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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
182/369

12N.ウィリッテさん

「ウィリッテさん!」


ニケが立ち上がって、ウィリッテさんの元に駆け寄った。

そのまま、ウィリッテさんに抱き付いた。


「あら。ニケさん。大きくなりましたね。ご無沙汰してしまいました。」


ニケとウィリッテさんは別れる前には随分と仲良くなっていたからな。

その所為もあって、別れた直後はかなり落ち込んでいたけれど。


あれ?さっき、お祖父様は、王国国務館の館長って言っていたな?


「お祖父様。ウィリッテさんが、国務館の館長になるんですか?」


「ああそうだ。ウィリッテ・ランダンが、国務館の館長になる。アウドとソド、アイルとニケさんは、ランダン嬢の事を良く知っているのだろう?」


「ボク達に、この世界の事を教えてくれた先生です。」


「しかし、ウィリッテさんは、ジュペト殿の部下だったのでは?」

父さんが、訝し気にお祖父さんに聞いた。


「以前は、そういう関係にあったが、昨年、ジュペトの元を辞めている。

ランダン嬢は優秀な魔法使いらしいな。

ニケさんが得意な分離魔法が使えるという話だ。

貴重な宝石を魔法で作れるようになったことで、諜報機関から離れて、自活するようになったと聞いている。」


「へぇ。そうなんですね。ダイヤモンドですか?

アトラス領に居たときには成功しなかったのが出来るようになったんですね。」


ニケがウィリッテさんに抱き付いたままウィリッテさんを見上げて言った。


「ええ。これもニケさんのお陰です。」

ウィリッテさんが微笑んでいる。


「その所為で、ウチは優秀な部下を失なった。」

忌々し気にジュペトさんが言い放った。


「まあ、それは個人の自由ってやつだ。

それに、ランダン嬢は、もう、十分に働いたんじゃないか?

