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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり 1
163/369

113.紙製品

リリスさんお勧めの料理店を出ました。

料金は、管理官が、私の分も払ってくださいました。


今回のお勧めも美味しかったです。

やはり、アトラス領は海産物の産地だけあります。

魚介類が絶品です。


王都にも海があるので魚介類を調理した料理があります。でも、熱いまま食べるという事ができないので、冷えています。冷えた魚介類は少し生臭い臭いがします。

そんな事もあって、私はあまり魚料理は好きではありませんでした。

アトラス領に来てからは、魚介類が本当に美味しいと思えるようになりました。

これは、カトラリーのお陰ですね。

多分、ニケさんがカトラリーを考案するまでは、アトラス領でも冷えた料理を食べていたはずです。

暖かい状態で食べられるようになって、暖かい美味しい調理を工夫した料理人さんのお陰でもあります。


リリスさんは、帰る途上で、領都マリムの話をしてくれました。


鉄道が出来る以前の街の中心は、今日昼食を食べた「海の恵」があったあたりより南にあったそうです。

その頃ボーナ商店もその頃の中心部にあったため、近くにあった「海の恵」を贔屓にしていたそうです。

鉄道の駅がマリムの街中に出来て、街の区画整理をした際に、ボーナ商店やエクゴ商店などの大店は駅の側に移転しました。

その頃、商業ギルドも一緒に移ったそうです。


「移転しなかった店も多いんですよ。食料品を扱っている古くからある大店は、結局、半分も移転しませんでしたね。

街の区画が定まって、鉄道が実際に使われるようになって、移転しなかった事を悔んでいる店も多いらしいです。」


「なぜ、移転しなかったんですか?」


「鉄道の有用性が良く分らなかったんだと思います。

子爵領が侯爵領になって、アトラス領は、北に大きくなりました。

最初鉄道は、北の領地を治めるためやコンビナート間で生産品を移送するために作ったと言われていました。

食料品を扱っている商店の中には、自分達の商売とは関りが無いと思ったところが多かったみたいです。

アトラス領は魚介類が食料のなかで、高額で取り引きされてました。

海から離れるのも、引っ越すのにも、お金が掛かりますから、躊躇したんでしょう。

ウチやエクゴ商店は、アイル様やニケ様から、どんな事が出来るようになるのか事前に聞くこともできました。

その話を聞いて、一も二もなく、駅前の一等地に店舗を移すことにしたんです。

その所為で、ウチとエクゴ商店が向かい合わせになっちゃいましたけれどね。」


「……ボロスさんと、何かあるんですか?」


「いえ、別に。何かと言うと、向こうがちょっかいを出してくるんで、あまり近くに店を持ちたくなかっただけです。」


「幼馴染の仲良しさんってことなんですね。」


「な。な。なにを仰ってるんです。そ、そんな事は微塵もないです。」


「ふーん……。」


「まあ、駅に近いのは、何かと便利ですよ。」


誤魔化したみたいです。


「ウチは、北部の領地に亜麻や麻、綿の作付を増やしています。

エクゴ商店は、アトラス山脈の鉱山開発に取り組んでいるじゃないでしょうか。

それらの物は、鉄道で運ぶのが合理的なんです。

そして、今は、グラナラから新鮮な魚介類が大量に輸送されるようになりました。

移転を渋っていた食料品の大店は、残念な事に完全に出遅れましたね。

今、駅の側に店舗を構えた食料品商店が、北部の麦や、グラナラで獲れた安価な魚介類で幅を効かせてるんですよ。

なにしろ、駅の側にある倉庫も先見の明があった商店が占有してしまいましたから、出遅れた商店が挽回するのは難しいかもしれませんね。」


うーん。リリスさんが言っていた、自分には商才が無いという部分は何処なのでしょう?

