表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
178/368

126.領都ゼオン

最初の目的地のゼオンに着く日になった。


昼過ぎには着くらしい。

それで、5日ほどの船の旅は一旦終りだ。


昨日の成果を聞いた子供の親達から、今日も踊って、魔法の制御の練習をして欲しいと頼まれた。

まあ、私としては、歌って踊ってるのは楽しいから良いけど。


アイルは早々に何処かに消えた。

子供達と踊ったりするのがイヤで、測量でも手伝ってるんだろう。


私は、午前中は歌って踊っていた。


時々、私が踊りから離れて水分補給している間にも、皆が歌って踊っている。

私が居なくても、一人で魔法の練習ができるんじゃないかな。


ゼオン港に着いた。ゼオンの港は、この船が停泊できるように事前に浚渫しゅんせつしてあるそうだ。


埠頭に接岸して、私達アトラス領から来た人達はアトラス侯爵1世号から下船した。


船に積み込んでいた馬車と馬を下して、その馬車に乗って、ゼオン領主館に向けて移動を始める。


キリル家と伯爵家の人達は、そのまま王都ガリアへ向けて出港していった。

アトラス侯爵1世号は、王都でお客さんを下したあと、ゼオン港に戻ってくる予定だ。


『なあ、ニケ。多分、宰相閣下には、転生の事を聞かれるんじゃないかな。』


『そうね。でも、既に知ってるんじゃないの?』


『そうだろうな……でも、何で、オレ達は、指名されて呼ばれたんだろう?』


『それも、誰が呼んだのか分らないわ。国王陛下なのか、アイルのお祖父さんの宰相閣下なのか、近衛騎士団長の私のお祖父さんか、それとも全員か。

戦争の時に、無線の通話で、孫を出せって叫んでたのは、わたしのお祖父さんだったかな?

単に会いたいだけかも知れないわ。』


『大丈夫だろうか?』


また、コミュ障が出てるわね。まっ。考えてもしょうがない。


『なるようにしかならないわね。』


『ニケは、よく、落ち着いてられるな。』


まったく……。


馬車から、外を見ると、流石に古くから発展している街だね。

大きな店も多い。年季が入った店構えや、角が丸くなった石畳、歴史を感じるね。

マリムは、街の改造を繰り返してたから、新しい建物と出来たばかりの街路だから違いがはっきり分るな。


馬車が通ると、人の目が此方を向く。馬車が珍しいんだろう。此方を見る目はしばらく馬車を捕えて離さない。


どこからともなく、嫌な臭いがするけど、多分、下水道を作ってない街はこんなものなんだろう。

海が近い所為か、風があるので、それほど酷くは無いかな。


そんな事を考えながら馬車に乗っていたら、街の奥にある、一際大きな建物が見えてきた。


先触れを出していたのかな。建物の前には騎士さん達が整列していた。騎士さん達の整列の間を馬車は進んでいく。建物の大きな庭の中に馬車が入ったところで、大きな門が閉められた。


建物は、4階建てだろうか?各階の高さが高い。前世で何か似た建物を見た記憶が……あっ、スミソニアン博物館の本部の建物が似ているかもしれない。

でも、あれより大きいね。


馬車が建物の大きな扉の前に着いた。ここにも騎士さん達が居る。

騎士さん達の奥に何人か騎士服を着ていない人が並んでいる。


馬車を降りて、入口の階段を上って、迎えてくれている人たちと対面した。


中年の女性が微笑みながらアウドおじさんに挨拶をしてきた。何となくフローラおばさんに似ている。


「ようこそ、いらっしゃいました。この度は陞爵、お目出当ございます。」


「お招きいただきありがとうございます。ところで、お義父とうさんは?」


「昨日、陛下と会議があったようです。今日は、こちらに戻る予定で、多分、夕食の頃には戻るはずですわ。

あらあら、こちらが、アイルさんで、こちらが、フランちゃん?そして、ニケさんと、セドくんね。船旅は大変だったでしょう。

さぁ、中に入ってください。」


何か、挨拶をしそびれたけど、大丈夫なんだろうか?お父さんやお母さんの顔を見て……大丈夫そうだな。

この感じだと、この年配の女性はアイルのお祖母さんのヘレナ・ゼオンさんかな?

まあ、後で自己紹介の機会があるだろう。


入口のホールは巨大だった。天井も高い高い。これが個人の邸宅か?吃驚だよ。


迎えの人達の後を付いて、ホールの奥の廊下を歩く。

うーん。これは廊下ではなく、通路だな。アーケード街の道の様だ。


フランちゃんとセドくんは、それぞれ侍女さんに抱かれて移動だ。


マリムの領主館も大分大きくなったけど、ここまで大きくないぞ。いや、比較するのが烏滸おこがましい程の違いだ。


暫く歩いて、大きな部屋に案内された。

中央には、大きなテーブル。椅子が24脚以上あるな。

壁際には、チェストが並んでいる。その上には、焼き物や、青銅の像が置いてある。

木の窓が開けられていて、中庭が見える。切り揃えられた植え込みが見えている。今は冬だから、流石に花は咲いていないな。


「改めまして、ようこそ、ゼオンへ。

アイルさんやフランちゃんとは、初めて会いますね。祖母のヘレナです。」


部屋の中程で、自己紹介が始まった。とは言え、自己紹介しなきゃならないのは、私やアイルといった子供達だ。多分、大人達は皆顔見知りだろう。


アイルとフランちゃんに引き続いて、私の番だ。教わったとおり、膝に負担の掛る挨拶をした。


「ニーケー・グラナラです。本日はお招きいただきありがとうございます。ニケとお呼び下さい。」


「あら、綺麗に挨拶できるのですね。えらいわ。」


ふふふ。褒められたぞ。練習した甲斐があったってもんだ。


「ニケさんは、アイルさんのお嫁さんになるのよね?」


おっと、突然何を言っているのだ、このオバさんは。どう返せば良いんだ?