アイルとニケさんを見出して、オルシ伯爵の不正を暴いている。」


「まあ、そうです。だから優秀と言ってるんですよ。」


「今は上司と部下という関係では無いが、王国国務館の運用が始まったら、王宮とは連絡を密に取る必要がある。

国務館は、アトラス領の動向を見て報告してもらうのと同時に、治安面での対応もしてもらわなければならない。

特に二人の安全という観点で、他国からの動きを見ておくのはとても重要だ。

そういう観点から、元諜報機関にいたランダン嬢を二人の側に置いておくのは都合が良いのではないか?」


「アイル達が他国から狙われるのですか?」父さんが驚いて反応した。


「いや。用心をした方が良いという事だ。

しかし、私の孫のアイルも、シアオの孫のニケも、国内外の貴族達から守らなければならないとは、頭の痛い事だ。

まあ、国内の有象無象の貴族達は、二人が婚約する事で大方抑えられる。

しかし、国外、特にテーベ王国の動き関しては、ジュペトに頼る他は無い。

ジュペトくれぐれも頼むぞ。


さて、そろそろ、アイルやニケさんは、就寝の時刻だ。


明日から、ランダン嬢は、アトラス領の一行に合流する。

積る話もあるだろうが、明日以降にな。」


お祖父様のその言葉で、オレ達は執務室を出た。

与えられた部屋に戻って、侍女さん達に手伝ってもらって湯浴みをする。


湯に入りながら、ニケの事を考えた。

油断していたな。

ニケと婚約する事は、決定していると思っていた。

ただ、それはアトラス領内での事だ。

お祖父様に認めてもらえなければ、実現しなかったのかもしれない。

良く良く考えれば、分りそうな事だった。


これだけ、この世界を変えてしまうような事をしていて、権力者がどう見ているのかという視点は全くなかった。


結果的には問題無かったのだが。

これからは気を付けないとダメってことなんだろう。


ニケが涙目で言っていた台詞も思い出した。


「えっ、嫌ですよ。そんな事するんだったら、私、アイルと全力でガラリア王国から逃げます。」


二人でだったら……逃げ出す事もできるかもしれない。


魔法がある事が大きいな。

魔法が無かったら、どうなっていっただろう。


まあ、魔法が無かったら、こんな事で悩むような事態にはならなかったか。


とにかく今日は精神的に疲れた。


無事に済んで良かったよ。


ーーー


昨日の宰相閣下との話で、私はアイルと婚約できる。

とりあえずは良かった。


昨日は、本当に久々にウィリッテさんに会えた。

元気そうで良かった。


でも、ウィリッテさんって、女スパイだったんだね。


ビックリだよ。

ふふふ。女スパイに教育をしてもらったんだ。なかなか無いぞ。これは。


ウィリッテさんは、魔法でダイヤモンド結晶を作れるようになったんだ。

そんなに難しく無いと思うのは、私やアイルだからだろうな。

ウィリッテさん、かなり苦労していたからな。


朝食の前に、昨日、写真を撮った人たちに、出来上がった写真を渡してあげた。

皆、喜んでいた。

現像作業をしていた助手さん達は、夜遅くまで掛ったみたいだ。

感謝しかないね。


朝食の時には、ウィリッテさんも一緒だった。


朝食の時に、ウィリッテさんから、最近のアトラス領の事を色々聞かれた。

爵位授与式が終わったら、アトラス領に一緒に行くと言っていたから、色々気になっている事があるんだろうね。


私もウィリッテさんに、何か、色々聞きたいことがあるような気がしていたんだけど……何を聞きたかったのか、何だか分らなくなってしまった。


昨日、いろいろ有りすぎた所為だよ。


しかし、国王陛下は、何を勝手な事をしようとしていたんだ。

まったく、油断も隙も無い。

私とアイルの結婚を邪魔するなんて、酷すぎるよ。


まだ、私もアイルも子供だから、まずは婚約なんだよね。


でも、婚約って、何をするんだ?


前世では、どちらかがプロポーズして、プローズを受けたら、家族に紹介してぐらいかな?

婚約式ってあるんだっけ?

結婚式は知っているけど、そんなもの有ったかな?


あっ。両家の顔合わせってのが有ったみたいだな。


婚約指輪って、何時渡されるんだ?


ん。プロポーズの時だったっけ?


そう言えば、映画かドラマで、プロポーズの時に女性の前に男性が跪いて、指輪ケースを掲げているシーンを見たことがあるな。


こんな事なら、妹に聞いておけば良かった。


妹が結婚した頃って、米国に居たんだよな。

妹の結婚式の為だけに、日本に帰国した記憶がある。


あっ、でも、それって、前世の場合だよね。


この世界では、どうするのだろう?


そもそも、アイルとの婚約の場合、両家の家族の顔合せなんて……必要ないよね。


何かする事があるんだろうか?

ふーむ。謎だ。


早朝には、アトラス侯爵1世号は、ゼオン港に戻ってきていた。

早めに王都に到着しておいた方が良いという事で、今日の昼過ぎには、ゼオンを離れて、王都ガリアに移動する。


撮影スタッフしている助手さん達が機材を荷車に積み込む為に、バタバタしている。


船の方が移動が楽だという事で、爵位授与式に参加するアイルの親戚一同も一緒に船で移動する。


どうやら、爵位授与式そのものが、世紀のイベントなんだとか。

男爵への陞爵というのは、ごくまれにあるらしいけど、態々爵位授与式という式典はしないんだそうだ。

男爵陞爵の時には、国王陛下と侯爵が集まったところで、爵位を授与すると宣言するだけらしい。


前回、爵位授与式として、王国内の貴族を集めて式典を実施したのは、東部大戦の直後だったそうだ。

なので、80年行なわれた事が無いんだって。

やっぱり戦争で功績を上げたら、そういった式典が必要なんだろう。


それでなんだな、昨日のアイルの伯父さんや伯母さんの熱狂的な質問の嵐は。

それほどに珍しい式典が催されるんだったら、色々聞きたいよね。


そう言えば、朝から、アイルのお祖父さんの姿が無いね。

忙しいんだな。


私達は、その日の昼過ぎに、ゼオンの街を離れた。

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