルさん、一番下の息子のアダルさん。

そして、お母さんの弟のロキ叔父さん。

マルコ伯父さんもロキ叔父さんも騎士団に所属だ。お祖父様同様、体格の良い人達だ。

ロキ叔父さんは未だ結婚していない。

マルコ伯父さんの子供達の年齢は、私達より大分上のようだ。


お互いに挨拶をして、居間の中央のテーブルに着いた。


「よく来てくれた。ソドとは去年の戦争の時以来だな。

アウドとは、随分と会っていないな。オルムートのところに居た時以来だから。12年ぐらいは前か。

何度もムセンキといやつで、声だけは聞いていたんだが、あのムセンキってやつは、お前の息子が作ったらしいな。

ニケとセドは初めてだな。本当に良く来てくれた。」


「ユリア。本当に久し振りね。フローラさんも。二人とも、アウドやソドに、アトラス領に付いて行ってしまって、本当に長い間、行きっぱなしなんですもの。

アイルくんと、フランちゃんは、初めまして。」


私達子供の前には、揚げ菓子とベリーのジュースが置かれた。


「何時まで、王都に居るのだ?」


「20日が爵位授与式なので、その翌日か翌々日には帰る予定です。」


「なんだ、1週間ほどしか居ないのか。領地は、そんなに忙しいのか?」


「先々月に博覧会というものを催したのですが、それに間しての要望が多数来ています。このところ、その対応に追われています。」


おや。アウドおじさんが、最近忙しそうにしていたのは、そんな理由わけだったのか。


「王都でも、アトラス領の事を良く聞く。随分と発展しているらしいな。

それを見せたられたのなら、周辺の領主達は、少しでもあやかろうと思うのだろう。」


「金を積まれても、渡せないものがあるので、その調整が大変です。」


「なるほどな。まさかとは思うが、それは、あの装甲車の様なものではないだろうな?」


「いえ、いえ、あれは軍事的なものですから、周辺の領地は存在すら知らないと思います。

昨年の戦争で使った装備や道具は一切公表してません。

近隣の領主が欲がっているのは、主に電気に関わるものが多いですね。」


「電気というのは、あのムセンキで使っているものか?あれの何が問題なのだ?」


「それは、ニケじゃなければ作れないものがあるからです。」


一瞬で、お祖父様の表情が険しくなった。

流石、近衛騎士団長さんだね。殺気の様なものが部屋中に漂ってるよ。


「あら、あなた、子供達が怯えますから、抑えてくださいな。」


「おっ。すまん。怯えさせてしまったか?それは、ニケの魔法に関係しているのか?」


「ええ。そうです。電気には、ニケの魔法でなければ作れない物を使う重要な部分があるんです。それを作ることは、アイルを含めて、どんな魔法使いでもムリらしいです。」


「はっはっはっ。そうか、ニケは凄いな。

ウチの家系では、ガリム・サンドルの息子で、アトラス家の始祖となった、マリエム以降、傍系含めて、魔法使いは出ていないのだがな。

ニケが我が家系では二人目の魔法使いだ。

それが、そんなに凄い魔法使いだとは。

嬉しいものだな。」


それから、私やアイルの魔法の話になった。

私達の魔法が、どれだけ珍しくて凄いのかを両親達が話している。

少し恥しいね。これは。


鉄や剣を魔法で作った話は、お祖父様や伯父さん達に好評だった。

小麦粉から砂糖やお菓子を作った話は、お祖母様や伯母さん達に好評だった。


そんなに美味しいものならと、小麦粉から魔法で砂糖を作らされた。

もう、慣れているので、小麦粉を持ってきてもらって、小麦粉を砂糖に変換する。

出来上がった白い粉を舐めてみて、皆吃驚していた。

純粋な糖なんて、この世界では無いものだからね。


お祖父様達は、私達に剣を作ってもらいたがった。

でもねぇ、原料が無いんだよな。

鉄鉱石なんて、広い敷地の中でも見付からないだろう。

流石に何も無いところから、魔法を使ったからと言って、剣にするほどの鉄を生み出すことなんて出来ないよ。

ひょっとすると、核融合すれば作れるかなと思ったけど、流石にやった事は無いし、どれだけ危険なのか分らない。


しばらく、お祖父様達はブツブツ言っていた。

馬車を解体したらどうだろうかなどと言っていたけど、お祖母様の一睨みで大人しくなってしまった。


女性が圧倒的に強いね……この世界は。


アトラス領から随行してきた侍女さんに、砂糖を使って、夕食後に間に合う様にクッキーを焼いてもらうことにした。


ほどなくして、夕食の時間になった。


夕食は、肉が過多な食事だった。

焼き立ての肉は美味しかったけど、私には量が多すぎた。


夕食後、侍女さん達が作ってくれたクッキーを食べながら、明日以降の予定を相談する。

サンドル家の人達は、これまで食べた事の無い甘味に大喜びだった。


明日は、王都で買い物をしたいとセリアさんが強く主張した。どうしても王都で買い物をしたいと言って利かなかった。


1週間しか滞在しないので、買い物の機会を逃したくなかったのだろう。


結局、特に用事が有る訳でもないので、明日は王都のお店を廻ることになった。


お母さんとフローラおばさんは、10年以上、王都から離れていたので、今の王都について自信が無かったみたいで、ロゼルお祖母様に案内をお願いしていた。


お祖母様もその心算だった様で、王都のお店を案内をしてくれることになった。

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