マリムで一二を争うぐらいの商才だと思いますけれども。


そんな話をしていたら、ボーナ商店に戻ってきました。


「正面の左手のこちらが紙を扱っている店舗です。」


そう言って、私達を店の中に案内してくれます。

中に入ると、様々な大きさの紙が陳列されています。


そして、王都では見ることがなかった、様々な色の紙もあります。

紙の造形物もありました。


布の様に、ただ紙が置いてあるのかと思っていましたので、とても意外です。


「紙は、新しい素材なので、商品開発に力を入れているんですよ。」


私達は、大分前から、紙関連の考案税申請書を見ています。考案者が様々だったのですが、ボーナ商店の人だったのかもしれません。


「ここは、普通の筆記用の紙です。工場で作れる紙の大きさに限度がありますから、一番大きな紙は、この大きさなんです。」


そう言って、人の背丈ほどありそうな紙を見せてくれます。

この紙が博覧会の展示会場で使われていたんですね。

大きさは大きいのですけれど、縦横の比率は、普通に使う紙と同じみたいです。


「この大きさは、アイル様とニケ様のご指導で決まったんです。この紙を半分に切っても、縦と横の比率が変わらないんですよ。

普通に卸している紙は、この一番大きな紙の半分の半分の半分の半分。つまり1/16の大きさなんです。」


リリスさんは、そう言って、それぞれの大きさの紙を見せてくれます。

本当ですね。それぞれの紙は、一つ大きな紙を縦に二つにしたものになっています。


「この縦横比率じゃないと、こういう事にはならないんだと聞いてます。不思議ですよね。

どうやって、この比率を決めることができたんでしょう。

でも、このお陰で、紙の大きささを決めるのが楽になってるんですよ。

この一番大きな紙を切ることで、それより小さな紙が作れますから。」


二つに切って、縦横の比率が同じになるって、何とも不思議です。


「そして、この紙は、別な系列の大きさなんですけれど、先程の紙の二つの隅を継いだ長さが、縦横になっている紙です。

こちらは、それほどは作っていないんです。

ちなみに、こちらの系列の紙の二つの隅を継いだ長さは、先の系列の紙の縦横になるんですよ。

これも不思議ですね。」


「こんな大きさの紙もあるんですね。

でも、さっきの紙の系列?があれば、十分なんじゃないですか?」


「一つの系列だけだと、紙の大きさって、かならず半分になりますよね。

そうなると……そうそう、あちらに紙を束ねた製品があるんですけど、それを見てもらえると分るかもしれませんね。」


それから、素のままの紙を置いてある場所から、紙の様々な加工品がある場所に移動します。


「これは『帳面』という製品です。先程の紙をd60枚束にして、中央の部分を縫い合せたものなんです。ちょっと特殊なミシンを使って縫っています。」


そう言われて見せられたものは、紙の束の中央が縫われていて、そこで二つ折りにしたものです。

これは、何に使うんでしょうか?


「これって、何のために使うものなのでしょう?」


「私も最初にニケ様に聞いたときに、紙のままで良いんじゃないかと思ったんです。

でも、毎日書くような事があれば、この帳面に順番に書いていくと、あとで見返すのが楽なんです。

一日の事を1枚に書くと先月あった事なんかは、すぐに見付けることができるんです。

私は、毎日、この帳面にその日に有った出来事とか、取引の事とかを書いているんです。便利ですよ。」


それは、考えたことのない事です。そうですね。記憶だけではムリな事は確かにあります。

書き留めておけば、後で思い出せなくて苦労することは確かに無くなります。

昨日や一昨日の事であれば、思い出すのは簡単ですけれど、1月前の事は、ムリですね。


「それは便利そうですね。」


「そうでしょ。工場の運転記録にも使っているんですよ。

それで、用途によって、紙の大きさが色々あると、便利なんです。

私が、毎日書き込んでいるのは、この帳面です。これは、主な系列とは別の系列の紙を使っています。

主な系列だと、この大きさか、こっちの大きさになるんです。でも、私には、こちらは少し大きすぎて、こっちは、少し小さすぎるんです。

それで、二つの系列があると良いんです。」


「確かに、帳面を見ると、大きさが随分違って見えますね。

それで二つの系列があるんですね。」


「あと、これは、もっとずっと小さな紙を使った帳面なんですけれど、持ち運べますから、ちょっとした事を記録することができます。

鉛筆といっしょに持ち歩けば、簡単に書き留めておけます。

出先で、会った人から聞いたことなんかを覚えておかなくて済むんですよ。」


「あっ。鉛筆ですか?エクゴ商店で売っていました。」


「ええ、多分同じものでしょう。最近作れるようになったんですよ。

それは、ウチでも扱ってますよ。紙に関わるものですからね。

あそこには、字を書くための道具を揃えてあります。」


教えてもらった場所に行くと、字を書くための道具が色々置いてあります。

鉛筆もありました。

価格を見ると……。


「えっ。安いです。エクゴ商店にあるのと同じ鉛筆ですよね。」


「ウチは、字を書く道具の利益は最小限にしてるんです。だって、紙を使っているお客さんが使う道具ですからね。」


「この鉛筆って、王都のボーナ商店でも扱うのですか?」


「ええ。来月から販売予定です。」


完全に、盲点でした。ボーナ商店で鉛筆を売っているとは全然思ってませんでした。その上安いとは。

だって、王都のボーナ商店は、高級衣装を売っている店だと思っていましたから。


奥を見ると、沢山のガラス製品があります。細い棒の先に、捻れた沢山の溝が付いています。


「このガラスは、何ですか?」

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