思わず、お父さんを見てしまった。さっきまで笑顔だったお父さんの表情が厳しくなっている。


「いえ、まだ早いです。」


私の代りにお父さんが応えた。でも、いいのか、それ?相手は、王国宰相夫人だぞ。


「あらあら、ニケさんは、お父様に大切にされてるのね。で、ニケさんはどうなの?」


何なんだ、このノリは?

追求を緩めようとしない……。


「出来ればそうなりたいと思ってます。」


「まあ、聞いていた通りね。ふふふ。安心したわ。」


お父さんが睨んでいるが……知らんがな。大体、この世界に転生した段階で、私に、他の選択肢は無いぞ。


それから、セドくんが辿々(たどたど)しく挨拶をした後は、アイルの伯父、叔母、その子供の挨拶になった。


私達には、アイルの伯父さん伯母さん達が分らないので、それぞれ自己紹介してくれた。

アイルのお母さんのフローラさんは4人兄妹で、上に男の兄が二人、妹が一人だった。


一番上の兄のクルートさんは、魔力が無くて、ランドル商会の跡継ぎ娘のカテリーヌ・ランドルさんと結婚している。

ゼオン家の跡継ぎは、次男のジョセトさんで、その奥さんはアンナ・ゼオンさん。

そして、テルソン侯爵家に嫁いでいる妹のマリーナさんで、旦那さんはケンドン・テルソンさん。テルソン侯爵家の跡継ぎだ。


アイルの従兄姉の名前を全て覚えておくことはとても出来そうにない。

この人数を、一編に聞いたらムリだよ。

その上、何だか似た名前が多い気がする。


覚えるのは、最初から諦めた。救いなのは、家名が違うので、家名を聞けば、どの家の子供か判るってことぐらいだ。


「子供達は、子供達で仲良くしてね。」と言われて、フランちゃんとセドくんは、アイルの従兄姉達の元へ。部屋の端で一緒になった。

侍女さんが、トランプを出したので、皆でトランプを始めた。


私とアイルは、大人の席に拉致られてしまった……何故だ?


「ソド殿は、昨年の戦争では、大層な武功を上げられたそうですね。」

ケンドン侯爵嫡男の言葉で、昨年のノルドル王国との戦争の話になった。


陞爵を話題にするのならば、昨年の戦争の話はリンクするよな。

そうすると、アイルが作った、あんなものや、こんなものの話……それは、しても良いのか?

軍事機密じゃなかったっけ?


うーん。ますます、私やアイルがここに居てはマズい様な気がするんだけど……。


「アイルくんと、ニケさんは、随分と変わった魔法が使えるらしいですね。」


アウドおじさんと、お父さんが応対してくれているけれど。

大丈夫か?これ。


「戦争の時に使役していたと噂されていた魔物は、アイルくんが作ったものらしいけれど、あれは、どんなものだったんだい?」


おっと装甲車だね。あれ、王都でも走らせたっていってたから、目撃した人もそれなりに居たかもしれない。


「いや、あれは、軍事機密だから、どんなものであったかは、申し訳無いが、ここで話すことはできない。」

お父さんが、軍事機密だって切り捨てたな。


「アトラス領の変った装備は、防寒の為に、ニケさんが考えたって聞いたけど、それは、どんなものだったんだい?」


これも目撃者多数だろうな。

スキーウェアだなんて言っても、誰にも理解はできないよな。


「それも、軍事機密だ。ただ、冬に、大陸北部の厳寒の地で兵士を守るために作ったものであるのは確かだ。

そのお陰で、アトラス領も王国騎士団も兵を失なわずに済んだ。」


これ、私達は居ない方が良くない?


「あら、ニケさんは、騎士さん達のことを気付かって、衣装まで作ってしまうのね。素晴しいわね。」


アイルのお祖母様は、何か、変な方向に誤解してるかもしれない。これは大丈夫なのか?


「ガラスや鉄を作ったのは、ニケさんだと聞いているけれど、本当?」


…………


「今度、うちの商店が扱えるモノを作ってくれないか?」


…………


「そうそう、アトラス領では、鉄道というものが走っているんですってね。博覧会を視察した文官が色々教えてくれたわ。」


…………


「その鉄道というものは、王都まで繋げることは無いのか?そうすれば、アトラス領の品物を王都でも捌くことができるんじゃないのか?」


…………


「デンキというもので、夜でもマリムは明いって聞いたけど……」


話がどんどん加熱していく。アウドおじさんとお父さんはタジタジになり始めている。

私とアイルは、口を挟んで良いのか判断できなくて、ただ、微笑みを顔に貼り付けていた。


そんな時に、家令の人が部屋に入ってきて告げた。


「オルムート様が王都からお戻りになられました。」

ゼオン家の家系図を、「惑星ガイアのものがたり【資料】」のep11に載せました。

URL : https://ncode.syosetu.com/n0759jn/11/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